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テクノの侵略者 ─2022/08/10(11)

22時、渋谷に降り立つ。
今日は初めての経験をする日だ。いささか緊張している。未だに「初めてチャレンジすることへの怖さ」を克服することができない。一生そうなのかもしれない。

少しでも心を落ち着かせるために、東京メトロ表参道駅から歩いていく。だいたい20分くらいだが、そのくらいの時間がちょうどいい。あまり暑い夜でもなかったので、クールダウンにはもってこいの20分。


すっごい煽りの画角

道玄坂を渋谷駅方面から下っていき、到着。
ここは渋谷有数の大きなクラブ「SOUND MUSEUM VISION」だ。


で、こんな時世であるにも関わらず押して初めてクラブに来たのにはもちろんそれなりの理由があって、それがあるイベントだった。

オシャレな看板

こちらの画像をご覧いただければ一発で理由が分かる(人には分かるはず)。石野卓球、Ken Ishii、砂原良徳、Licaxxxと日本のテクノ・シーンの最先端を突っ走っていたり代表していたりするレジェンドの4人が一度に観れるとなっちゃあ、来るしかない。

中に入るまでが一番緊張するっていうのは何事もそうだと思うんだけれど、まさに今回もそうだった。入り口で黒人のチェックを受け、下のフロアへと続くドアをくぐるとすぐに怒涛の如く押し寄せるキックが身を包んだ。

だいたい22:30くらいに入ったので、お目当ての4人はまだ出てきすらしない。そのクラブに常駐し、コンスタントに出演するレジデントDJ(だと思う)がプレイしていた。ここで体力を使ったら後々しんどいぞ、と考えつつもついつい身体を動かしてしまう。
のちにこれをちょっとだけ後悔するのだが、そこは後述しよう。




24時を過ぎたあたりで、まずLicaxxxが登場。

正統派

クールな表情でプレイする彼女、チョイスする楽曲もまたカッコいい。



1時間ほどして、次にまりん(=砂原良徳)が登場。

ずっと左側に寄ってプレイしていた

激しい感じではなく、むしろ穏やかな印象を受けたプレイ。なんというか、ずっと聴いて身を任せていたいような、そんな気持ちになる。



また1時間が経って、次はいよいよ「東洋のテクノ・ゴッド」Ken Ishii。
西洋のテクノ・ゴッドって誰なんだろ。やっぱKraftwerkかな。

終りの画質

ここからド派手なレーザーが発射されるようになった。見栄えが良いし、これだけで曲のカッコよさが増幅される気がする。

めちゃくちゃ重いビートにリフレインするフレーズがまさにテクノ、という感じがした。さすがジャパン・テクノの開祖だ。ともすれば「飽き」を感じるような紙一重の単調さを上手にカッコよさへ昇華させているのが凄く印象的だった。



だいたい1時間半のプレイ。この時点で朝3:30くらいなので、およそ5時間立ちっぱなしだ。隠しきれない身体的な疲れが来ている。それに加え、初めて喰らう音の大きさにもなんらか影響されている気がした。

後ろでタバコを吸いながら待ち構える卓球さん

でも、石野卓球を見ないことにはいられない。続行。

体感だとざっくり前半と後半に分かれていた感じがして、前半はゴリゴリの本気テクノ、後半はOrbital「Chime」、Dead or Alive「You Spin Me Round (Like a Record)」、Donna Summer「I Feel Love」などのアンセムを使いつつテクノへアプローチしていたように思えた。

やっぱり盛り上げ方がひと味違う。「ここでこういう事をしたら盛り上がる」を全部知っていて、手を変え品を変え聴衆を楽しませたる!という思いを感じた。終始ふざけているけどすっごいんだな、やっぱり。

特にビビったのはクールダウン→終了までにKraftwerkを使ったところ。未だに古き良き音楽を駆使して盛り上げるのに、なによりアーティストへのリスペクトがある。今の若い子なんてまともにKraftwerk聴いたことないと思うんだけれど、こういうところで使われている点からクールさに気づくはず。


朝5時半すこし前に一回終わって、そこからさらにアンコール。
僕はというと、かなり疲れがきていたのでフロアのけっこう後ろまで下がってしまった。それでも十分だったし、盛り上がっている人たちを観るのもなんだか楽しかった。

すこし時間が経ったら微力が戻ってきたので、ちょっと前のほうに戻る。というのもYMO「ファイヤークラッカー」のイントロが聴こえてきたからだ。クラブでかけられているのを聴くとイヤホンで聴くのではまったく印象が違う。もちろん石野卓球の手も加えられているけれど、それにしたって「こんんなに踊れる曲だったか?」と思ってしまうほどだった。


大団円を迎え、終わったのは5:40くらい。
やはりあんまり良い印象がないので、クラブに(しかも一人で)行くのが怖かったけれど、入っちゃえばどうということもないことを身をもって知れたのは嬉しい。けっこう1人で来ている人も多くて、そんなに恐い感じの人も居なくて。たぶんこのクラブの性質上”音楽が好きな人”が多く集うところだから、居心地がよかったんだろうな。

最高の夜、最高のイベントだった。
あと渋谷の早朝って意外と人少ない(ハロウィンの翌日に行ったことがあるけれど、そのときはめちゃくちゃ人が居た)んだな。もっと人が多いのかと思ったけれど、そんなことはなかった。

やっぱりオールは疲れる。久々にしたからかもしれないけれど、それにしたって疲労感がすごい。あと耳がすっごく聞こえづらくなった。遠くで誰かが話しているように聞こえるし、ずっと限界の低音みたいなのが耳の奥深くに居座っている感じがした。




翌11日はしっかり休みました。それもまた良い。
次の日が休みじゃなきゃ行っちゃいけない場所だな。




(終)


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