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この空の向こうに、違う世界線があるって思いたい。

正直、表向きには日々が過ぎていくのに、自分の肉体の一部だけ時が止まっているような感覚がずっと続いてきた。

三浦春馬さんのことである。今日、きちんと自分のことばとして記しておきたい。


こんな感覚は、俳優・高橋良明くんの件以来かもしれない。当時私は、修学旅行でスキーをするため神戸から長野へ向かう途中。新幹線乗り場で詳細を知った。

多感な10代の自分は、どうやってその事実を噛み砕いでのみ込んだのだろう。今と違い、それまでの彼の作品に再び触れる機会はあまりなく、実はその後の記憶が曖昧なのだ。できるだけ考えないようにしてしまったのは否めない。ただ、ゲレンデでずっと流れていたユーミンの「リフレインが叫んでる」と工藤静香の「恋一夜」を偶然耳にすると、今でも心臓がギュッとなる。


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収録済みだった『世界はほしいモノにあふれてる』の新作1つめとアンティークジュエリー回の再放送を観た。

この番組が始まった当初は、「なぜこの2人がMCなんだろうか」と思っていた。でも2人のゆるい掛け合いは、いつしか自分の棘を抜いてくれるようなやさしい空気を纏う時間に。小さな癒しとして、深夜の再放送をよく視聴している。風のようなJUJUさんと、誠実にモノを見る三浦さん。時に茶目っ気たっぷりに話したり、背景にある物語に涙ぐんだり。海外ロケは特に楽しそうで。2人が番組で見せる顔は、わりと素に近いのかもしれない。

先日NHKの音楽番組で、JUJUさんが声を震わせながら歌った「やさしさで溢れるように」。今まで何度も聴いたこの歌が、あんなに悲しく力強く響くなんて。


そもそもドラマが好きだから、『14才の母』『ごくせん』『ブラッディ・マンデイ』あたりから、『ラスト♡シンデレラ』『僕のいた時間』『わたしを離さないで』『オトナ高校』『TWO WEEKS 』……、彼が出演したほとんどのテレビドラマをリアルタイムで観てきた。

随分と昔、岸谷さんたちの舞台やチャリティーライブに参加する様子をエンタメニュースで見かけて。「先のことを模索中なんだろうなあ」と、進路に悩む甥っ子を見守るような目線で勝手にいた。その後の舞台での活躍は周知のとおりだが、五右衛門ロックで「こんなこともできる人だったのか!」とびっくりして。そこにどんな努力があったかを、古田さんが話していたのを後で知った。

序盤で出番は終わったが、大河ドラマ『おんな城主 直虎』の亀之丞(直親)も記憶に新しい。おとわ(次郎・直虎)のことが大好きで、まっすぐで。だから肝心なところで今川方に騙されちゃうんだけど。そんな亀が井伊谷に戻れなかったシーンを、近ごろ何度も思い出す。放送当時「誰だよ、この大河に“スイーツ大河”とか変なコピーつけたの」と毒づいたよなあ。


振り返れば、出演作品が続々脳裏に浮かんでしまう。


考えてもどうしようもない虚無感と、それに続く溜息。ただのドラマ好きな私ですら、こんな風である。


だけど先日、CDBさんの記事を読んでちょっと救われた。

その通りだな、って。

彼がどう生きていたか。

送り方はみんな違っていい。彼は途中で演者をおりたけれど、私は全力スタンディングオベーションで送りたい。そう思っている。


思っているのに、それでも感情が行き来して、ぐわぐわと喪失感に襲われる日がある。

そんなとき、『DESTINY 鎌倉ものがたり』や『いいね!光源氏くん』のように、どこか違う世界線があればと子どもじみたことを考えて空を見上げる。きっとあそこでやりたいことやってるんだわ、と思ったり、でも少しぐらい後悔しておいてほしいわー、とも思ったり。そしてなぜか最後にいつも、スピッツの「僕はきっと旅に出る」が頭の中で流れる。


困った。まだ、ぐわぐわだわ(笑)。でも空を見ると安心するので、一日に何度も見上げている。


今日やっと、スクリーンのジェシーに会いに行く気になった。そして終戦の日の今夜は、『太陽の子』が放送される。

この先も、自分のペースで作品を観続けていこう。そして、才能とかの話じゃない、真摯に俳優・三浦春馬を生きていた彼の時間を記憶して、共有し続けたい。


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