見出し画像

DXとマーケティングその21:シェアード・カスタマーインサイト

分析屋の下滝です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とマーケティングの関係を考えてくシリーズの第21回目です。

ここまでの数回では、経営とDXとマーケティングの関係を見てきました。

今回は、寄り道してDX書籍の一つである『デザインドフォー・デジタル』の続きを行いたいと思います。

これまでの記事

第1回はこちら。経産省のDXの定義とマーケティングとの関係について考察しました。
第2回はこちら。『DX実行戦略』におけるDXの定義とマーケティングとの関係について考察しました。
第3回はこちら。「無料/超低価格」のビジネスモデルを分析しました。
第4回はこちら。「購入者集約」のビジネスモデルを分析しました。
第5回はこちら。「価格透明性」のビジネスモデルを分析しました。
第6回はこちら。「リバースオークション」のビジネスモデルを分析しました。
第7回はこちら。ここまでの記事をまとめました。
第8回はこちら。「従量課金制」のビジネスモデルを分析しました。
第9回はこちら。『マーケティング大原則』という書籍におけるマーケティング定義を確認しました。
第10回はこちら。『マーケティング大原則』という書籍で紹介させている「戦略的コンセプト」をDXの視点から関係性を見ました。
第11回はこちら。DXの実行プロセスとマーケティングのマネジメントプロセスの関係性を見ました。
第12回はこちら。DXの実行プロセスとマーケティングのプランニングプロセスの関係性を見ました。
第13回はこちら。『デザインドフォー・デジタル』というDXの書籍をもとにDXとマーケティングの関係をみました。

DXと経営篇
第14回はこちら。DXと経営との関係付けの準備を行いました。
第15回はこちら。DXと事業の定義がどのように関係するのかをみました。
第16回はこちら。DXと「われわれの事業は何になるか」と「われわれの事業は何であるべきか」がどのように関係するのかをみました。
第17回はこちら。DXの背景を整理しました。
第18回はこちら。DXの背景と「顧客は誰か」との関係を整理しました。
第19回はこちら。DXの背景と「顧客はどこにいるか」との関係を整理しました。
第20回はこちら。DXの背景と「顧客は何を買うのか」との関係を整理しました。

以前の話

まずは第13回で議論した内容を振り返ります。

『デザインド・フォー・デジタル』でのDXの定義を再確認します。

デジタル対応化のための企業変革。デジタル技術やデータを活用して、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、組織や企業文化などの変革を通じて、競争力の向上を目指すこと。
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, p.26

「デジタル対応化」とは?

より高度なカスタマー・バリュープロポジションを実現するために、イノベーティブなデジタルサービスを開発すること。
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, p.26

バリュープロポジションとは?

価値提案。顧客のニーズに対して自社だけが提案できる価値を言う。自社の存在価値や独自性を顧客に伝え、競争力の向上につなげるための概念。
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, p.26

関連する概念を整理したのが下記の図となります。

画像2

また、マーケティングとの関係は以下のように整理しました。

画像2

DXの領域(青系)とマーケティングの領域(赤系)をつなぐ概念となりそうなのは、「バリュープロポジション」であると考えました。

マーケティングでの「バリュープロポジション」は、『コトラーの戦略的マーケティング』をもとにしています。

『デザインド・フォー・デジタル』では、デジタル対応化企業になるために行わなければならないこと、つまり、DXにおいて行うこととは、5つのビルディングブロックを強化・構築することであると述べられています。

既存企業がデジタル対応化を志向する場合、実現への道筋ははっきりしている。5つのビルディングブロックを構築すればよいのだ。(省略)
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, p.222
本書のリサーチ結果によると、これまでの5つの章で述べてきたデジタル・ビルディングブロックこそが、企業のデジタル対応化を成功するために強化しなければならない組織能力であることが判明した。要約すると、効果的にデザインされたデジタル組織は、次の5つの能力をすべて有していたのである。
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, p.222

ここではビルディングブロックは「組織能力」であるとされています。

5つのビルディングブロックを図に整理しました(左上)。

画像3

これら5つのビルディングブロックは以下です。

・シェアード・カスタマーインサイト:顧客の購買欲をそそる製品・サービスや顧客ニーズを満たすためのデジタル技術の活用方法に関する組織的学習
・オペレーショナルバックボーン:企業の中核業務を支援する標準化、統合化されたシステム、プロセス、データ
・デジタルプラットフォーム:デジタルサービスの開発を迅速に行うために活用されるビジネス、データ、インフラストラクチャの各コンポーネントのリポジトリ
・アカウンタビリティーフレームワーク:自律と強調のためのバランスを実現するためになされる、デジタルサービスおよびコンポーネントに対する責任の割り当て
・外部デベロッパープラットフォーム:社外に開放されているデジタルコンポーネントのリポジトリ
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, pp.54-55

少し分かりにくいです。少し違う表現もされています。

(省略)フィリップスの事例を用いて、各ビルディングブロックについて説明しよう。
・シェアード・カスタマーインサイト:顧客のニーズを知るために人材、プロセス、技術を編成すること(フィリップスにおけるヘルススイート・ラボを活用した顧客のニーズの把握)
・オペレーショナルバックボーン:安定した業務を支える、信頼性および効率性の高い中核プロセスを確立するために人材、プロセス、技術を編成すること(フィリップスの標準化されたプロセスをサポートする基幹系情報システム「フィリップス統合ランドスケープ」)
・デジタルプラットフォーム:デジタルサービスの構成要素であるソフトウェアコンポーネントを構築・利用するために人材、プロセス、技術を編成すること(フィリップスにおけるHSDPおよびCDP2)
・アカウンタビリティーフレームワーク:デジタルサービスの成功と進化に対して個々の従業員が確実に責任を担う体制を作るために人材、プロセス、技術を編成すること(フィリップスにおけるコンポーネントビジネスとソリューションビジネスに関わる組織の再デザイン)
・外部デベロッパープラットフォーム:自社のデジタルサービスに関するポートフォリオを外部の事業パートナーが利用して拡充できるようにするために、人材、プロセス、技術を編成すること(フィリップスにおけるHSDP.io)
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, pp.54-55

これらの方が分かりやすいでしょうか。5つすべてが「編成する」としていますので、プロセスであると解釈できます。ただし、フィリップスの例でみると、以下のように、プロセスの結果、あるいは、プロセスの過程で作成されたものが表現されているようにも見えます。

・「オペレーショナルバックボーン」における基幹系情報システム
・「デジタルプラットフォーム」におけるHSDPおよびCDP2
・「外部デベロッパープラットフォーム」におけるHSDP.io

また「アカウンタビリティーフレームワーク」では、「組織の再デザイン」とされているのでは、結果として見れば「再デザインされた組織」と言えそうです。

「シェアード・カスタマーインサイト」では、「ヘルススイート・ラボを活用した顧客のニーズの把握」とあります。これは「把握するというプロセス」なのか、「プロセスの結果として得られた顧客ニーズ」なのか少し曖昧です。

さらに他にもこれらのビルディングブロックは次のようにも表現されています。

本書のリサーチ結果によると、これまでの5つの章で述べてきたデジタル・ビルディングブロックこそが、企業のデジタル対応化を成功するために強化しなければならない組織能力であることが判明した。要約すると、効果的にデザインされたデジタル組織は、次の5つの能力をすべて有していたのである。
シェアードインサイト:企業がどのようなデジタルソリューションを開発すれば顧客の購買意欲を高めるのかという点に関するシェアードインサイト(このビルディングブロックによって、企業がデジタル技術で実現できるものと顧客が望むものが重なり合う部分に関するナレッジを継続的に深めることができる)
オペレーショナルバックボーン:中核業務プロセスの標準化と統合化の要件を満たしたオペレーショナルバックボーン(このビルディングブロックは、基本的な業務プロセスの実行と企業のデータの完全性に対する信頼性を向上させる)。
デジタルプラットフォーム:デジタルサービスの開発に活用可能なデジタルコンポーネントで構成されたデジタルプラットフォーム(このビルディングブロックにより、ビジネス、データ、インフラストラクチャの各コンポーネントのリポジトリへのアクセスが可能となる)
アカウンタビリティーフレームワーク:自律と協調の両方を実現するように意思決定権限を割り当てるアカウンタビリティーフレームワーク(このビルディングブロックは、デジタルプラットフォームの開発と利用に際して、そのペースを示し、協調を促すための役割、意思決定権、プロセスを規定する)
・外部デベロッパープラットフォーム:デジタルコンポーネントを外部に開放する外部デベロッパープラットフォーム(このビルディングブロックにより、デジタルパートナーとの提携関係を築くための技術、プロセス、役割がもたらされる)
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, pp.222-223

各ビルディングブロックの概念は、この連載を通じて詳しく見ていきたいと思います。

その前に、ビルディングブロック自体の概念について、もう少し引用します。

本書のリサーチを統計的に検証した結果、ビルディングブロックは、相互に依存し合いながらも、固有の5つの組織的資産であり、それぞれが個別に、また組み合わせによって企業の成功に貢献するものだとわかった。各ビルディングブロックは、企業の人材、プロセス、技術に変化をもたらす。それ故、デジタル対応化への道のりは長いものの、すべてのビルディングブロックを強化していく一連の取り組みそのものがデジタル対応化への道のりであると言える。
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, pp.223-224

画像4

ここで「各ビルディングブロックは、企業の人材、プロセス、技術に変化をもたらす」とありますので上記の図に追記して表しました。

また、ビルディングブロックは「組織的資産」であると表現されてます。前述の引用ではビルディングブロックは「組織能力」とも表現されていました。

また、総合的には、ビルディングブロックがもたらす物は以下となります。

各ビルディングを適切に構築すれば、デジタルサービスに関するイノベーションを推進することができ、デジタルサービスが生み出す収益、利益、顧客満足度を向上させることができる。
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, p.224

さて、次節では、1つ目のビルディングブロックであるシェアード・カスタマーインサイトを従来のマーケティングとの関係性を意識しながら見ていきます。

シェアード・カスタマーインサイト

では、1つ目のビルディングブロック、つまり、組織能力である「シェアード・カスタマーインサイト」を見ていきます。

成功を収めているデジタル企業は、自分たちができることと顧客のウォンツを把握するために、商品化の見込みのあるサービスを実験することが当たり前にできている。デジタルサービスに関する実験を自社のDNAに組み込むように、人材、プロセス、技術が構成されているのである。そうすることで、シェアード・カスタマーインサイト(顧客の購買意欲をそそる製品は何か、顧客ニーズに応じていかにデジタル技術を活用するかに関する組織的学習と定義される)と我々が呼称ビルディングブロックを改善しているのだ。
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, p.66

画像7

あえて、項目に分解するなら次のような感じでしょうか。
・自分たちができることを把握する
・顧客のウォンツを把握する
・商品化の見込みのあるサービスを実験する
・デジタルサービスに関する実験を自社のDNAに組み込むように、人材、プロセス、技術を構成する
・顧客の購買意欲をそそる製品は何か、顧客ニーズに応じていかにデジタル技術を活用するかに関する組織的学習が改善される

シェアード・カスタマーインサイトこのの説明だと分かりにくいですね。ビルディングブロックの説明の際には「組織能力」の一つといいつつ、ここでは組織的学習とされているのが分かりにくいのではないでしょうか。

補足として、カスタマーインサイト自体は、マーケティングでの従来的な概念でいうと「顧客についての深い洞察」のように使われると思われます(たとえば『コトラー、アームストロング、恩藏のマーケティング原理』)。つまり、何らかのプロセスの結果として得られたもののように感じます。

「シェアード(共有された)」なカスタマーインサイトといってる点に特徴があるのかもしれません。本文では次のような記述があります。

実験の成否にかかわらず、デジタルビジネスを構築して成功を収めるためには、顧客のニーズに応えるためにデジタル技術をいかに活用するか、という点を学び蓄積する必要がある。ただし大企業にとっては、学習内容を蓄積するだけでは十分でない。個々の社員と各部門が学習したことを共有する必要があるのだ。これができなければ、社内で同様の実験に投資されてしまい、同じことを学習するという事態に陥りかねない。
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, p.65

学びを蓄積し、他者と共有し、投資の無駄を発生されない、という感じでしょうか。同じく次のような言い方もされています。

製品開発に関する数十年にわたるリサーチから、単独でなされたイノベーションによりリスクが生じることが明らかになった。具体的には、イノベーションは、活気あるビジネスモデルには不可欠であるが、同時に付加価値を生まない業務の複雑化を招く恐れもある。これは部門ごとに実験を行って学習が共有されないことから生じる事象である。そして企業は、異なる製品ラインや部門にわたってデータ、製品、サービスを統合して新たなカスタマー・バリュープロポジションを創造する機械を逸するおそれがある。
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, pp.84-85

先程は投資の無駄の可能性でしたが、ここは機会を逸する恐れについて書かれているようです。

続いては「シェアード・カスタマーインサイト」の章のまとめから引用しながら概念を見ていきます。

その前に、バリュープロポジションの考えが良く出てきますので、定義を再掲します。

価値提案。顧客のニーズに対して自社だけが提案できる価値を言う。自社の存在価値や独自性を顧客に伝え、競争力の向上につなげるための概念。
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, p.26

では、まとめを見ていきます。

デジタルサービスの開発にあたっては、企業のバリュープロポジションを再定義するためにデジタル技術ができることと、顧客が価値を見出すものとが重なり合う部分を見つける必要がある。それを見つけるには、デジタルサービス開発に対する実験学習アプローチを推進するために、人材、プロセス、技術を編成しなければならない。人材は新しい習慣を学ぶ必要がある。その習慣は、新しい業務プロセスに沿ったものであり、新しい技術とデータによって確立するものである。シェアード・カスタマーインサイトの形成を助けるために、以下に本書の要点を記しておく。
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, p.87

一点目としては「デジタル技術」で可能となるソリューションは無限にありますが、その中から、顧客が価値を感じるものを見出す必要があるという意味のようです。顧客が価値を感じるデジタルサービスを開発が、企業のバリュープロポジション、すなわち、その企業だけが提供できる価値を実現する、という感じでしょうか。

画像5

二点目としては、顧客が価値を感じるものを見出すためには、サービス開発に関して、従来的なやり方ではダメということですね。新しいアプローチが必要という感じです。

要点も引用します。一点目。

シェアード・カスタマーインサイトは、企業がどのようなデジタルサービスを開発でき、顧客が何に価値を見出すかを探る実験を継続的に行うことから見出される。従業員がデジタルサービスのアイデアを試し、学習、共有することを推進するために、どのようなメカニズム(ラボ、コンテスト、ベンチャー事業への資金拠出、イノベーションに携わる役割、顧客を関与させるプロセス等)を構築できるか。
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, p.87

ここでは「シェアード・カスタマーインサイト」は、「見出される」とされています。

メカニズムが必要ということでしょうか。

二点目。

テスト&ラーンの環境を作るためには、根拠に基づくカルチャー、すなわち仮説を立て、実験してデータを収集し、結果を測定し、成果を次のステップにつなげる人材が必要である。根拠に基づく意思決定文化が社内にあるか。社内で試行して学習する力を高めるために何ができるか。
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, pp.87-88

ここで、「テスト&ラーン」とは、デジタル技術が可能とするものと実際に顧客が購入するものとが重なり合う部分を、反復を繰り返しながら見つけ出す作業、であるとされています。

社内の意識を変える、変わる必要があるということでしょうか。

三点目。

デジタルサービスの実験はビジョンにしたがって行う必要があるが、ビジョンはその実験の結果によって進化する。このようにして有効なデジタルサービスに焦点が絞られていく。デジタル企業に向けて構想したバリュープロポジションは社内のすべての人材に浸透しているか。そのバリュープロポジションを作り出すために経験した成功や失敗を社内の全員が知っているか。
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, p.88

ビジョンがないとダメだということでしょうか。例えば、本文では、ビジョンは次のような使われ方がされています。

スマート・エネルギーマネジメント・ソリューションを提供するというシュナイダーエレクトリックのビジョンは、何を実験するかを選択する際の指針となっている。同様に、フィリップスの低コストでヘルスケアの成功を高めるというビジョンや、USAAの会員の経済的安定を守るというビジョンでは、実験の効果検証のための共通の評価指標を設けている。これらのビジョンを設定することにより、結果的に、実験によって企業戦略の追求が妨げられれる可能性に歯止めをかけている。
こうしたビジョンは、デジタル技術によって可能になるという理由で、本書では「デジタル」ビジョンと呼んでいるが、実際には、これらはデジタル部門に限らず企業全体の事業ビジョンになっていることを付け加えておこう。デジタル経済においては、デジタルビジョンがその企業の事業ビジョンとなるのだ。
──『デザインド・フォー・デジタル』, ロス, pp.74-75

・シュナイダーエレクトリック:スマート・エネルギーマネジメント・ソリューションを提供する
・フィリップス:低コストでヘルスケアの成功を高める
・USAA:会員の経済的安定を守る

画像7

マーケティングとの関係

シェアード・カスタマーインサイトの話は、マーケティングにおける以下の活動と関係しているように思えました。

・マーケティングリサーチ
・新製品開発プロセス

また、マーケティングにおいてもカスタマーインサイトという概念があります。言葉としてはシェアードとついている点が異なりますが、カスタマーインサイトという言葉が、マーケティング活動のどこにおいてどのように使われているのかを確認しておきたいと思います。

つまり、シェアード・カスタマーインサイトとは、マーケティングにおける概念を、デジタルサービス開発に特化した話のようにも思えます。

「デジタルビジョン」に関しては、マーケティングの範囲からは少しずれるかもしれません。企業全体の事業ビジョンであるとありますので、経営レベルの話かもしれません。

たとえば、『コトラー、アームストロング、恩藏のマーケティング原理』では、戦略計画策定のステップは、次のように表現されています。
企業ミッションの定義
→ 企業の目的と目標の設定(企業レベル)
→ 事業ポートフォリオの設計
→ マーケティング戦略など機能戦略策定(事業単位レベル、製品レベル、市場レベル)

ここでは「ミッション」とあり「ビジョン」ではありませんが、少し比較してみます。

ミッション・ステートメントは、自らを取り巻く環境の中で何を実現したいのか、組織としての目標を表明したものである。
──『コトラー、アームストロング、恩藏のマーケティング原理』, コトラーら, p.34

製品志向ではなく、市場志向型の良いミッションの例として、次のようなものが挙げられています(同書、p.35より)。
・マクドナルド:お客様のお気に入りの食事の場とスタイルであり続けること
・レブロン:我々はライフスタイルと自己表現、成功と地位、思い出、希望、夢を販売する。
・味の素:わたしたちは地球的な視野にたち、"食"と"健康"そして、"いのち"のために働き、明日のよりよい生活に貢献します。

なお、デジタルビジョンの例は以下でした。
・シュナイダーエレクトリック:スマート・エネルギーマネジメント・ソリューションを提供する
・フィリップス:低コストでヘルスケアの成功を高める
・USAA:会員の経済的安定を守る

ビジョンの方が、少し具体性がある感じでしょうか。

まとめ

今回は、『デザインドフォー・デジタル』でのDXを見ながら、従来のマーケティングとの関係を探る続きを行いました。

『デザインドフォー・デジタル』でのDXの実現とは、5つのビルディングブロックを構築することのようです。各ビルディングブロックは、組織能力や組織的な資産を表すとともに、人材、プロセス、技術を編成すること、ともされています。

今回は、ビルディングブロックの一つである「シェアードカスタマーインサイト」を少し取り上げ、内容を確認しました。「シェアードカスタマーインサイト」は、ざっくりいうと、デジタルサービス開発のためには顧客のニーズをうまく知ることが必要であり、そのためにはどのような組織である必要があるのか、ということかもしれません。

また本連載のマーケティングの視点としては、「シェアードカスタマーインサイト」の内容と従来のマーケティング活動との関係があるかもしれないものとして、「マーケティングリサーチ」と「新製品開発プロセス」を指摘しました。

次回は、「シェアード・カスタマーインサイト」の内容をさらに確認しながらマーケティングでの活動との関係性を詳しく見ています。続きはこちら

これまでの記事

第1回はこちら。経産省のDXの定義とマーケティングとの関係について考察しました。
第2回はこちら。『DX実行戦略』におけるDXの定義とマーケティングとの関係について考察しました。
第3回はこちら。「無料/超低価格」のビジネスモデルを分析しました。
第4回はこちら。「購入者集約」のビジネスモデルを分析しました。
第5回はこちら。「価格透明性」のビジネスモデルを分析しました。
第6回はこちら。「リバースオークション」のビジネスモデルを分析しました。
第7回はこちら。ここまでの記事をまとめました。
第8回はこちら。「従量課金制」のビジネスモデルを分析しました。
第9回はこちら。『マーケティング大原則』という書籍におけるマーケティング定義を確認しました。
第10回はこちら。『マーケティング大原則』という書籍で紹介させている「戦略的コンセプト」をDXの視点から関係性を見ました。
第11回はこちら。DXの実行プロセスとマーケティングのマネジメントプロセスの関係性を見ました。
第12回はこちら。DXの実行プロセスとマーケティングのプランニングプロセスの関係性を見ました。
第13回はこちら。『デザインドフォー・デジタル』というDXの書籍をもとにDXとマーケティングの関係をみました。

DXと経営篇
第14回はこちら。DXと経営との関係付けの準備を行いました。
第15回はこちら。DXと事業の定義がどのように関係するのかをみました。
第16回はこちら。DXと「われわれの事業は何になるか」と「われわれの事業は何であるべきか」がどのように関係するのかをみました。
第17回はこちら。DXの背景を整理しました。
第18回はこちら。DXの背景と「顧客は誰か」との関係を整理しました。
第19回はこちら。DXの背景と「顧客はどこにいるか」との関係を整理しました。
第20回はこちら。DXの背景と「顧客は何を買うのか」との関係を整理しました。

株式会社分析屋について

https://analytics-jp.com/

【データ分析で日本を豊かに】
分析屋はシステム分野・ライフサイエンス分野・マーケティング分野の知見を生かし、多種多様な分野の企業様のデータ分析のご支援をさせていただいております。 「あなたの問題解決をする」をモットーに、お客様の抱える課題にあわせた解析・分析手法を用いて、問題解決へのお手伝いをいたします!
【マーケティング】
マーケティング戦略上の目的に向けて、各種のデータ統合及び加工ならびにPDCAサイクル運用全般を支援や高度なデータ分析技術により複雑な課題解決に向けての分析サービスを提供いたします。
【システム】
アプリケーション開発やデータベース構築、WEBサイト構築、運用保守業務などお客様の問題やご要望に沿ってご支援いたします。
【ライフサイエンス】
機械学習や各種アルゴリズムなどの解析アルゴリズム開発サービスを提供いたします。過去には医療系のバイタルデータを扱った解析が主でしたが、今後はそれらで培った経験・技術を工業など他の分野の企業様の問題解決にも役立てていく方針です。
【SES】
SESサービスも行っております。