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2021年3月の記事一覧
妄想のことを思案する。
妄想というのは自由ということかもしれない。
結局なにがむずかしいのかというと
その妄想とうまく付き合うことが
むずかしいんだろうな。
妄想を操れるのか。
そこが力量なのだろう。
創造するということのなかには
全てではないが
妄想が支配する部分があるように思っている。
唯一無二のものは
妄想のなかにひそんでいるようにも見える。
妄想があまりない人間はなんだかつらいではないか。
人として社会的
品格 幸田文というひと
幸田文さんは好奇心が強い。そして行動力もある。たとえ体力がなくなっても、ただ、それを見たい!という一心で人の背中に負ぶさってでもお目当てのものをその目に収めている。たとえば屋久島の屋久杉。大沢崩れもそうだ。北海道に鮭の遡上も見に行って船に乗るときはひょいと海の男に抱えてもらったりする。
そして九州では捕鯨船にだって乗って荒れた大海原にも出て行く。それが小さいときからの夢だったのだ。鯨を撃つ現場を
そんな日のアーカイブ 川本三郎講演 下町の感受性 宮部みゆき原作 大林宣彦作 「理由」
読売ホールで川本氏にお会いするは3回目。声や口調や話の流れがだんだん親しいものになってくる。
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今回のテーマである「愛」は苦手なジャンルだ。
この講演依頼を断ろうとさえ思ったほど、興味がない。しかし、ひろく愛ということを考えると家族愛も含まれるだろうと思った。
そういう意味では宮部みゆきさんも恋愛に重きを置いていない珍しい女性作家である。そういうタイプの女性作家は他に小川洋子さんと
そんな日のアーカイブ 藤田宣永講演 「雪国」 恋愛の不可能性
昭和12年に書かれた川端康成の「雪国」は、なかなか難問を抱えている、簡単にかかれた作品である。
島村はワキであり、駒子がシテである。恋愛小説はそもそも女が主人公である。(藤田氏夫婦の場合も小池真理子が主人公であり、藤田氏は脇役であるという)
恋愛小説に合うのはほとんど働かない男である。「源氏物語」やラクロの「危険な関係」の主人公は貴族である。
また青春と恋愛も馴染む。何もしない高等遊民も恋愛
そんな日のアーカイブ 山本一力講演 江戸下町の人情
「山本でごさいます。今日は女性が多くて、わくわくしながらもまたこわいことでもあります。
わたしは昭和23年生まれです。20代はじめ旅行会社に勤めているときに結婚しまして、不実の限りを尽くしましてそれを2度もやりまして、3度目で今の家内にあってまともになりました」
山本氏はそんな口調で話し始めた。
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「愛」をめぐる物語なんて、こんな大きなタイトルの話はできない。惚れたはれたの小説の何
そんな日のアーカイブ 馬場あき子講演 「日本の恋の歌」
まことに大きな題である。いつかやりたい大きなテーマではあるのだが、今日は近代の恋の歌に話を絞る。
落合直文という歌人がいる。
地味なぱっとしない歌人である。彼が44,5歳のころ、明治34年に作ったこんな歌がある
「かのひとの 目より落ちなば いつわりの 涙をわれは うれしとおもわん」
華やかな派手な情熱ではなく、身を引いたところで歌っている。今から思えばひどく斬新な感じがする。対象に距離を
そんな日のアーカイブ 北村薫講演 惜別の歌と高楼
対談をした。怪談だとか妖怪だとかいう話だった。やがてぬかるみの話になって、ぬかるみのぴちゃという音は妖怪が通っているようだと話していた。そこからにゅっと手がでてきそうな気もするなどと。
夏目漱石の「永日小品」のなかの「蛇」という作品に
木戸を開けて表へ出ると、大きな馬の足迹(あしあと)の中に雨がいっぱい湛(たま)っていた。土を踏むと泥の音が蹠裏(あしのうら)へ飛びついて来る」
という
そんな日のアーカイブ 荒川洋治講演 ことばと思い
(荒川さんの肩書きは詩人ではなく「現代詩作家」である)
昨年9月「怒涛の読書」をした。いっぱい本を読んだ。寝食を忘れて読んだ。もうどんな長いもんでも持ってこいの気分だった。
藤村の「夜明け前」も二週間くらいで読んだ。若杉慧の「エデンの海」はつまらなかった。夏目漱石もいっぱい読んだ。一カ月かかって「明暗」以外をほとんど読んだ。トーマス・マンの「トニオ・クレーゲル」も読んだ。
「忘れえぬ人々」と
そんな日のアーカイブ 玄侑宗久講演 「宮沢賢治における修羅と慈悲」
仏教において愛は良い言葉ではない。それは妄執である。仏教で愛に相当するのは慈悲である。
「宮沢賢治を論じるのは猛獣が入っている檻に入っていくようなものだ」と言われている。それほど賢治を愛する人は多く、「わたしの賢治」となっているから、迂闊なことはいえない。
しかし、賢治の父親の政次郎さんは賢治の死後たずねてきたひとには「賢治を知りたいなら仏教を勉強してください」と言っていた。(だから玄侑さんは
そんな日のアーカイブ 瀬戸内寂聴講演 文学館への期待
徳島県立文学書道館館長としては、はじめての講演なので緊張している。控え室で胸がどきどきした。ダラダラ話すものだから50分が短いので心配だ。聴衆がインテリ顔だから圧迫感を感じている。
自分が文学館館長を引き受けるとは夢にも思わなかった。有名な文人が徳島にはいないと思っていた。徳島の看板になるような有名人は派手なひとはいないのであまり知られていない。徳島の人や子供が故郷に文人がいないと思うのはかわい
そんな日の東京アーカイブ 尾山台 すごいおやじがいたもんだ。
大井町線の尾山台駅近くにあった「田園」というお店のおやじさんのこと。今は弟子だった安齋さんが「田園 安齋」として営業されているそうだ。
安齋さんは実直そうなひとだった。栃木のかただったろうか。髪の毛で文句言われたくないから、坊主にしてんだよ、って言ってたな、なんて思い出す。
お店では砂糖を一切使わないっておやじさんはいってたけど、甘みが欲しい時はほんの少しだけど、寿司の素の粉末を入れることがあ