【映画】「ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行」感想・レビュー・解説

うーむ、という映画だった。あまり面白いとは感じられなかったのだが、その理由が僕の方にあるかもしれないのでなんとも言えない。

この映画では、「新しい映画言語を生み出したか否か」という「革新」に焦点が当てられている。映画の中では、様々な点を取り上げて「革新」について語っているのだが、僕にはそれらがイマイチぴんとこなかった。

さて、当然ではあるが、「革新」を理解するためには、「革新以前」についても知っていなければならない。そして、この映画をあまり面白いと感じられなかった理由は、「僕が『革新以前』についてあまり知らないからではないか」という気もする。映画に詳しい人が見たら、この映画で語られる「革新」も面白く感じられるのかもしれない。

その点がイマイチよく分からない。

この点にはもう1つ、「実際の映像を使用する際の制約」も関係しているのだろうか、と想像したりもする。当然、作品の「ネタバレ」は避けなければならないだろうし、様々な理由から「使用許諾が下りる場面」に制約があるのかもしれない。より分かりやすく「革新」に触れたいが、それが伝わる映像が借りられない、あるいはその点に触れると作品のネタバレになる、などの制約があってもおかしくはないだろう。

僕的に良かったと感じたのは、この映画の中で扱われている「111の映画」の多くが、決して「メジャー」とは言えない作品だったことだ。中には、『ジョーカー』や『マッドマックス』、『パラサイト』、日本の映画で唯一取り上げられていた『万引き家族』など有名な作品も出てくる。しかし紹介される映画の多くが、「公開館が多く、宣伝もバリバリ行われる大作」ではなかったのがいいなと感じた。

凄いのが、この監督の観ている映画の範囲の広さで、ウガンダやアルゼンチンなど、普段なかなか観る機会のない映画も取り上げている。僕はNetflixやアマゾン・プライムに登録していないので、もしかしたらそういうサブスク系のサイトなら世界中あらゆる映画が観られるのかもしれないが、映画館でしか映画を観ないと決めている僕にはなかなか触れる機会のない映画で、興味深かった。

あと、恐らく意図的だろう、「革新」と言っても、最新技術の進化などにはほとんど触れられなかった。GoProカメラの発明やモーションキャプチャーなどの技術が扱われる部分はあったが、それ以外は基本的に「表現方法の『革新』」が扱われている。

公式HPを見ると、この映画の監督は、「365日、毎日映画を観て過ごし、人生で観た映画は約16000作品!」と書かれている。なかなかぶっ飛んだ映画好きだろう。監督のコメントとしてこんな言葉も載っていた。

【私は、「もしも世界で映画産業の発展を妨げるような脅威が発生したとして、たった1つの国の映画文化しか助けられないとしたらどの国を選ぶか?」と言われたら、迷わず「日本」と答えます。それぐらい邦画が大好きです!また、「一番好きな映画は?」と質問をされた時は、いつも今村昌平監督の『にっぽん昆虫記』(63)を挙げています。】

ま、すべての国に同じことを言っているかもだけど(笑)

僕は「にわか映画好き」なのでイマイチよく分からない部分もあったけど(僕が本腰を入れてちゃんと映画を観るようになったのはここ5~6年といった感じなので、それより前の映画はほぼ観たことがない)、映画好きなら楽しめる作品ではないかと思う。

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