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災害弱者お寺で支援 医ケア防災寺院ネット結成

※文化時報2022年6月3日号の掲載記事です。写真は大河内住職と懇談する東住吉支援学校PTAの片山会長(左)と潮見准会長。

 災害時に医療的ケア児=用語解説=の受け入れを検討している浄土宗願生寺(大河内大博住職、大阪市住吉区)は、「医療的ケア児のための防災拠点寺院ネットワーク」(医ケア防災寺院ネット)を結成し、活動に賛同する寺院と連携を始めた。大阪府内の7カ寺が宗派を超えて参加しており、防災や障害者の医療・福祉に詳しい専門家らが協力。願生寺が先行する取り組みについて、情報を共有している。(主筆 小野木康雄)

 7カ寺は願生寺と、浄土宗正明寺(堺市堺区)、高野山真言宗観音院(堺市南区)、日蓮宗妙長寺(大阪府河内長野市)、浄土宗大道寺(大阪市旭区)、浄土宗銀山寺(同市天王寺区)、浄土宗蟠龍寺(同市北区)。別表の通り、専門家と大河内住職が共同代表を務め、支援者や当事者も加わっている。現在は会員制交流サイト「フェイスブック」での情報交換が中心だ。

 願生寺は、南海トラフ巨大地震や豪雨災害の発生に備えて、昨年9月に防災プロジェクトを開始。自力での避難が難しい「災害弱者」のうち、指定避難所での対応が困難な医療的ケア児・者や障害児・者とその家族への支援を決めており、支援者や当事者と交流を深めつつある。

 すでに大河内住職が、放課後等デイサービス=用語解説=などを手掛ける近隣の施設を見学。大阪府看護協会や府立東住吉支援学校(大阪市東住吉区)のPTAと連携を進めている。

 大河内住職は「一緒に考えていくための居場所として、寺院に期待が寄せられている。いざという時に助けを求められるよう、1カ寺でも多くの寺院が地域共生社会づくりに参加してほしい」と話している。

「普通に生きている子たち」

 「当事者の方々との交流を通じ、指定避難所への避難は現実的でなく、福祉避難所も整備が追い付いていない状況を教えていただいた」。大河内住職は、そのような実感を持っている。

医ケア防災寺院ネットを発足させた願生寺

 5月20日には、府立東住吉支援学校PTAの片山初美会長と潮見純・准会長が願生寺を訪問した。同校には児童生徒415人中、在宅・入院を含む医療的ケア児が29人いる。

 潮見准会長の中等部1年の長女は重度の脳性まひで、喀痰(かくたん)吸引などの医療的ケアが必要。地域の人々に知ってもらっているが、地域自体の高齢化が進んでおり、いざという時に支援を受けられるかどうか不安だという。

 「私たちにとっては、普通に生きている子たちで、普通に自分の子育てをしているだけ。医療的ケア児はハードルが高いと思ってほしくない」と訴える。

 片山会長の高等部2年と1年の息子は、自閉症と重度の知的障害がある。医療的ケアは必要としないが、環境が変わるとパニックになるため、災害時は自宅に残る方が無難と考えている。

 片山会長は「お寺に避難するという発想はなかった。保護者たちは『どこにも行くところがない』と困っており、こうした話はすごく心に響く。近所のお寺に少しでも受け入れてもらえれば」と期待する。

 大河内住職は「寺院は、医療的ケア児・者や知的障害・発達障害のある人が自分たちの地域にいることに気付き、出会うことが大切だ」と話している。

【用語解説】医療的ケア児
 人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、 痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童。厚生労働省科学研究班の報告では、2017(平成29)年時点で全国に約1万8千人いると推計されている。社会全体で生活を支えることを目的に、国や自治体に支援の責務があると明記した医療的ケア児支援法が21年6月に成立、9月に施行された。

【用語解説】放課後等デイサービス
 6~18歳の障害児や発達に特性のある子どもが、放課後や夏休みなどに利用できる通所サービス。自立支援や日常生活の充実のための活動などを行っている。全国で約28万人が利用している。

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