DXとマーケティングその15:事業の定義とDX
見出し画像

DXとマーケティングその15:事業の定義とDX

分析屋の下滝です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とマーケティングの関係を考えてくシリーズの第15回目です。

前回は、DXと経営との関係付けの準備を行いました。DXを企業全体としての取り組みと捉えるならば、経営との関係性があると考えられるためです。

経営の枠組みとしてはドラッカーの考えを参考にし、以下のことに着目しました。
・企業の目的は何かということ
・事業とは何かを定義すること
・目標を定義すること
そして、これら「経営での考え」と「DXでの考え」とを関係付ける候補となる要素を特定しました。

今回は前回の続きとなります。ドラッカーによれば企業の目的は「顧客の創造」です。そして、企業は顧客の創造のために、マーケティングとイノベーションの2つの機能を果たすとされます。では、DXの取り組みは、これらの2つの機能とどのように関係するのでしょうか。今回は、この疑問に答えていきます。

これまでの記事

第1回はこちら。経産省のDXの定義とマーケティングとの関係について考察しました。
第2回はこちら。『DX実行戦略』におけるDXの定義とマーケティングとの関係について考察しました。
第3回はこちら。「無料/超低価格」のビジネスモデルを分析しました。
第4回はこちら。「購入者集約」のビジネスモデルを分析しました。
第5回はこちら。「価格透明性」のビジネスモデルを分析しました。
第6回はこちら。「リバースオークション」のビジネスモデルを分析しました。
第7回はこちら。ここまでの記事をまとめました。
第8回はこちら。「従量課金制」のビジネスモデルを分析しました。
第9回はこちら。『マーケティング大原則』という書籍におけるマーケティング定義を確認しました。
第10回はこちら。『マーケティング大原則』という書籍で紹介させている「戦略的コンセプト」をDXの視点から関係性を見ました。
第11回はこちら。DXの実行プロセスとマーケティングのマネジメントプロセスの関係性を見ました。
第12回はこちら。DXの実行プロセスとマーケティングのプランニングプロセスの関係性を見ました。
第13回はこちら。『デザインドフォー・デジタル』というDXの書籍をもとにDXとマーケティングの関係をみました。
第14回はこちら。DXと経営との関係付けの準備を行いました。

前回のおさらい

以下の図は、ドラッカーを参考にして抽出した要素を示しています。

画像1

企業の目的は顧客の創造であり、そのための機能としてマーケティングとイノベーションの機能を果たします。企業は、事業の定義を持つ必要があり、三つの視点から事業の定義する必要があります。それらは「われわれの事業は何か」「われわれの事業は何になるか」「われわれの事業は何であるべきか」という視点での定義です。そして、これら定義は、具体的な目標として定義する必要があります。目標の領域は8つあります。マーケティングでの目標、イノベーションでの目標、生産性の目標といったものです。

具体的な説明は前回の記事を参照してください。

次にDXでの要素を見ていきます。『DX実行戦略』での要素をまとめたものが以下の図となります。

画像3

企業は、複数の事業からなるとしています。各事業は、変革目標を持ちます。変革目標は、3つの要素で構成されます。「対応戦略」、「カスタマーバリュー」、「ビジネスモデル」の3つです。

カスタマーバリューは、顧客にどのような価値を提供するのかというものであり、3種類があります。「コストバリュー」、「エクスペリエンスバリュー」、「プラットフォームバリュー」です。ビジネスモデルはこれらカスタマーバリューを実現するための方法です。たとえば「無料/超低価格」といったビジネスモデルによりコスト的な価値を顧客に提供します。

変革目標の3つ目の対応戦略は、ディスラプターと戦うために、どのような戦略をとるのかを定めるものであり、4つの対応戦略があります。対応戦略は、「収穫戦略」、「撤退戦略」、「拠点戦略」、「破壊戦略」の4つです。どの戦略をとるのかにより、どのカスタマーバリューを作るのかが決まります。

企業は、各事業の変革目標をまとめたものを、変革理念として持ちます。たとえば「2025年までに、4つの事業分野のすべてで、デジタルチャネルから収益の50%を得る」といったものです。変革理念を定義したならば、この理念を実現するための実行のフェーズとなります。

まとめると、企業全体としては変革理念を実現することを目標とします。各事業は、設定した対応戦略に従って、ビジネスモデルを構築し、カスタマーバリューの創出を目指します。

次に、DXの定義を確認しておきます。『DX実行戦略』でのDXの定義は以下となります。

私たちは、デジタルビジネス・トランスフォーメーションを「デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを用いて組織を変化させ、業績を改善すること」と定義する。第1に、企業業績を改善することがその目的であり、第2にデジタルを土台にした変革であること。組織は絶えず変化しているが、ひとつ以上のデジタル技術が大きな影響をおよぼしているものでなければ、デジタルビジネス・トランスフォーメーションには分類されない。そして第3に、プロセスや人、戦略など、組織の変化を伴うものであること。デジタルビジネス・トランスフォーメーションには、テクノロジーよりもはるかに多くのものが関与している。
──『DX実行戦略』, マイケル・ウェイド, p.27

この定義を整理したものを以下に示します。具体的な説明は過去の記事を参考にしてください。

画像3

企業の定義とDX

では、これら「経営での考え」と「DXでの考え」との関係付けを考えていきます。最上段から考えると以下のような感じでしょうか。
・「企業の目的」と「DXの定義」がどのように関係するか
・「マーケティングの定義」と「DXの定義」がどのように関係するか
・「イノベーションの定義」と「DXの定義」がどのように関係するか

まずは、ドラッカーを参考に、経営側の定義を確認しておきます。実際は、もう少し解説文が続いていますが省略しています。

企業とは何かを知るためには、企業の目的から考えなければならない。企業の目的は、それぞれの企業の外にある。企業は社会の機関であり、その目的は社会にある。企業の目的の定義は一つしかない。それは顧客の創造である。
市場をつくるのは、神や自然や経済ではなく企業である。企業が満足させようとする欲求は、顧客がそれを満たす手段の提供をうける前から感じていたものかもしれない。飢餓における食物への欲求のように、生活全体を支配し、人にそのことばかりを考えさせていた欲求かもしれない。しかしそれでも、有効需要に変えられるまでは潜在的な欲求があったにすぎない。有効需要に変えられて、はじめて顧客と市場が生まれる。
(省略)
──『経営の真髄 上』, ドラッカー, p.169
企業の目的は顧客の創造である。顧客を創造するために、企業は2つの基本的な機能を果たす。それがマーケティングとイノベーションである。
──『経営の真髄 上』, ドラッカー, p.170

マーケティングについても確認します。

これに対し真のマーケティングは、顧客、人口構造、顧客の現実、ニーズ、価値からスタートする。「われわれは何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を考える。「われわれの製品やサービスにできることはこれである」ではなく、「顧客が見つけようとし、価値あるとし、必要としている満足はこれである」と言う。
実のところ、販売とマーケティングは逆である。同じ意味でないことはもちろん、補い合う部分さえない。
何らかの販売は必要である。だが、マーケティングの理想は販売を不要にすることである。マーケティングが目指すのは、顧客を理解し、顧客に製品とサービスを合わせ、ひとりでに売れるようにすることである。
─『経営の真髄 上』, ドラッカー, p.171

イノベーションに関しても引用します。

マーケティングだけでは、企業としての成功はおぼつかない。静的な経済には、企業は存在しえない。企業人さえ存在しえない。そこに存在しうるのは、手数料をもらうだけのブローカーか、何の価値も生まない投機家である。
企業が存在しうるのは、成長する経済においてのみである。少なくとも、変化を当然とする経済においてのみである。そして企業こそ、この成長と変化のための機関である。
したがって、企業の第二の機能は、イノベーション、すなわち新しい満足を生み出すことである。財とサービスを供給するだけでなく、より良く、より経済的な財とサービスを供給しなければならない。企業自身も、より大きくなる必要はないが、常により良いものになっていかなければならない。
(省略)
─『経営の真髄 上』, ドラッカー, p.172

ここまでで部分的にではありますが、マーケティングとイノベーションの考えを見ました。次に、『DX実行戦略』より、DXの定義を見ます。

私たちは、デジタルビジネス・トランスフォーメーションを「デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを用いて組織を変化させ、業績を改善すること」と定義する。第1に、企業業績を改善することがその目的であり、第2にデジタルを土台にした変革であること。組織は絶えず変化しているが、ひとつ以上のデジタル技術が大きな影響をおよぼしているものでなければ、デジタルビジネス・トランスフォーメーションには分類されない。そして第3に、プロセスや人、戦略など、組織の変化を伴うものであること。デジタルビジネス・トランスフォーメーションには、テクノロジーよりもはるかに多くのものが関与している。
──『DX実行戦略』, マイケル・ウェイド, p.27

それでは、これら内容から、経営とDXの関係性に関して何か具体的なことが言えるでしょうか。難しい気もしますが、少し考えてみます。

・「企業の目的」と「DXの定義」がどのように関係するか

企業の目的は「顧客の創造」であり、DXで達成したいことは「業績を改善すること」とのだけでは、両者の関係を深堀りするのは難しそうです。ですので、「顧客の創造」のための機能である「マーケティング」と「イノベーション」との関係を見ていくことにします。結論としては以下のパターンが考えられます。
・DXの取り組みは、マーケティングとイノベーションの両方に関係する
・DXの取り組みは、マーケティングかイノベーションのどちらかに関係する
・DXの取り組みは、マーケティングかイノベーションのどちらかにも関係しない
さらには、上記のパターンにとは別に以下の結論も考えられます。
・DXの取り組みは、マーケティングやイノベーション以外の何かと関係する
・DXの取り組みは、マーケティングやイノベーション以外の何かと関係しない

・「マーケティングの定義」と「DXの定義」がどのように関係するか

これに関しては、本連載の出発点でもあります。最初の連載から取り上げてきたトピックです。当初は、手探りで連載を開始したため、DXでのビジネスモデルとマーケティングにおける4Pとの関係を分析してきました。つまり、ビジネスモデルや4Pといったより具体的な対象をもとに、関係を分析してきました。

前回と今回の内容も、この関係性の分析を様々な視点から行っていくものとなります。

・「イノベーションの定義」と「DXの定義」がどのように関係するか

ビジネスモデルを用いることが、イノベーションとどう関係するのかによりそうです。また、『DX実行戦略』での「対応戦略」の要素が、イノベーションの機能を含むものなのかどうかを確認する必要がありそうです。

イノベーションに関しては、本連載の対象外ではあります。「DXとイノベーション」として別の連載をするかもしれません。

事業の定義とDX

前節では、経営の視点からは「企業の目的」、「マーケティング」、「イノベーション」を、DXの視点からは「DXの定義」を確認しました。この節では、経営の視点をもう少し具体化します。つまり、ドラッカーがいうところの事業の定義とDXの定義およびDXの構成要素を確認します。

関係性の組み合わせとしては以下となります。
・「われわれの事業は何か」と「DXの定義」がどのように関係するか
・「われわれの事業は何になるか」と「DXの定義」がどのように関係するか
・「われわれの事業は何であるべきか」と「DXの定義」がどのように関係するか
・「われわれの事業は何か」と「変革理念」がどのように関係するか
・「われわれの事業は何になるか」と「変革理念」がどのように関係するか
・「われわれの事業は何であるべきか」と「変革理念」がどのように関係するか
・「われわれの事業は何か」と「対応戦略」がどのように関係するか
・「われわれの事業は何になるか」と「対応戦略」がどのように関係するか
・「われわれの事業は何であるべきか」と「対応戦略」がどのように関係するか
・「われわれの事業は何か」と「カスタマーバリュー」がどのように関係するか
・「われわれの事業は何になるか」と「カスタマーバリュー」がどのように関係するか
・「われわれの事業は何であるべきか」と「カスタマーバリュー」がどのように関係するか
・「われわれの事業は何か」と「ビジネスモデル」がどのように関係するか
・「われわれの事業は何になるか」と「ビジネスモデル」がどのように関係するか
・「われわれの事業は何であるべきか」と「ビジネスモデル」がどのように関係するか

これらの探っていく関係を以下の図にまとめました。

画像4

これら関係の中で、結果的に、どの部分がマーケティング的な部分なのか、そしてそれがDXに関係するのかどうかはまだ分かりません。

「われわれの事業は何か」とDXの定義

この節では、以下の関係に関して考察します。
・「われわれの事業は何か」と「DXの定義」がどのように関係するか

参照しやすいようにDXの定義を再掲します。

私たちは、デジタルビジネス・トランスフォーメーションを「デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを用いて組織を変化させ、業績を改善すること」と定義する。第1に、企業業績を改善することがその目的であり、第2にデジタルを土台にした変革であること。組織は絶えず変化しているが、ひとつ以上のデジタル技術が大きな影響をおよぼしているものでなければ、デジタルビジネス・トランスフォーメーションには分類されない。そして第3に、プロセスや人、戦略など、組織の変化を伴うものであること。デジタルビジネス・トランスフォーメーションには、テクノロジーよりもはるかに多くのものが関与している。
──『DX実行戦略』, マイケル・ウェイド, p.27

まずは、「われわれの事業は何か」とうことから。

自らの事業は何かを知ることほど、簡単でわかりきったことはないかに思われる。鉄鋼メーカーは鉄をつくり、鉄道会社は乗客と貨物を運び、保険会社は保険を引き受け、銀行は金を貸す。しかし実際には、「われわれの事業は何か」をとの問いは、ほとんど答えることの難しい問題である。正解はわかりきったものではない。
「われわれの事業は何か」を問うことは、トップマネジメントの責任である。あるポストがトップマネジメントのものであるかどうかを知る最も確実は方法は、そのポストにある者が、「われわれの事業は何か」を考えることを期待されているかどうかである。
まさにこの問いに関心を向け、意味ある答えを出し、事業の方向性を定め、目標を設定することこそ、トップマネジメントの責任である。
ほとんど常に、事業のミッションを検討していないことが、失敗と挫折の最大の原因である。逆に企業の成功は、「われわれの事業は何か」を問い、その問いに対する答えを徹底的に検討することによってもたされている。
─『経営の真髄 上』, ドラッカー, p.175

続けます。

企業のミッションを定義するとき、焦点とすべきものは一つしかない。顧客である。顧客が事業を定義する。
事業は、社名、定款、趣意書によっては定義はされない。顧客が財やサービスの購入によって満足させる欲求によって定義される。顧客を満足させることが企業のミッションである。したがって、「われわれの事業は何か」との問いは、企業を外部、すなわち顧客と市場の観点から見てはじめて答えられる。
顧客にとっての関心は、自らにとっての価値、欲求、現実である。この事実だけからも、「われわれの事業は何か」との問いに答えるには、顧客とその現実、状況、行動、価値観を原点としなければならない。
「顧客は誰か」との問いは、事業のミッションを定義する上で最も重要なものである。やさしい問いではない。まして、答えのわかりきった問いではない。だが、この問いに対する答えによって、企業が自らをどう定義するかが決まってくる。
─『経営の真髄 上』, ドラッカー, pp.175-176

さらに顧客について。

最終需要者たる消費者は、常に顧客である。しかしほとんどの事業には二種類の顧客がいる。しかも顧客によって、事業の捉え方が異なる。期待や価値観が異なり、買うものも異なる。しかし、「われわれの事業は何か」に対する答えによって、彼ら顧客のすべてを満足させなければならない。
ほとんどの事業には、少なくとも二種類の顧客がいる。カーペット産業には住宅購入者と住宅建築業者という顧客がいた。カーペットが売れるには、この両者に購入してもらわなければならない。
生活用品のメーカーには、主婦と小売店という二種類の顧客がいる。たとえ主婦に買う気を起こさせても、店が置いてくれなければどうにもならない。店が目につくように陳列しても、主婦が買ってくれなければ、これまたどうにもならない。
「顧客がどこにいるのか」を問うことも重要である。1920年代にシアーズが成功した秘密の一つは、顧客がそれまでとは異なる場所にいることを発見したことだった。農民が自動車を持ち、町で買い物をするようになっていた。
─『経営の真髄 上』, ドラッカー, pp.176-177

さらに顧客が何を買うのかについて。

次に重要な問いが、「顧客は何を買うのか」である。
キャデラックをつくる人たちは、自分たちはGMのキャデラック事業部であって、キャデラックという車をつくっていると答える。だがはたして、キャデラックの新車に大枚のドルを支払う者は、輸送手段としての車を買っているのか、それとも富の象徴としての車を買っているのか。
1930年代の大恐慌の頃、修理工からスタートして、キャデラック事業部の責任者を任されるにいたったドイツ生まれのニコラス・ドレイシュタットは、「われわれの競争相手はダイヤモンドとミンクである顧客が購入しているのは、輸送手段ではなくステータスだ」と言った。
この答えが、精算寸前のキャデラック事業部を救った。わずか二年のうちに、あの大恐慌下にもかかわらず、キャデラックは成功事業へと変身した。
─『経営の真髄 上』, ドラッカー, pp.177-178

最後です。

ほとんどのマネジメントが、苦境に陥ったときにしか、「われわれの事業は何か」を問わない。もちろん苦境時には、この問いかけが必要である。事実、そのようなときに問いかけるならば、目ざましい成果をあげ、回復不能と見える衰退すら好転させることができる。
しかし苦境に立つまで待っていたのでは、ロシア式ロシアンルーレットに見を任せるも同然である。マネジメントにおいて無責任である。この問いは事業を構想するときから問わなければならない。起業においては、明確かつ企業家的なコンセプトが不可欠である。
「われわれの事業は何か」と真剣に問うべきは、成功しているときである。成功は常に、その成功をもたらした行動を陳腐化する。新しい現実をつくり出す。新しい問題をつくり出す。「そうして幸せに暮らしました」で終わるのは、おとぎ話だけである。
もちろん、成功している企業のマネジメントが、「われわれの事業は何か」を問い直すことは、容易ではない。事実は明白であり、議論の余地はない。誰も成功にけちをつけることは好まず、ボートを揺るがすことを好まない。
─『経営の真髄 上』, ドラッカー, p.178

「われわれの事業は何か」との問いは、ドラッカーは明示していませんが、マーケティングに関わる問いに思えます。顧客からスタートしているためです。そのため、もし「われわれの事業は何か」とDXが関係するのであれば、DXはマーケティングに関わる取り組みであると言えそうです。

それでは、以下の関係を具体的に考えていきたいと思います。

・「われわれの事業は何か」と「DXの定義」がどのように関係するか

どのように考えるか難しいと思いましたが、次のような視点はどうでしょうか。
・DXは、「われわれの事業は何か」を問うことをプロセスに組み入れているか? また、そのような問いかけの必要性をDXの取り組みの背景としているか?
・DXは、「顧客は誰か」との問いかけをするプロセスに組み入れているか? ・DXは、「顧客がどこにいるのか」との問いかけをするプロセスに組み入れているか?
・DXは、「顧客は何を買うのか」との問いかけをするプロセスに組み入れているか?

上記の視点では、DXの取り組みのプロセスの中に「われわれの事業は何か」という問いに回答する活動が含まれているかどうかに着目しました。

画像5

『DX実行戦略』でのDXの定義は「デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを用いて組織を変化させ、業績を改善すること」ということでした。  

結論としては、この定義だけからは、「業績を改善する」ために、上記のような問いを行う活動が含まれているかどうかは分からないように思えます。これらの問いへは、『DX実行戦略』のより具体的なコンセプトである「対応戦略」「カスタマーバリュー」「ビジネスモデル」を考えるときに回答していきたいと思います。

続いて、DXの文脈に関して考えてみます。『DX実行戦略』でのDXの文脈は、彼らの言うデジタル・ボルテックスがもとになっていると思われます。

竜巻と同じく渦巻きは、回転によって周囲の物体に力をおよぼし、渦の中心に引き寄せる。「デジタル・ボルテックス」は市場に起きる破壊現象であり、「デジタル化できるものはすべてデジタル化される」という1点に向かって、企業を否応なしに引き寄せる性質を持っている。製品やサービス、ビジネスモデル、バリューチェーンはデジタル化され、競争を阻害している物理的な構成要素(従来の投下資本や物理的なインフラ、人力によるプロセス)は取り除かれる。渦巻きのなかでは、物体はしばしば回転の力によって分解する。これが、まさに既存企業のバリューチェーン内で起きていることだ。破壊的な企業(ディスラプター)はデジタル技術とデジタル・ビジネスモデルによって、バリューチェーンのつながりを破壊(アンバンドル化)し、その過程で新しいカスタマーバリュー(顧客価値)と市場の変化を生み出す。
──『DX実行戦略』,マイケル・ウェイド, pp.15-16

ウェイドらの前著にはこうあります。

いまや破壊的イノベーターは、ほぼすべての業界のバリューチェーンの一片一片にいたるまでをもデジタル化しつつある。その結果、バリューは細分化され、既存企業が依存している従来的な「プロフィットプール(訳注、バリューチェーン上で利益が大きい部分)」から水が漏れ出している。私たちの調査に参加したエグゼクティブたちは、今後5年のうちに非常に多くの(実に40%の)既存企業がデジタル・ディスラプションによってダメージを、それもおそらくは致命的なダメージを受けると考えていた。しかし、既存企業に打つ手がまったくないわけではない。次章以降で記すとおり、デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを活用すれば勝てる見込みはある。
──『対デジタル・ディスラプター戦略』,マイケル・ウェイド, p.47

このような「デジタル・ボルテックス」や「デジタル・ディスラプター」とった概念や現実のもとで、既存企業は組織変革が要求されている、という文脈です。

では、このような文脈のもとで、「われわれの事業は何か」「顧客は誰か」「顧客がどこにいるのか」「顧客は何を買うのか」という問いはどのように位置づけられ、扱われるのか。

問いとしての形にするのであれば、以下のようになるのかもしれません。
・「デジタル・ボルテックス」や「デジタル・ディスラプター」によって、「顧客は誰か」に影響が出ているのか。
・「デジタル・ボルテックス」や「デジタル・ディスラプター」によって、「顧客がどこにいるのか」に影響が出ているのか。
・「デジタル・ボルテックス」や「デジタル・ディスラプター」によって、「顧客は何を買うのか」に影響が出ているのか。
・「デジタル・ボルテックス」や「デジタル・ディスラプター」によって、「われわれの事業は何か」に影響が出ているのか。

「われわれの事業は何か」への定義を行う際、あるいは、すでに定義を持っていたとしても、「デジタル・ボルテックス」や「デジタル・ディスラプター」の存在がその定義を考える上で影響を与えるのかどうかです。

もし影響を与えているのであれば、DXが必要とされる文脈とマーケティングとが関係があるかもしれないということなります。

画像6

これら影響に関しては次回以降に考えていきたいと思います。

まとめ

今回は、DXと経営の関係に関して、いくつかの問いに回答しました。
・「企業の目的」と「DXの定義」がどのように関係するか
・「マーケティングの定義」と「DXの定義」がどのように関係するか
・「イノベーションの定義」と「DXの定義」がどのように関係するか
・「われわれの事業は何か」と「DXの定義」がどのように関係するか

結果として「DXの定義」だけでは、具体的な示唆を得るのは難しいことが分かりました。次回は、今回の続きとなります。「われわれの事業は何になるか」「われわれの事業は何であるべきか」と「DXの定義」との関係を探ります。続きはこちら

これまでの記事

第1回はこちら。経産省のDXの定義とマーケティングとの関係について考察しました。
第2回はこちら。『DX実行戦略』におけるDXの定義とマーケティングとの関係について考察しました。
第3回はこちら。「無料/超低価格」のビジネスモデルを分析しました。
第4回はこちら。「購入者集約」のビジネスモデルを分析しました。
第5回はこちら。「価格透明性」のビジネスモデルを分析しました。
第6回はこちら。「リバースオークション」のビジネスモデルを分析しました。
第7回はこちら。ここまでの記事をまとめました。
第8回はこちら。「従量課金制」のビジネスモデルを分析しました。
第9回はこちら。『マーケティング大原則』という書籍におけるマーケティング定義を確認しました。
第10回はこちら。『マーケティング大原則』という書籍で紹介させている「戦略的コンセプト」をDXの視点から関係性を見ました。
第11回はこちら。DXの実行プロセスとマーケティングのマネジメントプロセスの関係性を見ました。
第12回はこちら。DXの実行プロセスとマーケティングのプランニングプロセスの関係性を見ました。
第13回はこちら。『デザインドフォー・デジタル』というDXの書籍をもとにDXとマーケティングの関係をみました。
第14回はこちら。DXと経営との関係付けの準備を行いました。

株式会社分析屋について

https://analytics-jp.com/

【データ分析で日本を豊かに】
分析屋はシステム分野・ライフサイエンス分野・マーケティング分野の知見を生かし、多種多様な分野の企業様のデータ分析のご支援をさせていただいております。 「あなたの問題解決をする」をモットーに、お客様の抱える課題にあわせた解析・分析手法を用いて、問題解決へのお手伝いをいたします!
【マーケティング】
マーケティング戦略上の目的に向けて、各種のデータ統合及び加工ならびにPDCAサイクル運用全般を支援や高度なデータ分析技術により複雑な課題解決に向けての分析サービスを提供いたします。
【システム】
アプリケーション開発やデータベース構築、WEBサイト構築、運用保守業務などお客様の問題やご要望に沿ってご支援いたします。
【ライフサイエンス】
機械学習や各種アルゴリズムなどの解析アルゴリズム開発サービスを提供いたします。過去には医療系のバイタルデータを扱った解析が主でしたが、今後はそれらで培った経験・技術を工業など他の分野の企業様の問題解決にも役立てていく方針です。
【SES】
SESサービスも行っております。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
株式会社分析屋です。神奈川県で、データ分析の支援・代行を行っています。 https://analytics-jp.com