【映画】「カメラを止めるな!」感想・レビュー・解説

噂に違わず、面白い映画でした!

※以下基本的には、予告で流れている情報のみを使ってあれこれ書くつもりです。なので、既に予告を見ているという方にはネタバレにはならないと思います。予告の情報さえ知りたくない、という方は、以下の文章を読まない方がいいでしょう。



予告で既に、この映画は二部構成である、ということが明らかにされます。前半は、廃墟でゾンビ映画を撮影している時に本物のゾンビが現れてしまった、という設定の超B級ホラー映画。そして後半は、そんな超B級ホラー映画を撮影した面々の物語、という構成です。

前半の超B級ホラー映画の設定はこうです。かつて浄水場として使われていた廃墟を舞台に、日暮という監督がゾンビ映画を撮ろうとしている。ゾンビ役の男性とゾンビに襲われる女性のシーンで休憩が入り、メイク役の女性が、この廃墟の謂れを二人に話す。実はここ、表向きは浄水場なのだが、裏では日本軍が人体実験を行っていた、という噂があるのだ。死者を蘇らす実験をしていた、という。すると彼らは、撮影の休憩中に、本物のゾンビに遭遇してしまう。監督は、「カメラは止めない!」と宣言し、常軌を逸した死と隣り合わせのサバイバル映画撮影が始まる…。
というような話から、後半の、この超B級ホラー映画を撮影した面々の物語に移ります。
後半の物語で書けることは一点のみ。日暮監督が、どんな条件でこの映画を引き受けたのか、ということです。彼は、「ゾンビもので、生放送で、ワンカット」という、前代未聞の番組作りに巻き込まれることになり…。
というような話です。

これは、ホントに何も知らないで見た方が面白いでしょうね!僕は、この映画が話題になるずっと前から、映画館で散々予告を見ていたので、前後半の二部構成だということも分かっていたし、「ゾンビもので、生放送で、ワンカット」も分かっていましたが、そういう事前情報を一切何も知らないまま見ると、より面白いだろうな、と思います。とはいえ、僕も十分楽しめました。

先に観ていた人から、「映画が始まってからしばらく、あまりにB級映画すぎて帰ろうかと思った」と話を聞いていましたが、まあ確かにその気持ちは分からなくないです。何も知らないまま観に行ったら、(なんだこれ…)と思うような映画が37分続きます。(えっ、なんでこんな映画が話題なの…)と思うでしょうね、何も知らないで観に行けば。僕は、前半は前フリだと分かっていたので、観ながら、(ここは何かありそうだな)と感じる部分を多々発見していて、実際に後半で、やっぱりそこはなんかあるところだよね、ということが確認出来る、なんていう見方をしていました。ただ、なるほどそんな場面でも実は色々あったのか!という部分もあって、面白かったです。

しかし映画を観ながらみんな、爆笑なんですよね。いや、気持ちはわかります。これは、物語的にすごく良く出来てるんです。ある意味では、「刑事コロンボ」とか「古畑任三郎」みたいな構成なんです。コロンボとか古畑って、最初に犯人が分かってて、そいつがどう追い詰められるか、みたいな展開ですよね。だから、最初に答えが分かっている状態で観ている側はストーリーを追いかける。この映画も同じで、ある意味で最初の37分間が「答え」なんですね。で、後半でその「解説」がある。観客はみんな「答え」を知ってるから、後半の色んな場面で、「なるほど、これがあの「答え」に繋がるのか!」という予感を抱くことが出来て、で、「やっぱりそうだよな!」っていう確認が出来て、それが爆笑に繋がっているな、と思いました。うまいなぁ、と思いました。


しかしこの映画の最大の秀逸さは、「ゾンビもので、生放送で、ワンカット」という設定を最大限活かしきっている、ということですね。この映画は、そのどの要素が欠けてもまず成立しないんです。特に「生放送」「ワンカット」という設定があるからこそのストーリー展開で、よく1時間半の物語にこれだけ色々詰め込んだな、と感じさせられました。

また、前半と後半で焦点が当てられる人物が大きく変わる、というのもうまいなと思いました。前半のホラー映画では、当たり前だけど役者たちに焦点が当たるわけです。でも後半では、裏方たちに焦点が当たる。映画の裏側で何が起こっているのか、というドタバタはホントによく出来てて、そこに色んな要素で関わってくる人間たちのダメっぷりみたいなものも面白いなと思いました。

確かにこれは、人に勧めたくなるし、まったく事前情報なしで観た人はもう一回観たくなるだろうな、と思いました。たった2館からスタートした映画らしいですけど、こんな風に話題になっていくっていうのは、今の時代っぽいし、面白いものを作ればちゃんと届くし評価される、という希望を感じさせてもくれるなと思います。


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