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アンジー。tríocha a naoi

ルーが冷蔵庫を開けたりやかんを火にかけたりするのを、ソファーに座ってぼんやりと眺めた。シャツと帽子が置きっぱなしのソファーには二人の生活感が出てる。僕とルー、お互いに別々の時間を過ごしてきたんだ。
はいお茶どうぞ。ミルクかなり多め、アルコールちょっとたらしちゃった。
ルーは自分の分のマグカップをテーブルに置くと僕の目をのぞき込んだ。
後悔してたの。セジュのこと考えるのやめれなくて。結婚したのも子どもができたのもずっと見てた。見ずにいられなかった。ここで働き始めて、イーニエ、じゃないや、サーランが来てやっとセジュのこと考える時間が減ってきたの。サーランを迎えに行った時に五人で歌ってるのテレビで見たよ。ダンスはもうやらないって言ってたね。
あ、うん、それぞれの仕事が忙しくて五人揃ってダンスの練習する時間が取れなくなって、それでもうキラキラのアイドルは若いのにまかせることにしたんだ。
そんな話をしている間も、ルーはずっと僕の目をのぞき込んでいた。
近いよ。
イヤ?
そうじゃなくて、そんな目で見られると。
だめ?
だめじゃないけど、
たまらずにマグカップをテーブルに置いた。
抑えがきかなくなるよ。
抑えなくていいのに。
さっき無理って言った。
だって。
できないなら誘わないでよ。
できなくないもん。
前だって怖がってたし。無理させたんじゃないかって気になってた。
確かに怖いよ。昔、セジュじゃない人にされた時に、自分の体に起こったこととか感じたことが許せなくて怖くてたまらないよ。でも、セジュに触ってみたいんだもん。触ったらだめなの?
だめじゃありません。
だって僕は、ルーに絡め取られてるんだ。きっと出会った時からずっと。

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