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井の頭公園の散歩(18)井の頭自然文化園の開園

「井の頭公園の散歩」も終わりに近づいてきましたが、普段の散歩ルートから外れている有料の井の頭自然文化園(以下文化園)にも足を延ばしましょう。有料といっても65歳以上は200円、年間パスポート800円はうれしい入場料です(一般はそれぞれその倍、小学生は無料、都内在住・在学の中学生なら無料)。ご存知のように文化園は動物園(本園)と水生物園(分園)に分かれていますが、先輩格は分園の方です。

 1934年(昭和9年)5月5日に、中之島にある現在の分園の場所に東京市井の頭恩賜公園動物園という小動物園が開園しました。関東地方では上野動物園に次ぐ2番目の動物園ということもあり、開園日は2万人を超える来園者でにぎわったそうです。
 この人気と上野動物園の手狭状態をみて東京市は井の頭動物園大改造計画に着手しました。
 計画の対象地は現在の本園にあたる場所で、「柵や檻を無くし、擁壁と堀を使った当時最新のハーゲンベック型の無柵放養式の動物園計画となっている。中之島動物園からは地下道で連絡し、日本の動物やキリン、ライオンなどのアフリカ産動物、ゾウ、ホッキョクグマなど当時の上野動物園を凌ぐ規模の動物園である。また熱帯から寒帯の植物、花弁、薬草などを含む大植物公園の構想である」(『井の頭自然文化園』東京公園文庫、石田おさむ著(「おさむ」は漢字)。
 上野動物園を凌ぐという近代的な大動物公園構想は1941年(昭和16年)2月に発表されましたが、1937年(昭和12年)から始まった日中戦争、2年後の欧州での第2次世界大戦、そして1941年(昭和16年)12月の日米開戦となり、「自然文化園の建設は存亡の危機にたった」ようです。

 結局、公園設立に向けた関係職員の奔走で、予算を1/10以下にし、動物園や水生物園、植物園を、自然科学を学ぶ場として位置付けて開園にこぎ着けたと記されています。開園は今からちょうど80年前の1942年(昭和17年)5月17日、戦時中の開園でありました。


メールマガジン『ぶんしん出版+ことこと舎便り』Vol.18 2022/11/18


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