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“こうやりたい”という絶対性と、“相手を想う”相対性が共存したライブパフォーマンス。【2021/5/16放送_音楽家 [.que]カキモトナオ さん】

Fm yokohama(84.7MHz)から毎週日曜日深夜24:30~25:00にお送りするラジオ番組『文化百貨店』。先週に引き続き、ソロプロジェクト[.que]を中心に活動されている音楽家のカキモトナオさんをお迎えして、自主レーベルの運営やライブ活動を中心に、たっぷりお話をお伺いしました。

【パーソナリティ】
セイタロウデザイン代表・アートディレクター 山崎晴太郎(@seiy

【今週のゲスト】
音楽家 [.que]カキモトナオさん

徳島県出身。カキモトナオによるソロプロジェクト。2010年より[.que]名義で活動を開始。 新たなる『日本』から発信される才能、フォークトロニカの新星として活動初期より注目され、一聴して伝わるメロディー、美しい楽曲は世界中から大きな賞賛を浴びている。 近年ではインストゥルメンタル作品のみならず、作詞作曲編曲のすべてを手掛け、枠に捕われない自身の音楽性を発揮。 作品のみならずCM音楽、空間演出音楽も多く手掛け、その他楽曲提供やリミックスなど活動は多岐に渡り様々なコラボレーションを行っている。 ライブではフェスへの出演、海外アーティストとの共演、また2017年には初の海外ツアーも経験。 バンドルーツを感じさせる楽曲、パフォーマンスに魅了される人も多く、さらなる活躍が期待される音楽家である。 常に「今、鳴らしたい音」を表現し続けている。

【今週のダイジェスト】

▶︎自主レーベルを周りの人の後押しができるような場所にしておきたい

【山崎】今週も自由が丘にある、海外の製品やアカデミックシーズ、企業シーズなどを扱うセレクトショップLinked Museumをお借りしてお送りしていきます。[.que]の1stアルバム『sigh』を自主レーベルからリリースをしているんですね?

【カキモト】そうですね。

【山崎】現在も、自主レーベルを中心にリリースをされていますが「レーベルって何なの?」という人も多いと思うので、教えていただいてもいいですか?

【カキモト】アーティストにとっての“家”みたいなものなんですかね?僕のレーベルだと自分しかいないんですけど、他のレーベルだったら色んな所属アーティストがいて、レーベルカラーに合ったアーティストが作品を出したりするんですよね。

【山崎】そうですね。好きなレーベルは一通り聞いてみたりしますもんね。ご自身でレーベルをやっていこうと思った理由は何かあるんですか?

【カキモト】最初のアルバムは、流通をかけていなくて、手売りや委託販売でお願いをしていたんです。だけど、インディーズのレーベルで出した時に、実際にタワーレコードとかにCDが並ぶのを見て、流通の仕方などを一度学びたいという気持ちが大きくなったんです。それで、自分のレーベルで出して、ノウハウを勉強して、本格的に自分でやってみようと思ったんです。

【山崎】やってみてどうでした?

【カキモト】めっちゃしんどい(笑) メールのやり取りや予算立てとか、雑務が多いですね。最初は分からないことが一杯で大変だったんですけど、今は何枚かリリースもしたので少し慣れて余裕がありますね。

【山崎】段々ノウハウが溜まってきたと思うのですが、今後、他のアーティストをプロデュースしていく話にもなるんですか?

【カキモト】いきなり知らない人の音源を出すよりかは、自分のサポートをしてくれている人たちや周りで音楽を作っている仲間から、僕のレーベルから出してみたいと言われた時に、後押しができるような場所にしておきたいですね。

▶︎お客さんの事を常に思ってるからこそ見える世界

【山崎】ソロプロジェクトを基本に活動されていると思うのですが、ライブでのパフォーマンスはどういう編成ですか?

【カキモト】オファーに対して、要望を聞いたりはしますね。ソロでやる時は、1人でラップトップを用いたりギターやピアノを弾いたりしますし、ライブハウスでやる時は「ソロで出るのは、ちょっとな…」と思う時があるので、バンドセットを準備します。

【山崎】すごくバランス感がいいですよね。“伝わる”という 事に対して、すごく真摯に向き合っていますよね。

【カキモト】常に相手の気持ちやお客さんの目線に立つ事を大切にしていますね。「こうやりたいんだ」という気持ちはあるんですけど、相手の顔が見えると一歩引いて俯瞰するところもあると思います。

【山崎】先週、伺ったキャリアの話からすると、自分の想いを強く持ってここまで来たと思うんですよ。その一方で、音楽の相対性も大事にしているというか。絶対性と相対性がすごく高いレベルで共存しているなと、感じます。

【カキモト】ライブをやるにしても、コピーバンドでもお客さんが絶対目の前にいるじゃないですか?学生時代から、常にお客さんを“どうやったら満足させられるのか”を考えていた事もあると思いますね。

【山崎】学生時代にやっていたバンドでの、“パフォーマンスの原体験”で培ってきたんですかね?

【カキモト】大いにあると思いますね。“自分がやりたいようにやる” だけではなくて、 “自分の魅せ方“や”相手がどう感じるか”を同時進行で考えていますね。

【山崎】そんな話で言うと、2017年に中国でツアーをされていますが、どういうことを届けようとしたんですか?

【カキモト】日本とは人気の曲は全く違っていて、中国でよく聞かれている曲をリサーチして、セットリストに入れてた感じです。そうしたら、お客さんも絶対喜んでくれるし。実際に「あの曲が聞けてよかった!」と言ってもらえました。

【山崎】あまり、音楽で中国を見ることが無いんですけど、どういう感じなんですか?

【カキモト】僕がやっているエレクトロニカやアンビエント、あとはJAZZY HIPHOPやボカロPもすごく人気ですね。中国は人数が多いので、僕ぐらいのアーティストでも聞いている人がすごく居て「ようこそ、お越しくださいました」という感じで、ワーキャーと握手やサイン攻めですよ(笑)

【山崎】すごく気持ちいいですね(笑)

【カキモト】「ここは何なんだ!? VIPなのか?」と思いました(笑)

【山崎】中国って、情報が繋がりにくい印象があるんですけど、そうやって届いていくのが、文化の力だと思いますね。もう1つ資料を拝見していて気になったのが、プラネタリウムのライブなんですけど。

【カキモト】友人が企画したライブなんですけど、「星空を見ながら[.que]の音楽を聴くとリラックスできて、素晴らしい体験になるよね」という事で企画をしてくれて。音楽+αの特別な体験を一緒にするというもので、すごく好評でした。

【山崎】ライブ自体が体感型なんだけど、より体感型のライブみたいな?

【カキモト】普段から、ライブの前によく「別に眠っていただいて大丈夫です」言うんです。僕のやっている音楽は、騒いで楽しむようなものでもないので。そこと、プラネタリウムがすごくマッチしているんですよね。

【山崎】音楽が環境や、自分の体に染みてくる体験をしてみたいですよね。話を聞いていて、行ってみたいと思いました。あと、空間演出の音楽もされていますが、場所の事を想像をしながら作っているんですか?

【カキモト】例えば、ライブをしたのとは別の場所なんですけど、プラネタリウムが始まる前に待機するロビーでは、気分を上げるような音楽ではなく、“心を落ちつかせる休憩所”みたいな感じが良いのかなと妄想したりしますね。それで、人が実際いる光景を想像して、音楽を付ける感じです。

【山崎】ロビーは、音楽を聞く場所ではないですよね?そういう時に、音楽と人との関係性がライブと違うと思うんですけど、意識は変わるものですか?

【カキモト】あまり会話の邪魔にならないようにしたいなと思いますね。僕は、メロディーを作るのが大好きなんですけど、あまり入れないようにしています。尖ったメロディーが、時折流れてくるくらいだったら面白いかなと思って、そういったエッセンスは入れますけど、基本的にはゆったりした曲を選んで作曲する事が多いかもしれないですね。

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▶︎山崎晴太郎とコラボレーションをするとしたら?

【山崎】最後のパートは、ゲストの方、皆さんに伺っていることをお聞きしたいと思います。僕、山崎晴太郎とコラボレーションするとしたらどんなことをしてみたい、もしくは出来ると思いますか?

【カキモト】晴太郎さんがデザインした空間の中で演奏、もしくは自分の曲をつけたいですね。あとは、普通に一緒にプロダクトを作ってみるのも面白そうだなと思いました。

【山崎】空間演出みたいなのは、有るなと思いますよね。僕は、音楽に介入する手段を探しているんですよ。この前、関わっているNPOでイベントをやった際に、ビデオインスタレーションを作って、その空間の中でパーカッショニストが音楽を演奏したんですよ。これで、ライブという意味ではコラボレーションが出来そうだなと思ったんですけど、作品自体も音楽をテーマにしたインスタレーションなので、やってみたいですね。

【カキモト】面白そうですね。

【山崎】ぜひお願いします!そして、この番組のコンセプトである“文化を伝える架空の百貨店”があったとして、バイヤーとして一画を与えられたらどんなモノを扱いたいですか?

【カキモト】僕がエレクトロニカやアンビエントに、はまったきっかけとなったアーティストのCDを集めたいですね。元々、パンク・ロックをやっていた人間が、ここにたどり着いたきっかけでもあるので、聴いてほしいなと思います。

【山崎】エレクトロニカやアンビエントが、ジャンルとしてあまり知れ渡っていないというジレンマもあるんですか?

【カキモト】ありますね。もう少し認知されても良いのではないのかなと思っています。

【山崎】ありがとうございます。2週にわたって、音楽家のカキモトナオさんとお送りしてきました。近々発表できそうなものはありますか?

【カキモト】最近はライブが出来ない状況が続いているので、ライブを収録してYouTubeに上げたりしていますね。新しい作品も作っていたりするので、その都度SNSで目撃していただけたらと思います。

【山崎】ありがとうございます。ぜひチェックをしてみてください。最後になりますが、これからチャレンジをしてみたいこと、音楽で表現をしてみたいこと教えてください。

【カキモト】今のスタンスを崩さずに、地に足を付けて、自分がやりたい作品・音楽を作って、+αで他のアーティストのプロデュースや作曲・編曲に関わることが出来たら面白いのかなと考えています。

【山崎】楽しみにしています。音楽を生み出す話が好きなんですけど、自分が出来ないという悔しい思いがあるからこそ、神懸った世界だと感じられるんでしょうね。本日のゲストは、音楽家のカキモトナオさんでした。ありがとうございました。

【カキモト】ありがとうございました。


【今週のプレイリスト】

▶︎カキモトナオさんのリクエスト
『Moonlight』[.que]

▶︎山崎 晴太郎のセレクト
『Home』Caribou

Spotifyでアーカイブをポッドキャスト配信中

といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。
次回は、雑誌『UOMO』編集長の山崎貴之さんをお迎えします。

【次回5/23(日)24:30-25:00ゲスト】
UOMO 編集長 山崎 貴之さん

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1972年山口県生まれ。岡山県岡山市で高校までを過ごす。
1995年集英社に入社し、女性誌「MORE」のファッション班に配属。
2002年にモード誌「SPUR」へ異動。2011年に手掛けた「岸辺露伴、GUCCIへ行く」は、「ジョジョの奇妙な冒険」の漫画家荒木飛呂彦氏が、ブランド創立90周年を迎えていたグッチをモチーフとして特別に描いたもの。これは以降に続くマンガとファッションのコラボレーション企画の先駆けとなった。
2015年、「SPUR」編集長に就任。
2017年にメンズファッション誌「UOMO」へ異動。
編集長としてUOMO本誌を「40歳男子」向けの雑誌としてリニューアル。
2019年には「試着フェス」特集をスタートし、半期に一度の恒例人気企画に。

また日曜深夜にお会いしましょう!

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