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不思議とつながっていく話。

以前、noteでつながる方と、松坂桃李さん主演の映画『ツナグ』の話題になった。私は原作を読んだことがなかったので、今夏はこれを読むことにした。

辻村深月さんの小説「ツナグ」。

一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという“使者(ツナグ)”。その使命を代々継承してきたのが、主人公の祖母・アイ子である。孫の歩美にその力を受け継いでもらうために、アイ子は彼をツナグ見習いとして手伝わせる。

突然死したアイドルやガンで亡くなった母、嫉妬心から疎遠になった親友、失踪した婚約者など、依頼人にはそれぞれに再会を切望する相手がいた。ツナグの仲介で再会した生者と死者。たった一夜、お互いの想いが交差するのだが、胸のつかえが取れることもあれば、さらに深い罪意識を抱えることにもなる。特に切磋琢磨しあっていた親友への嫉妬心から、ある行動に出てしまった女子高生が依頼人として登場する「親友の心得」の章は、乗り越えなければならないものが増えたような気がして、とても胸が詰まる。

亡くなってしまった人にもう一度会えたら。そんなことはできないのだけれど、でも。再会できたらいいのにと思うことはある。特に身内に関しては、「もっと話しておくべきだった」「あのとき、何が言いたかったのか」と、しばらくは落ち込みが大きかったから。しかし会えたとして、ノドに小骨のようにつかえていたものが取れるのは自己満足なのではないか、とも思える。

結局、残された人間にできることはその人を忘れないこと。普段は自分の生活でいっぱいいっぱいでも、ときどき思い出して「穏やかであってほしい」と願うこと。それぐらいなのである。近ごろやっと、それでいいのだと思うようになってきた。

映画では、主人公・歩美の祖母・アイ子を樹木希林さんが演じている。『時間ですよ』や『寺内貫太郎一家』の再放送を観て育ったので、希林さんは慣れ親しんできた俳優のひとり。今でも亡くなったのが信じられないぐらいだ。明らかに異彩を放っているのに、映画やドラマではなぜかとても馴染んでいる唯一無二の人。そんなフワフワした存在の彼女がとても好きだ。

映画やドラマだけでなく、『ぴったんこカンカン』にもよく出演していた。きっと安住アナが相手だったからだろうな。本人には叱られそうだが、希林さんの生きるセンスに憧れる人は多いのだと思う。私も彼女のテレビ出演がわかれば、たいてい見ていた。亡くなってから3年経つからか、近ごろ再び関連書籍などがピックアップされている。

希林さんが亡くなったのは9月だった。あれ? 何日のことだったかと調べたら、9月15日。父の命日と同じであることを今日知った。

これは彼女のことばに触れるべしとの思し召しかもしれない。あんなに一時ブームになったのに、希林さんのことばを追っていなかった。今月仕事が落ち着いたら、手にしてみようか。ここから何かがまたつながっていくのかもしれない。

今年も疫病で墓参りはできない。いつものように、父が愛猫と遊ぶ写真と父の日のお礼に送ってきた紫陽花の絵手紙に手を合わせる。これでいい。これでいいんだ。


こちらは希林さんの一番の仲良し・浅田美代子さんによるエッセイ。

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