案外自分しか気にしてない

その日は朝からドキドキしてた。
告げなくてはいけないことがあったから。
隠していたわけではないけど、なんとなくうしろめたい。
喉にひっかかった小さな骨が、ちくちくうずくような。
「それ」は今までことあるごとに、小さく心をざわつかせた。

”早く告げなくては”

僕の見た目は普通の日本人。
過去に外見からハーフと見抜かれたことはなかったし、彼女も例外ではない。
名前も普通の日本人。通名というやつらしい。

国籍は日本。父親はいわゆる在日韓国人。元韓国籍で現日本国籍、母親は”由緒正しき”日本人で日本国籍。

隠そうと思えば簡単に隠せるなぁと思いながら、カミングアウトはせずに生きてきた。
わざわざ言う必要もないし、不必要に傷つくのは避けたい。

でも今回は言ってみようと思った。

「僕って韓国と日本のハーフなんだよね。で、韓国って言っても在日韓国人だから韓国語とかさっぱりなんだけどさ。」

我ながら唐突だ。
僕自身は親族から差別を受けたこと、ネットの記事、たくさんのネガティブなコメントの影響で、”在日韓国人”であることにコンプレックスを抱えていた。
唐突な切り出しになったのは、気にしているからこそ、できるだけ気にしていない風に、できる限りカジュアルにという、焦りからだったと思う。

彼女は、一瞬の間の後、

「そうなんだ~。だから肌がきれいなのかな?」

と返してきた。

本当にほっとした。当時の気持ちは今でもよく覚えている。
そのあと、自分でも驚くほど自然に自分自身のことを話せた。
彼女は案外さっぱりと僕のことを受け入れてくれた。

打ち明けてみて思ったのは、案外気にしているのは自分だけってこと。
勇気をもって打ち明けて本当に良かった。

今でも彼女との関係は続いていて、そのときのことを思い返しては、素敵な人だなぁって思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?