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DXとマーケティングその48:デジタル対応顧客の行動体験モデル

分析屋の下滝です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とマーケティングとの関係を考えてくシリーズの48回目です。

ここ数回は、最近発売された『コトラーのマーケティング5.0』におけるDXとその他のDX書籍での方法論とがどのように関わり合うのかを分析しています。

DXが全社的な取り組みであるとした場合、その実行のプロセスには、整合性や一貫性が求められます。各DXの方法論において、マーケティング5.0がどのように関係するのかを分析することで、それら方法論にマーケティング5.0の考えを組み込めるかどうかを評価でき、その評価に基づき、適切な方法論を作りだせる可能性があります。

分析の最終的なアウトプットは、各方法論をベースに、マーケティング5.0の要素を組み込んだ新たな方法論となります。以下は『DX実行戦略』の書籍の場合です。

今回のテーマでの連載の議論の流れとしては以下を考えています。
1.マーケティング5.0におけるDXを確認する(第40回の内容)
2.これまでの連載で扱っていたDX関連書籍である『DX実行戦略』『デザインド・フォー・デジタル』『DXナビゲーター』との関係を分析していくにあたり、準備を行う(第41回の内容)。
3.各DX関連書籍での「DXの定義」と比較を行い、共通点や異なる点を明らかにする(第42回の内容)。
 3.1.比較を行うにあたり、枠組みを定義する(今回の内容)。
4.これらDX関連書籍での「方法論・手法」の中に「マーケティング5.0でのDX」がどのように位置付けられるのかを明らかにする。
5.これらDX関連書籍での「方法論・手法」の中に「マーケティング5.0」がどのように位置付けられるのかを明らかにする。


これまでの記事

これまでの連載記事に関しては以下の記事から確認できます。

これまでの話:マーケティング5.0におけるDX

マーケティング5.0に関しての概要と、マーケティング5.0でのDXの位置付けに関しては過去の記事を参照してください。

これまでの話:比較のための枠組み

分析をしていくにあたり、独自枠組みを定義しました。詳細は過去の記事を参照してください。

今回の話

前回は、以下の図に示すような流れでデジタル対応顧客(デジタル化した顧客)とは何かを考えました。

1.顧客の行動体験モデルの定義:まず、これまでの記事で議論してきた、「デジタル化した顧客かどうかを区別するための9つの基準」を抽象化・一般化して、「顧客の行動体験モデル」を定義しました。実際には、各基準の記述に含まれる要素をもとに、モデルを定義しました。したがって、基準自体のモデルではありません。
2.デジタル化した顧客かどうかを区別するための基準:次に、定義したモデルをもとに、9つの基準をうまく説明できるかを評価しました。そして、「デジタル化した顧客かどうかを区別するための基準」には、3種類がありそうだということを指摘しました。
・どのような行動をするかどうかの基準
・どのような評価をするかどうかの基準
・行動するかどうかをどのように判断するかの基準

1つ目の「顧客の行動体験モデル」は次のものです。各要素の定義については、前回の記事を参照してください。

このモデルにおいて、プロセスの要素だけを取り上げると3つあります。
・行動するかどうかの判断
・行動
・評価

「デジタル化した顧客かどうかを区別するための基準」をもとに、デジタル化した顧客かどうかを判別するプロセスは次のようになります。

前回は、議論として不十分であることを述べました。それは、ある基準が顧客がデジタル化しているかどうかを区別する基準であるかどうか、という(メタな)基準が、定義できていないことです。結局の所、デジタル化した顧客とは何であるかの定義が不明確なためです。

今回は、このメタ基準に関して議論を進めます。

デジタル対応顧客の行動体験モデル

議論のアプローチは、構造的な視点から行います。

顧客の行動体験モデルは、実際には、デジタルに関わる要素は定義しておらず、汎用的なモデルとなっています。この汎用的なモデルを、デジタル要素で拡張することで、解決を試みます。

拡張のイメージとしては、「体験」と「行動」の要素を、分類することです。なお「評価」に関する要素も後の記事で議論します。

ここでは、「体験」は「デジタル体験」と「物理的体験」に、「行動」は「デジタル行動」と「物理的行動」に分けられると考えました。

もちろん、ある体験やある行動を、これらに分類する基準が必要となります。

さらには、「デジタル行動」と「デジタル体験」の関係も表現する必要があります。たとえば、以下のような疑問に答える必要があります。
・「デジタル行動」であれば「デジタル体験」を必ず出力するのでしょうか?
・「デジタル行動」であれば「デジタル体験」のみを出力するのでしょうか?
・「デジタル体験」は、「デジタル行動」がなければ出力されないのでしょうか?

上記の課題は今後解決するとして、ひとまず拡張したモデルを以下に示します。

デジタル対応顧客の行動体験モデル

続いて、それでは、どのようにして「デジタル行動」や「デジタル体験」を定義していけばよいでしょうか。ヒントはやはり、これまで議論してきた9つの基準にありそうです。

たとえば、「顧客がデジタルプラットフォームで取引しているかどうか」の基準は、次のように表現しました。
・行動:デジタルプラットフォームで取引する
・体験:その行動の体験

前回議論したように、行動と体験に関係する基準は他には以下となります。
顧客が製品・サービスを消費または使用するときデジタル・インタフェースで接しているかどうか。
・行動:製品・サービスを消費または使用するときデジタル・インタフェースで接する
・体験:その行動の体験

顧客が行うカスタマー・ジャーニーが、全部または一部がオンラインで行われているかどうか。
・行動:
全部または一部がオンラインで行われるカスタマージャーニーを行う
・体験:その行動の体験

顧客が、デジタル・テクノロジーによって置き換えられ強化されたタッチ
ポイントを体験しているかどうか。
・行動:
デジタル・テクノロジーによって置き換えられ強化されたタッチ
ポイントと関わる
・体験:その行動の体験

顧客がデジタルに精通しているかどうか。
・行動:
デジタルに関わる何らかの行動
・体験:その行動の体験

では、これらを参考に、もう少し深堀りしてみます。

まず「顧客がデジタルプラットフォームで取引しているかどうか」を考えてみます。つまり「デジタルプラットフォームで取引する」という「行動」を考えてみます。

モデリングの視点から言うと、この記述は、ある一つの要素としての「行動」だと表現しています。しかし、より細かな要素に分解できそうです。以下の2つの要素です。
・デジタルプラットフォーム
・取引

ここで「取引」の言葉の意味にもよりますが、「取引」という「行動」は、デジタルとは関係なさそうです。関係がありそうなのは「デジタルプラットフォーム」だと言えます。そもそもデジタルが含まれているためです。

したがって、デジタルと関係のありそうな何らかの物(「デジタルプラットフォーム」)との関わりのある何らかの行動(「取引」)は、「デジタル行動」と呼べる、と言えるかもしれません。

もちろん、「デジタルと関係がある物」の定義が必要です。「デジタルプラットフォーム」とは何なのか、という定義も必要かもしれません。コトラーは定義をしなかったため、改めてこの議論の文脈で役立つ定義をする必要があります。

つまり、以下のような言葉や、その他の言葉を定義できる必要があります。
・デジタルプラットフォーム
・デジタルインターフェース
・(デジタル)タッチポイント
・(デジタル)カスタマージャーニー

また、タッチポイントやカスタマージャーニーは、「デジタルと関係がある物」とは異なる概念のようにも感じます。

これらを定義をするにあたり、どのようにアプローチするのかですが、これは、実際の現実の例を見ながら、それらの例を抽象化し、モデルを修正するしかないように思えます。つまり、各社のサービスを取り上げながら、どのような要素で構成されるのか、共通点や異なる点はあるのか、抽象化・一般化した要素として表現できるのか、ということを見ていく必要があります。

まとめ

マーケティング5.0の領域と、DXの領域をつなぐには、両領域を統一的に説明できるような枠組みがあると良さそうです。

これまでの記事では、そのための枠組みを考えました。3Cの考えを参考にしたものです(顧客、自社、競合)。そして、「顧客」にあたる要素を、デジタルの視点を表現しようとすると、「デジタル対応顧客(デジタル化した顧客)」という概念があると良さそうだとして議論を進めてきました。

しかし、「デジタル対応顧客」かどうかを区別するための基準が必要です。そのために、前回の記事では、顧客の行う、行動するかどうかの判断、行動、評価に着目したモデルを定義しました。

今回は、そのモデルをデジタルの視点で拡張することを試みました。

顧客が行う「行動」には、「デジタル行動」に分類できるものがありそうだと議論しました。「デジタル行動」かどうかは、「デジタルと関係がある物」との何らかの関係があることです。

次回は、「デジタルと関係がある物」の定義を、具体例を挙げながら考えていきたいと思います。続きはこちら


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