漫才 「絵本」
「昨日徹夜しても分からないところがあったんですけども」
「勉強で?」
「いや絵本で」
「夜通し哲学者みたいなことしてるじゃん。それで何が分からなかったの?」
「どうぞのいすって絵本あるじゃない」
「表紙がうさぎの本ね。名作ですよ」
「そう。これをコロコロコミックっていう幼男児向け短編絵本集の後に読んでて」
「だいぶ絵本寄りではあるけど一応小学生男子向け漫画なのよあれ」
「徹夜明けだから大目に見てよ。で、今から話すのも私の考え過ぎかもしれないからそうだったらちゃんと言って」
「確実に言うわ」
「まず、あれってうさぎが直立二足歩行で木の椅子をつくるのよ。うさぎって猿人、って意味でしたっけ?」
「ほんとに徹夜するほど絵本読んでる?」
「私ほど絵本に造詣深い人はいないよ」
「だったら覚えておいてほしいんだけど、大体の動物は絵本の中で立つし歩くし物作るのよ」
「あー、猿人じゃないのね。じゃあこの後出てくる如何なる動物も自然の摂理に逆らってるってわけね」
「嫌な言い方だなあ」
「で、次にこの絵本はうさぎが椅子を作るところが山場だと思うんだけど」
「流石に序盤過ぎるって」
「これって不動産侵奪罪に当たらない?ここがうさぎ所有の土地っていう記述とかうさぎが土地の契約、登記する描写がないのよ。多分誰かの土地なんだよね、あれ」
「うーん、無主地なんじゃない?」
「無主地?」
「うん、領有する国家がない土地ね。多分あの絵本の舞台はエジプトとスーダンの国境地帯なのよ」
「あ、そうなんだ。じゃあ肥沃に見える土地だけどあれは」
「そう、オアシスなんだよね」
「なるほどね。次の疑問が「どうぞの椅子」っていうネーミングなんだけど、物語を読んでいくと分かるんだけどロバがずーっと地べたに座りこんで寝てるのよ。由々しき事態じゃない?」
「確かに色んな動物が椅子に物置いていくだけだもんね」
「みんなに座ってほしいからどうぞの椅子って名前なのに動物一頭も座らないで食べ物置いて。これって結局縄張り争いしてるだけなのよ」
「うん、でも実はそれでいいんだよ。この話が伝えたかったのは野生の厳しさ、草食動物の弱さなんだよね。永遠に寝てるロバによってそれを暗示してるんだよ」
「なるほどね。じゃあ私の疑問点は的を得ていたんだ。まとめると、どうぞの椅子はライオンキング財産分与編リメイク版ってことか」
「いや、知ってる映画の知らんストーリーを勝手にリメイクしてやがるので後ほど知識を叩き込み直していいですか?」
「それなら一旦やめさせていただきます」
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