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ダダダイアリー、主に映画。 2020/7/16ー7/29


7月16日
国立映画アーカイブにて中村登監督「波」鑑賞。
受け身の名手佐分利信が運命の波に翻弄される18年。メロドラマにありがちなモノローグに次ぐモノローグでクタクタにさせられるが、佐分利のあの顔とヒロインが美しき淡島千景なので最後まで見届けられた。先日の「WAVES」に続く波つながり。人生には色々な波があるのだ。

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自宅に戻りloft9shibuyaにて14日に開催されたツイキャス配信イベント『ウディ・アレンは社会から抹殺されるべきか?』を録画視聴。
ウディ問題を切り口にアップリンクの件など多岐に渡り展開。結論を導くのではなく、それらの問題とどう向き合うべきかの問いの投げかけ。私達は全ての問題の当事者であるという意識が必要だと実感。色々と考えた。

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7月17日
お昼に歯医者に行きそのまま昨日に引き続き国立映画アーカイブにて川島雄三監督「新東京行進曲」鑑賞。
目覚ましい復興を遂げる新東京を舞台にしたナウなヤングたちの恋模様なんかを散りばめた歌謡コメディ。貴重な東京の街並みの記録としての見どころは有るが、それ以外はひたすら眠たい話だった。

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ついでに展示室で開催の「松竹映画の100年」展も覗いていく。常設展と合わせると予想以上にボリュームがあって満足した。

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渋谷に移動して約4か月ぶりの渋谷のブラックロッジことカフェモノクロームへ。
「WAVES」やA24グッズやアップリンク問題についてなど多岐に渡り喋ってきて、サードプレイスに帰ってきたって感じになり楽しかった。「デッド・ドント・ダイ」のコラボメニューを食べ、リンチコーヒーとツインピークス限定コーヒーをテイクアウトした。

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アップリンク渋谷に移動してジェシカ・ハウスナー監督「リトル・ジョー」鑑賞。
新種の植物がもたらす美し過ぎる戦慄。百点満点映画「ルルドの泉で」のジェシカ新作は今回もフォントや衣装に至るまで緻密に統一された色調のトーンが素晴らしく、全員ハッピーエンドなバッドエンディングという皮肉も凄まじい傑作スリラーだった。
伊藤貞司の音楽も煩い瞬間もあったが、独特で斬新な面白い効果を出しており、美しきスリラーって事で「ミッドサマー」ファンにもオススメしたい作品。「ルルドの泉で」もそうだが、とにかくこの監督の色調が本当に好きだ。

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7月19日
植本一子「家族最初の日」読了。
2010年2月から2011年4月迄の日記。「働けECD」の文庫化。311の前後のあの感じと実際に働きまくってたECDと家族最初の日々の貴重な記録。あれからもうそんなに経ってしまったのかという感慨とそれを打ち消す様な生き生きとした文体に引き込まれる一冊だった。

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7月20日
村上春樹「猫を棄てる 父親について語るとき」読了。
印象的な猫のエピソードの間に収められた父親についてのファミリーヒストリー。貴重な記録で興味深い話でもあったけど勿体ぶって単独で書籍化する程のものではない。高妍の絵は良かったけど。

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PATUムック「大島依提亜と映画パンフ」読了。最近の気になる映画パンフの殆どを手掛けている大島依提亜を特集したニッチな一冊。ザッと見てみたらうちにも10冊位あった。映画鑑賞の余韻の持続の貢献を果たす凄い人だな。

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市川崑監督「東京オリンピック」録画鑑賞。レニ「民族の祭典」の影響下にあるドキュメンタリー。単なる記録映画と一線を画す拘りの映像が随所に見られるが、ナレーションがそれを台無しにしてた。観戦に来てた若き美智子様が観られるのが最大の見どころだったかな。

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関内まで久々に足を伸ばし、横浜シネマリンにてビー・ガン監督「凱里ブルース」鑑賞。
バイクから車、またバイク、徒歩から小舟、電車から白昼夢。岸を繋ぐ橋を渡り元の場所へ。そこはいったい何処なのか。過去と現在とどれでもない記憶を縦横に蠢くカメラ。それは野人の眼差しか。誰のうつつか。目覚めたら何も思い出せないジャスミンブルース。なんだこのトキメキは。

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続いてビー・ガン監督最新作の「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯へ」鑑賞。
過去と現在とどこか。時を告げる「アザミ嬢のララバイ」。時計の永遠と花火の儚さが導く夢の涯の景色。それはブロウアップ凱里ブルース。ビーガンのワンカット劇場。ホントに夢落ちしそうになった。

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ロングデイズはなんか横浜で観たいな、凱里もやるならまとめて観たいな、という願いを叶えてくれたシネマリン。寝かせに寝かせて待ちに待った初のビーガンシアターは、予想を上廻る目眩とトキメキに撃たれた。好みで言えば「凱里ブルース」の方が圧倒的に良かった。

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7月22日
ジョージ・キューカー監督「フィラデルフィア物語」DVD鑑賞。
キャサリン・ヘプバーンの奔放ぶりが魅力的で最後まで観れたが、終始大声で皆んなが喋り倒しており、まるで舞台をそのまま見せられている様なテンションなので疲れた。慌ただしさの極地で迎えるラストは鮮やかだけど。ちょっと乗れなかったな。

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7月23日
シネマヴェーラ渋谷で開催の松竹映画特集へ。先ずは吉田喜重監督「炎と女」を鑑賞。
「お入りなさい。ドアをキチンと閉めて」。スタイリッシュな映像と編集で人工授精を巡る夫婦の確執をSFサスペンスの様に描く喜重シアター。ミューズ岡田茉莉子はもちろん素晴らしいが弾ける狂気な小川真由美の好演が光る作品だった。

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続いて中村登監督「わが闘争」鑑賞。
我が故郷はスラム。呪われた貧困家庭からの逃走の為の闘争。佐久間良子が不屈と波乱の人生を全身で演じ切る。若き加賀まりこの小悪魔ぶりも良い。スマートな作風が多い中村がまるで元祖森崎東かとを思わすバイタリティで描いた傑作ぶりに震えた。

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そして締めは大庭秀雄監督「命美わし」を鑑賞。
メロドラマの巨匠大庭が命の重さを軽妙なタッチとテンポ感で逆説的に謳い上げた作品。淡島千景、佐田啓二、笠智衆と好物キャスト揃い踏みだけど、結局は杉村春子が全部かっさらうという見事な仕事ぶりを見せつける一本。

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吉田喜重、中村登、大庭秀雄の巨匠達が松竹ホームドラマの極北を目指したカルトな三本立てを喰らう松竹100年地獄に浸った1日となった。

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自宅に戻りインスタグラムの配信ライブ。spurmagazine「世界の果てからDJ配信」にてマイカ・ルブテのライブを堪能。相変わらずチャーミングでホット&クールな最高な時間だった。

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7月24日
サンクスシアターにて草野なつか監督「螺旋銀河」をweb鑑賞。
他者から他者へ同じ言葉が同じ密度で螺旋状に受け継がれて、アントニムな2人が夜のコインランドリーで心を洗い合う。反発と共鳴する振る舞いに適切な重力が加わる迄の物語。ずっと見逃してて観たかったやつ。待った甲斐あったな。

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7月25日
ハワード・ホークス監督「赤ちゃん教育」DVD鑑賞。
せっかちなキャサリン・ヘプバーンが大暴れして全てぶち壊し奪い去る。ちょっと尋常ではないじゃじゃ馬ぶりに呆然とさせられる。ケイリー・グラントとの名コンビぶりを見せるが、本作に関してはジョージとベイビーのコンビにかっさらわれた感は否めない。

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109シネマズ二子玉川にて『中島みゆき「夜会」vol.20リトル・トーキョー劇場版』鑑賞。
中島のライフワーク「夜会」シリーズ最新作の劇場公開版。
北海道の山中にあるホテルのライブステージリトルトーキョーを舞台に2000年の暮れに襲った大雪の中、失われゆく自然や野生動物と対峙する人々の営み。壮大でヘヴィなテーマを敢えて軽やかに描く。
中島の変らぬ歌声と佇まいは実在していながらファンタジーの領域に足を踏み入れたリアルな雪女の境地に到達。そしてほぼ同期の渡辺真知子とのコラボ。2人の雪崩を引き起こす様な凄まじいハーモニーには本編を逸脱する純粋な歌の力に浸れ感動に震えた。

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自宅に戻り「ハリー・スミスは語る」読了。晩年のスミスを看取ったラニ・シン編纂によるインタビューアーカイブ。スミスの功績とかヴィジョンとか哲学とかそんな事より行間から零れ落ちる知性とユーモアに満ちたグルーヴ。もっと自由で構わないんだと勝手に逸脱していくその佇まいを見て嬉しくなった。

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BSリメイクドラマ「居酒屋兆治」録画鑑賞。せつなくほろ苦い人間ドラマ。不器用な男伝吉をエンケンが見事に演じてたけど真矢ミキのおかみさんぶりにオレは心を持っていかれた。

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7月27日
久々の池袋は新文芸坐にて大林宣彦監督特集「時をかける少女」鑑賞。
原田知世の仕草セリフ動きの全てが再現不可能な一回性に満ちたトキメキだけで形成された見る度に凄みと強度を増す作品。もう名作とか好きな作品とかの範疇を超えた特別枠の映画になった。

それで、高柳良一のどうにもならない呆れるほどの棒読みはきっと未来人だからなんだろうという結論にようやく達した。
それにしても根岸季衣のホットパンツはいったいどういうつもりなんだろう。その疑問は残されたままだ。

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続いては「青春デンデケデケデケ」鑑賞。
60年代エレキに青春を費やした高校生達の溢れる青春賛歌という枠組みを自ら作り自らハミ出す。細かく丁寧に拾い上げ、いちいちふざける感じが最高な、ノスタルジーよりも新しさが勝る作品。若き浅野忠信のフレッシュな佇まいも見どころ。
上映途中でフィルムが切れるというアクシデントが有ったが、それも演出の一つだと思わずにはいられなくなる展開の作品で、大林マジック降臨の忘れ難い経験になった。

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そして林由美香特集をしてるとのことで初めてのシネマロマンへ。
通常の映画館よりも上映中の館内の照明が明るく常連さん的な客が何度も出たり入ったりして、ロビーの話し声とかガンガン聞こえて、なかなかの酷い上映環境だったけど、作品自体はまぁ楽しめた。

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その後は受注会の品が届いたとのことでPARCOのフレッドペリーへ去年の暮れ以来に訪問。積もる話をしてから帰る。

7月28日
先日晴れ豆で注文した三宅純「Stolen from strangers」アナログ二枚組のサイン入りが到着。Alviverdeから始まりボーナストラックのLilies of The Valleyで終わる美しき完璧なサークル。やっぱりコレはアナログ向きの名盤だな。

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アップリンク渋谷にてデヴィッド・リンチ監督「エレファント・マン4K修復版」鑑賞。
公開当時に感動の実話って事で大ヒットして、あーそうですかってTVで一度観たきりで完全に忘れてたが、冒頭からツインピークスに繋がる変態的な美意識が炸裂しててやっぱりリンチ作品だなぁと実感。モノクロ画面の必然性も含めて納得の作品だった。

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続いてヒューマントラストシネマ渋谷に移動してキリル・セレブレンニコフ監督「LETO」鑑賞。
あの夏、彗星を待ちながら海辺でバカ騒ぎした忘れ難きあの夏の日。マイク、ヴィクトル、ナターシャ。ペレストロイカ前夜80年代レニングラードに実在した若者達のロックヒストリー。ロックンロールが放つ共時性に満ちた共感しか湧き起こらない素晴らしい音楽映画だった。

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7月29日
朝から新宿まで健康診断。
終了後先ずは武蔵野館にてエミリオ・エステベス監督「パブリック図書館の奇跡」鑑賞。
ある冬の日、大寒波に襲われたシンシナティの図書館に寒さを凌ぐ為ホームレス達が立て篭り忘れられない一夜が幕を開ける。貧困、差別、格差社会。私たちと公共。図書館の役割とは。円熟のエステベスが地道にキャリアを積み上げて辿り着いた静かな境地。やったぜお兄ちゃん的な感動作。クリスチャン・スレイターやアレック・ボールドウィンなどキャストも充実してたが、特にテイラー・シリングが良かった。

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ドトールで一服してから続いてシネマート新宿にてジェラルド・カーグル監督「アングスト/不安」鑑賞。
オレには緻密な計画がある、とか言って全てが衝動的な行き当たりばったりで全力で必死でマヌケ。だからこそリアルとも言える不快さとユーモアが背中合わせのヤバい作品。笑えるけど怖い。そして犬が可愛い。あとソーセージ旨そうだった。

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