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馬耳東風:ばじとうふう #80 辞書の生き物

 三代目の獣医師「ぼっけもん」が生き物に由来する言葉やことわざを紹介します。辞書には生き物の名前が付いている言葉や言い回しが多く残っており、日本人と生き物のつながりの強さを示しています。
 今日も馬にまつわることわざです。

馬耳東風

 暖かい東風(東から吹く春の風)が吹くと、人は季節の移ろいを感じますが、馬は耳に暖かい風が当たっても何も感じないことから、人の意見や批評を聞き流して耳を貸さないことを表すことわざです。
 

李白

 語源は、中国の詩人である李白の次の詩になります。
「世人之を聞けば皆頭を掉り(ふり)、東風の馬耳を射るが如き有り」。 
この詩のおよその意味は、「世間の人たちは、それまでの概念や思い込みをもっており、優れた詩を聞いてもその良さや価値がわからず、頭を振って評価をしない様が、まるで馬の耳に春風が吹くようである。」ということになります。
 李白は自分の詩がなかなか評価されなかったことを嘆いてこの詩を書いたようです。

馬の耳に念仏

 似た言葉に「馬の耳に念仏」ということわざがあります。
馬に念仏を聞かせても、馬はそのありがたさを理解できず、少しも効果がないことから、ありがたみのわからないことのたとえとして使われます。
 
 実は「馬の耳に念仏」の語源は「馬耳東風」です。
馬の耳に風が吹いても何も感じないことから派生して、風が念仏に変わって使われるようになりました。

 馬耳東風は助言や批評について何も感じず受け流す意味ですが、馬の耳に念仏は、ありがたさがわからない、理解できないというネガティブなイメージがありますので、使う相手には注意が必要です。

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