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2021年2月の記事一覧
そんな日のアーカイブ 辞書を買った日のこと。
高名な編集者さんお奨めの辞典 のうちの一冊
「現代俳句言葉づかい辞典」なるものを買った。
俳句を作ろうという、センスも気合もないし
その方面の知識など皆目なのだが、このタイトルの前についてある言葉「ことばの海を掬うための」ということばがいいなと思った。
なにしろ言葉数は多いに越したことはないというのが最近の実感で、本書は、それも名詞ではなく
その名詞にふさわしい動詞、形容詞が俳句を用
そんな日の東京アーカイブ 銀座2007年の写真展
一枚の写真に泣かされた。 ぽろぽろと流れた涙を
うまく誤魔化せなくて・・・こまった。
写真は駅の構内を写す。 列車は今しも出発しようとしている。旅立つひとびとは窓から身を乗り出して手を振っている。見送るひとびともまた手を振る。
右手前でもスカーフを頭にまいた中年の女性が
ふわりと手を上げている。その女性の表情がわたしを泣かせる。
送り出す身の寂しさもあるが、大切なひとの未来を案じる
そんな日の東京アーカイブ 新宿2007年の写真展
新宿2丁目へ行った。 その地名のイメージはなんだかあやしく。
なにしろ不案内の場所で、いただいたご案内の葉書の地図を縦にしたり横にしたりして、大きな通りから奥にはいっていくと、夜開く小さなお店がせせこましく建ち並んでいて、にわか迷子のわたしの心臓も、なんだかあやしくドキドキしたりするのだった。
「芸術状物質の謎4」と題された写真展をひらいているのは、写真家飯村昭彦氏。
ちくま文庫「路上観
そんな日の東京アーカイブ 浅草 2006年の花やしき
浅草 花やしきにいった。花粉症だからひきこもりのように毎日家にいると、なんとなく自分が発酵していくような気分になる。
誰からも忘れられてしまったような、それでいて誰かといるのはわずらわしくてならんというような、行きつ戻りつの思いのなかで立ち往生していた。
そしてふっと思いたつ。そうだ「花やしき」へ行こう。
なんで花やしきなのか?
我が敬愛する武田百合子さんの本で「遊覧日記」というのがある。
そんな日の東京アーカイブ 鮫洲から新馬場 図書館への道
えらく寒い一日だった。 こたつで猫になっていたかった。 が、それでは、図書館で借りた本の返却日が過ぎてしまう。
自分の分の単行本5冊と息子1に頼まれた文庫本一冊。 ドスンと肩に重たい6冊を斜め掛けのショルダーバッグに詰め込んで 、筆記用具も突っ込んで 毛糸の帽子を目深に被って白いマフラー靡かせて出かけた。
鮫洲から京急に乗れば青物市場の次の新馬場はほんのふた駅なので、そんな重いものを持ちな
そんな日の東京アーカイブ 世田谷
あたしは見かけほどおだやかな人間ではない。おだやかそうに見えるのはあまりたくさんのことに
関心がないからだ。つまりたくさんのどうでもいいことに関しておだやかなのだ。
しかし、そうはいっても、人生にはどうでもいいやではすまされないこともやはりたくさんあり、それはじぶんなりのこだわりやプライドがある分なかなかに一筋縄ではいかず、業腹なことを抱えることとなる。
このところ、それが嵩じて、不眠だとかこ
そんな日の東京アーカイブ 門前仲町
清澄庭園の東屋には先客が居た。昼食を済ませたらしい老夫婦はデザートのバナナを半分こして食べていた。
「おじゃまします」と声をかけると「どうぞどうそ」という。こちらも持参のお茶を口にする。
呑み終えると知らないうちに「良いお日和ですね」と言っていた。
「そうねえ、風もなくてね」とおばあさんがおじいさんのほうを見ながら言う。「おお、おお」とおじいさんも言う。
東屋の陰から日向を見る。池を水鳥が
そんな日の東京アーカイブ 自由が丘
その日、自由が丘には雨が降った。
友人に教えてもらった「古桑庵(こそうあん)」という甘味処へ行った。ひさしぶりに会うひとがいた。品物のお渡しもあった。
横浜でいうと元町のようなハイカラなセンスのよい店舗が並ぶ町並みの坂を上って行くと、そこだけ時間が止まってしまったような、昭和の香りのする佇まいの民家があらわれる。
古桑庵というのは、夏目漱石の娘婿の松岡氏の友人であったその家のおじいさんが、上
そんな日の東京アーカイブ 東京ドーム
それはまだ、ローズがいた頃のこと。
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ひょんなことから東京ドームへ行くことになった。巨人×阪神開幕2戦目を観戦した。かつてパッチーワーク・キルト展で訪れた場所が、白球を追う男たちの戦場になっていた。
ライト側の外野席だった。外野席に座るのは何年ぶりだろう。夏の盛りに甲子園の高校野球を見たなと思い出す。日差しはじりじりと肌を焼いた。若かったな。ここは屋根つきの球場で、暑くも寒くもない。快
そんな日の東京アーカイブ 木挽町界隈
これは歌舞伎座が建て替えられる前のこと。
*****
歌舞伎座入り口と切符売り場を通り過ぎ、「暫」なんて名前の喫茶店を見てなおも進むと木挽町通りにぶつかる。
木挽町というのは400年ほど前には江戸城造営関係の鋸匠を住まわせたところなのだという。地名の由来にひとの息遣いが感じられると、なんだかうれしくなってしまう。
その地に住んだひとびとの暮らしがふわっと浮かんできて、朝な夕なに互いに掛け合
そんな日のアーカイブ 2003年の築地あたり
1 道を聞く
築地で「うおがし銘茶」という店を探していた。築地2丁目でどうも道がわからなくなってしまったので、八百屋さんで訊ねた。
「お訊ねします。2丁目○‐○はどこでしょうか」
フレッシュフルーツという看板の下でバナナを並べているおじさんに声をかけた。
おじさんはじゃがれた声でボソッと「この並びにあるよ」と答えた。それだけしか言ってくれない。いったいどっちの並びなのかわからない。
なにしろ
そんな日の東京アーカイブ 六本木
日比谷線六本木駅から歩くこと5分。角を曲がって進んでいくとこんな建物が見えてくる。
それは新国立美術館。色といい形といい、横臥せる波打ちビルディングという感じだ。黒川紀章さんのデザインだという。
近づいてみるとその波打ちの表面はこんな感じで
出入り口で上を見上げるとこんなふうで
内側から外をみるとこんなふうで
中はこんなふうで、ちょっとスペースコロニーという感もあるのだけれど、ひろびろと
そんな日の東京アーカイブ 柴又
柴又の帝釈天へ行った。寅さんの記念館があった。
お好きな人には申し訳ないが、あたしは「フーテンの寅さん」が苦手だ。映画館で見たことはないし、テレビで放映されても好んで見たことはない。
渥美清というひとの目がつらい。喜劇に出ながら、このひとの眸はなんだか切ない。人間の突き当りを見てしまったような感じがする。虚無を見ている感じ。
そのひとが演じる破天荒な人物は、誰よりも求めているのに、いつも世俗
そんな日の東京アーカイブ 本駒込から根津へ
年賀状の整理をしていて、ゆりこさんの筆跡に目がとまった。
結婚して一ヶ月後に岐阜から東京・文京区のアパートに移り住んだ。その井沢荘の大家さんがゆりこさんだ。こちらから出した、その返信。何枚目の年賀状になるだろう。あいかわらずの達筆だ。
「遠い昔のこと お忘れなく うれしく存じます
わたしも90歳になりました。しあわせにお過ごしください」とある。
昼前、しっかりした日差しがガラス窓からさしこん