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山口周さん 世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか、感想。

世界経済が同時多発的に成長し、インターネットでそこら中が繋がるようになった現代は、VUCA(Volatility,Uncertainty,Complexity,Ambiguity)と言う状況で、そこでは経験則に基づくクラフトマンシップや、論理思考や状況分析に立脚するサイエンスだけでは、不十分で、直感や感性を源とするアートが重要な要因になってくる。だから現代においては、論理性だけではない直感、法律だけに頼らない倫理感・善の軸、市場調査に頼り切らない美の価値基準、即ち美意識が重要なのだ!と言うのが本書の大まかな内容だと思う。

アートは言わばメタ認知で、論理性や理性だけでは 判断のつかない状況でより良い決断をするのに適している、という事だと思う。

コンサルが経験則=クラフトマンシップによるグレイヘアコンサルティングから論理性=サイエンスによるファクトべースコンサルティングに、また昨今ではデザイン思考に変遷してきたのはそのため。(ここで言うデザイン思考は顧客行動からのインサイトで問題解決をする事で、創造的なクリエイティブデザインとは意味を異にする)。

日本が高度経済成長期にアメリカをベンチマークとしてクラフトマンシップとサイエンスでスピードとコストを追及した結果、アートが失われブランドが無くなった、という。

だが、秀吉と千利休の例の様出すまでもなく、日本には本来アートや美意識が文化的なDNAとして息づいていると言う。日本はその資源、精神性を活用すればチャンスが生まれる。マツダの魂動デザインの例をあげて。

サービスが同質化して豊かになった今日では、安全性や利便性は当たり前で、自己実現欲求を満たすようなストーリー、アイコンとなる製品やサービスが競争力を持つ、イノベーションはコピーできても、ストーリーはコピー出来ないからだ。アップルはその機能だけではなく、ストーリーやアイコンとして成功していると。

また、変わりゆく世の中をエリートは論理や理性に傾倒しすぎると、暴走する(ホリエモンやDeNAの不祥事、ナチスのアイヒマンのように)ので、そのためにも内なる善の軸が必要。

美意識を鍛えるのには、絵画をみて詳細な感想を論じる、あるいは書き出すことにより、認知力をたかめる、哲学に親しみ人間の根源的な思考や姿勢についての知識を得る、文学を読み人生の追体験をする、詩を読んで比喩、つまり力ある言葉の引き出しを増やす、といった手法が挙げられていた。

クラフトマンシップとサイエンスとアートを兼ね備えた人物になれたら素敵だとも思う。

一方で、個人の感想としては、サービスレベルが上がり同質化し、拠り所をストーリーに求める現代だからこそ、またAIが大体の事は片付ける世の中になる近い将来、美意識は勿論、自分らしく生きる事、自分なりの価値判断基準を持つ事が大切になってきてる、美意識のその先が必要になってきてると感じた。

また、思うに、自分の軸は時として自分を縛る事があるので、頼れる自分の軸とは、こうあるべき、こうでなければ、と言う類の制約ではなく、多様な価値観に触れて自分を相対化し、多様性をフラットに受容できるようになった上でのものでないと、単なる頑固者になる危険性がある。即ち真の「これで良いのだ」、の境地が必要だと思う。




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