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文章は上手に書いてはイケない~ダメな表現を回避する14のガチテクニック

スッキリ、楽しく、読みやすい――。
そんな風に文章をスラスラ書けたら、どれだけ嬉しいだろう?

ちょうど20年前、出版業界へ足を踏み入れたオレは毎日そのことばかりを考え、そして入社2年目の終盤に差し掛かったころ、ある絶望的な欠陥に気が付いた。

オレ、文才、ない……( ;∀;)

寝る間を惜しんで文脈考え、表現に工夫を凝らしてみても、いざ上司(編集長)の原稿チェックを受けるや、紙が真っ赤になるまで赤字が入れられる。

あまりに修正が多くて余白スペースがなくなり、用紙の裏面に及ぶほどだ。その恥ずかしさたるや……。

プライドはへし折られ、半ばノイローゼになりつつ、文字と格闘すること更に2年。
キッカケは、他愛のない思いつきだった。

『もう……上手に書こうとするのはやめて、ダメなところを集中して直してみようかな……』

当時、原稿を書く上で、オレが上司から言われていた決まりごとは
◆言葉のダブリを避けろ
ほとんどそれだけだった。

ダブリ」とは「重複」のことである。
それを避けろというワケだから、要は、1行の文中に、同じ言葉を2度以上出すな!という意味になる。

ざっくり示すとこんなイメージだ(※PC表示を推奨)。

【イメージ図】
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯。
言葉A◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯言葉A◯◯◯◯◯◯。
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯。
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯。
◯◯◯言葉B◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯言葉B◯◯◯。
※1行の文章に同じ言葉が2度はNO!

言葉Aも言葉Bも同一文で2回登場している。
これがダメ。

なぜ禁止されているのか?
というと、実際は感覚的な話で、ダブリのある文章はチープで陳腐に見えてしまう。

逆に、ダブリがなければスッキリ読みやすく、読者の脳ミソにも心地よい。早い話、プロの文章であり、出版業界では基本中の基本である。

ただし、この説明だけでは別の疑問も湧いて来るだろう。

「1行の文章で同じ言葉は使っちゃいけない。
それはわかった。
では2行目に同じ言葉を1つ。3行目にも1つ。
この調子で、4行目、5行目、6……って1つずつ入れていいの?」

なんて問われると、そりゃダメっすわ。
さすがに明確な決まりはなく、漠然と1~3行に1度ぐらいまでなら許容範囲と答えるしかない。

【イメージ図②】
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯。
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯言葉C◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯。
言葉C◯◯◯◯◯◯◯。
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯。
◯◯◯◯◯◯◯◯。
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯言葉C◯◯◯◯◯。
※「1~3行に1度ぐらい」だとこうなる

回数はあくまで目安。
できる限り同じ言葉は近くで使わないほうがいい。
人のアタマは、それほど馬鹿じゃないのだ。

次に意識したのは【体言止め】だった

言葉のダブリを避けろ――。

そんな唯一の教えを徹底したオレの原稿は、上司からの赤字も少しずつ減っていき、こうなると楽しいもんで“別のダメな法則”を探すようになった。

もはや『カッコよく上手に書いてやろう( ー`дー´)キリッ』なんてスケベ心は1ミリもない。
オレは、オレのダメな部分を上司より先に見つけてやるんだ!

『つーか、上司にその法則を聞いた方が早くない?』

ナルホド、たしかにそれはごもっともな意見である。
当時のオレもそう思って、何度か尋ねたが、返ってくる答えはいつも同じだった。

「とにかくスッキリ書けばいいんだよ」

おっ!
おぉおおお……(ノTДT)ノ ┫:・'.::・┻┻:・'.::・
と、上司相手にキレたくなったが、当人に全く悪気はない様子。

文章というのはセンスや感覚的なもので書かれるという思考のようで、当時のオレみたいに「書き方で迷ってしまう人間が、ドコで何に苦しんでいるか、まったく気づいてない」のだ。

やっぱり自分で探すしかない――。

そんな状況でオレが次に意識した法則が
◆体言止めの使い方
だった。

【イメージ図③】
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯体言止め
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯。
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯。
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯体言止め
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯。
※体言止め(文末が名詞)

体言止めは「文末が名詞で終わる」という、相当わかりやすい文章テクニックだ。
一つ入れるだけで文章に急激な変化を与えてくれるので、この技巧の使い方を知っていると知らないとでは大きな差が出てくる。

そして使い方が簡単なようでいて、実は意外と難しい。

現段階では「多用は避けよ」とだけ申し上げておく(詳しくは後述)。

10年かけて14のダメパターンを発見→実践

かくしてオレが日々の苦闘で確認できた回避すべきダメな表現は現在、
・10法則(14パターン)
にのぼる。

どんな内容か?
まずは目次から、ササーッとご確認いただきたい。

◆Contents

【法則①】 表現のダブリを回避せよ・初級者
①-1 単語のダブリ編
①-2 あえて言葉をダブらせる方法編
①-3 文末のダブリ編

【法則②】体言止めの連発を回避せよ!

【法則③】『~~だが、~~である』構文を回避せよ!

【法則④】動詞の多用を回避せよ!
④-1『する(英語でDO)』が厄介編
④-2 名詞化しよう編

【法則⑤】こそあど言葉を回避せよ!

【法則⑥】「~の~の~」を回避せよ!

【法則⑦】主語連発を回避せよ!

【法則⑧】漢字だらけを回避せよ!

【法則⑨】一行詰め込みを回避せよ!

【法則⑩】 表現のダブリを回避せよ・上級者
⑩-1 文章構造のダブリ編
⑩-2 地の文心理文ダブリ編

どうだろう?
ちょっと多い?

大丈夫。
すべて一気にマスターする必要はない。
全体を眺め、まずは「自分がイケそうな法則」をチョイスして、一つずつ原稿に反映するのだ。

では本題へ入っていこう。

【法則①】表現の重複を回避せよ・初級者

前述の通り、表現のダブリ回避は、文章で最も大切な基本である。

編集者で知らない者は一人もいない、書籍や雑誌では共通の認識。
たぶん英語とか中国語など、外国語の文章でも似たようなものだと思う。


ゆえに、これだけでもマスターしておけば、もしもアナタがライターで編集者に原稿を提出したときでも
『あれ? この人、結構、書ける感じじゃん』
と、好印象を与えることになる。

だからといって慌てないで、ゆっくり一つずつ見ていこう。

法則①-1 単語のダブリ編

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法則①の1は単語のダブリである。

この手の重複で、もっとも目立つのは「名詞」と「固有名詞」だが、動詞や副詞、あるいは形容詞など、要は、すべての文字が対象となる。

テスト形式で、問題を解きながら進めてみよう。


問① 例文Aの中にある言葉のダブリを適切な表現にせよ

【例文A】Facebookのユーザーが高年齢化していて、最近、Facebookには勢いがない。

どうだろう?

死ぬほど目立つ、最も単純なパターンである。
2度目の「Facebookには」を消去するだけでリライト終了となるが、一応、模範解答をチェックしてみよう。

【模範解答A】Facebookユーザーが高年齢化していて、最近、勢いがない。

以下にイメージ図を用意してみたのでご覧いただきたい。

【イメージ図】
【例文A】Facebook◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯Facebook◯◯◯◯◯◯。
【模範A】Facebook◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯。

簡単すぎて拍子抜けしただろうか?

しかし、このダブリ探し、いざ自分の原稿でトライしてみれば、さほど楽勝ではないことに気付くはず。

今は“テスト問題”だと意識しているから即座に見破れるだけで、普段のダブリ言葉たちは「ヒッソリと何気ない顔」して、文章の中で体育座りしてる。

しかも原稿を書いているアナタ自身も、自分が『正しい』と思い込んでいるから厄介。
間違いがあるハズなんてない――そう思っていると、なかなかダブりに気づかないのだ。

ではどうするか?

①細かく読み返して修正する
②一気に書き上げて、後から直す

方法は2つあると思うが、まずは②で試そう。
①だと時間がかかってしゃあない(慣れてる人はこっちの方が早い)。

では次の問題へいこう。

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