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住宅の省エネ性能を分析する

前回省エネ基準計算は重要な設計ツールを書きました。

では具体的にどのように分析すればいいのかをご説明します。

省エネ基準をクリアしているか

まず、分析の基本は省エネ基準をクリアしているかです。
外皮平均熱貫流率(UA値)冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)が地域の基準値をクリアしているかを確認します。

なお、現在は省エネ基準をクリアしていても省エネとは言えなくなってきています。
これは現在の省エネ基準の基準値は20年前の基準を踏襲しているためです。

住宅は何十年も住み続けるものです。
単に基準のクリアを目標とするのではなく、先を見越した性能を目指しましょう。

開口部比率

次に、開口部比率を計算しましょう。
開口部比率とは窓面積の合計を住宅の外皮面積で割ったものです。
開口部比率(%) = 窓面積計(㎡) ÷ 住宅の外皮面積(㎡) × 100

窓面積も外皮面積も外皮平均熱貫流率を計算するときにすでに計算していますので、それを利用します。
開口部比率を計算すると、住宅に対する窓の割合がわかります。
窓の面積は、住宅の断熱性能や日射遮蔽性能・日射取得性能に影響します。

開口部比率の適正値は、窓の断熱性能や外皮平均熱貫流率などによって変わってきます。
自分が設計した住宅の開口部比率の平均がどのくらいなのかを知っておくことで、この住宅は窓が大きい・小さいなどの相対的な判断ができます。

各部位の熱損失割合

次に、各部位の熱損失量を確認します。
外皮平均熱貫流率を計算するときに部位ごとの熱損失量を計算しています。
これを以下の項目に分けて合計します。
・外壁
・窓・ドア
・天井・屋根
・床
・土間床・基礎断熱

これを円グラフにしてください。(熱損失割合

無題

そうしますと、どこから熱が多く逃げているのかがわかります。
熱損失割合の適正値は各部位の断熱性能によりますが、バランスが取れている住宅ですと、外壁が1/3、窓・ドアが1/3、その他が1/3くらいになります。

熱損失割合を計算すると、意外と窓・ドアから多くの熱が逃げていることがわかります。
特に暖かい地域では、開口部比率が大きい住宅が多いので、この傾向が強くなります。
窓・ドアから半分以上熱が逃げているのに、外壁などの断熱材をいくら厚くしても効果は期待できません。
このような場合は、窓面積が大きすぎないか、無駄な窓がないか、窓の性能が低すぎないかを確認しましょう。

あと、温暖な地域では玄関や浴槽などの土間床が無断熱になっていることがあります。
これらは面積が小さいにもかかわらず断熱されていないため、熱損失が大きくなります。
土間床を断熱することで熱損失が少なくなり、玄関や浴室の温度低下を防ぐこともできます。

窓の熱損失量、日射熱取得量

窓は住宅の省エネ性能に大きく影響します。
そのため、各窓の熱損失量、日射熱取得量を比較します。
熱損失量などが大きな窓は、その窓の大きさが適正なのか、性能の高い窓に変更できないかを検討します。
また、冷房期の日射熱取得量が多い窓の場合は、庇などの日除けの設置を検討してください。



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