見出し画像

獣姫

2-7

 「綺麗になったろう?」
粘つく様な声が背中に降り注ぐ。振り向くと、東条がニヤついた笑みをして部屋の入口に立っていた。その笑みはマスクに様に東条の顔に張り付いている。僕は先生を見る。先生は静かに首を振った。
「今までよりも遥かに、より美しく彼女は進化したんだ」
「なんであんたがここに」
僕の問いを鼻で笑い、東条は近づいて来た。東条の発する不快な臭いに咽せそうになる。
「ここは僕が提供した場所だからね。患者の容態を見に来るのは当然だろう?」
「先生」
「すまん、難波。あの状況下でお前達を助けるには東条の力が必要だった」
東条は満足そうに微笑み、先生は無表情で僕を見続けた。僕は不快感を隠す事無く、東条を睨みつけた。
「何が目的だ」
東条は指を二本立てた。相変わらずどこまでも伸びた長い指だった。
「一つは真田君の研究の支援。もう一つは君だよ」
「僕?僕が目的?」
合点がいった。先生は僕を売ったんだろう。君と僕なら先生は迷わず君を取る。当然だった。
「真田君を悪く思わないでくれ。彼は千ちゃんを心から愛しているそうでね。彼女を助ける為の資金、設備、場所を提供する代わりに、君を差し出したんだ。スケープゴートとして最適だよ、君は。僕の欲しいものを全て兼ね備えているからね。真田君は商売上手だよ」
東条は嬉しそうに先生に微笑みかける。先生はその顔を見ようともしない。
「君は全快したら僕の物になる。獅子王は残念だがあれはもう処分だな。人を殺しすぎた」
「お前もだろ、この外道が」
僕の中の怒りが君に伝染したのか、君は僕を強く抱きしめて東条に牙を剥いた。君の怒りの表情すら東条に取っては単なる媚薬代わりに過ぎない。東条は歯を剥いて笑った。その顔に怖気をふるう。
「面白い事を言うね。ただ僕は合法的に…時にはまぁ非合法的なケースもあるが…節度を守って殺しを行う。それに殺したくて殺すケースは稀さ。あくまでも結果に過ぎない」
僕は唸った。その唸り声は自分の耳にも犬のそれに聞こえる。東条は動揺する事も無くマジマジと僕を見つめた。興味深そうに僕を見る瞳に、檻の中の動物を眺める人間達の姿を重ねてしまう。
「面白いね。犬の脳や細胞を交えて、ここまで人の感情や動きをトレースできるものなのか」
東条は恍惚の笑みを浮かべ、僕の苛立ちを助長した。先生は顔を上げて首を振った。
「トレースじゃあない。こいつは完全に人間の頃の難波と同じ人格なんです。難波そのものなんです。こいつは人間としての難波のゲノム塩基配列、犬のゲノム塩基配列、その二つが織り上げられて今ここにいる。それは千も一緒だ。こいつらは人工的であるが、全く新しい種族ですよ」
「DNAを混ぜた様なものか?拒否反応は出ないものなのか?」
「二つの細胞の持つDNA組織の配列を弄ったんです。その構築をする為に莫大な時間と手間がかかる。今まで蓄えて来たーそう、難波が蓄えて来たデータがあったからここまで事が上手く運んだ」
皮肉だった。先生の言う様に、自分自身を作り替える為のデータを延々と漁っていた自分に嫌気が差す。東条は僕に近づき、一層嬉しそうに微笑んだ。僕の形相はそれに反して怒りを色濃くする。東条の息が吹きかかるだけで、胸の中が不快感に覆われる。
「君は死ぬ筈の命を救われたんだがな」
「頼んでないだろう。お前の玩具にされるくらいなら死んだほうがマシだ」
東条は肩を竦め、先生の元へ向かう。頬に口づけしそうな程の距離に近づき、何かを耳に吹き込んだ。先生は顔を強張らせるが、直ぐさま頷いた。東条は振り返ると僕を見つめ、ウィンクをしてみせた。
「君は病み上がりだ。暫くはよく休みなさい。そのワンダーな身体を痛めでもしたら大変だ。犬だけにね」
僕は痰を床に吐いた。僕の腕の中で君が威嚇の声を上げ、身体を震わせる。ハリネズミのDNAの影響か、心無しか身体を覆う体毛に変化が見られた。東条は再び肩を竦めると部屋から出て行ってしまった。先生に囁いた言葉。実験の予算の増資。僕を引き渡す日取り。犬の聴覚に僕は感謝した。先生と東条の悪巧みを知る術を一つ身につけた。先生が嘆息し、僕を見つめた。一年半前、何度もその瞳を濡らしていた涙はとうに乾涸びて、十歳は老けたかの様に憔悴していた。
「お前は運がいい、難波」
「あんたに化物にされたのに?僕がフランケンシュタインの怪物になるなんて思ってもみなかったよ」
「誰もが思わない。誰もが自分はフランケンシュタインの側だと思う。その境界は曖昧さ」
僕は頷く。先生の言葉通り、僕も、君も、そして先生も東条もいつも自分の居場所はそちら側じゃないと無意識で感じている。それは根拠の無い馬鹿げた考えだが、同時に誰もが前提として根底に抱える考え方だった。その確固たる考えが崩されたからか、同時に今まで根底に抱えていた常識も崩壊していく奇妙な感覚を僕は持て余していた。気がつくと、君の唸り声が消えていた。腕の中の君を見つめる。白く針のある体毛を強張らせたまま、僕らの行動を見つめている君がいた。君の怯えだけが、僕に唯一共感と勇気を与えるものとしてそこに存在していた。僕は先生を見つめた。
「いくつか聞きたい事がある」
訝し気に顔を歪めながらも先生は頷いた。君を抱きしめる腕を解く。君はまだ警戒を解くことはなかったが、微妙な空気の揺れで君の堅い体毛が徐々に柔らかさを帯びていくのを肌に感じる。その様はまるで警戒心を解いた女のようだった。先生は病室の壁にもたれて僕を見据えた。
「何でも聞くがいいさ」
「僕を売ったのか?」
「聞こえてたろう?そうだ。お前を売った。あの野郎はお前の身体が欲しいと言った。千を守る為には他の選択肢は有り得なかった」
髪の毛をクシャクシャと掻きむしりながら面倒くさそうに先生は話した。その瞳はどこか他人事を話すかのように見える。
「東条はそれで引き下がったのか?」
「当然千にも興味を示したさ。だが俺は今後新しい検体を奴に提供する事を約束した。あ野郎専従の科学者になるのさ」
「パトロンを満足させる為に?身内が良ければそれで由か。先生はやっぱり正しくマッドサイエンティストだね」
先生は唾を床に吐き捨てた。
「千ちゃんの前ですよ」
「お前もしたろう?。なぁ難波。研究者にはパトロンが付き物だ。遥か昔からそれが変わる事はない。未来もそうさ。身内がよければそれでいい?そうさ。お前さんも人の事は言えん筈だ。俺と同様に目的の為に幾つの命を弄んできた?そいつを棚上げして俺を批判か?」
「先生の言うことは最もだ。同意しますよ。以前の僕ならね」
先生はクックと笑った。それは僕が変わらず憎まれ口を叩く事に対する喜びなのだろうと、直ぐさまに気付いた。哀しい程僕たちは気が合うから、先生の気持ちすら手に取る様に理解出来るのだ。
「人間の器を造る。馬鹿げた理想だ。最早千をその理想に乗せることは叶うまい。それでも千がこの先生きていけるのなら俺はあの糞をパトロンに選ぶさ」
先生は淡々と、極めて落ち着いた口調で自分の出した結論を語った。そして、これから獅子王を殺しにいくのだ。
「獅子王を殺しにいくんでしょう?」
先生は頷いた。その顔は疲れきり、眼窩は落ち窪み、悲痛そのものだった。
「蒔いた種は刈り取る。奴を放置しておけば生態系は乱れる。合成生物学が只の生物災害を出すだけの卑近なものに成り下がる」
「けじめをつける為ですか?」
先生は俯き、静かに頷いた。その顔は悲痛さに加え、悲壮感も漂う。
「ガキみたいなもんだ。既に人様を二十人殺しとる。誰かが殺さねばならん」
「警察が既に動き出しているんじゃないですか?」
「警察は動いとる。機動隊もな。だが極秘裏だ。新種の生物の可能性が極めて高いと判断されとるからな。東条は私設部隊を送った。俺もこの後に続く気さ」
警察が動いている。機動隊も。先生の語る話の内容が真実なら、獅子王の存在は既に衆目の知る所だろう。先生自身、禊として討伐を行うつもりなのだろう。急に莫迦らしくなって来た。獅子王は人を虐殺しているが、その原因は全て僕たちにある。僕が受けた罰は相応の物として相応しいのかもしれないが、それで禊を果たした事になるとは思えなかった。
「獅子王を殺した後…どうするんですか?」
先生は静かに僕を見つめている。その瞳は以前とは違い、隠し事なぞ何一つか抱えていなかのように透き通っていた。
「静かに暮らすさ。お前には悪いが、千と夏子と静かに暮らす。研究は続けるがな」
「東条の影の様に?」
先生は否定することもなく深く頷いた。
「東条の影の様に」
沈黙が訪れた。スパイラルは変わらない。結局売られる対象が僕に変化しただけだ。力関係は何も変わらず、ただ死者が山積みになっていくだけだ。
「千ちゃんはどうなるんです?彼女は美しい」
先生は唇を噛み僕を睨みつけた。父親の眼をしていた。
「お前が千に惚れとるのは知ってる。お前はいい男だ。だが千とは違うだろう」
「今は同じだ」
僕は静かに言い放った。僕が発する言葉には抗いようの無い真実が浮かび上がっている。僕の隣で立つ君の頬が上気していく。君はこんな時でも例えようが無い程に美しかった。
「確かに今は同じだ。だが、決定的に違うさ。千とお前は境遇が違う。未来が違っている」
先生は怒鳴る様にそう言った。ふと横で静かに話を聞いている夏子さんの顔が視界に入る。もの言わぬ女。夏子さんは全てに疲れ果てていた。着いていくことが出来なかった。思えば君が水子として産まれ落ち、新たな生を受け、そして身体を作り替えられた全ての過程への責任を、この人は一身に背負って来た。だが、同時に逃げても来たのだ。先生の言うがままに、藁をも掴む気持ちで可能性に賭け、負けたのだ。僕たち三人は最初から負けていた。一番最初から判断を誤っていた。君が新たな生を受けて健やかに成長して来た日々を大切に歩むべきだった。家族の思い出のアルバムを綴る日々を選ぶべきだった。震える君を引き寄せ抱きしめる。君の体毛が膨張するのが感じられる。鳥肌のような反射によるものだろうか。先生の眼が吊り上がり、夏子さんが驚きを隠すかのように口を抑える。
「難波!」
咄嗟に窓ガラスまで飛びより叩き割る。風が僕らの頬を裂いた。寒々しいその暴風が吹き付け、乾燥した冬の匂いを部屋内に充満させる。
「先生、千ちゃんは頂いていきます」
「何を莫迦な…戯けた事を!」
先生が唾を飛ばし、口角を泡だらけにしている。僕は思わず吹き出してしまった。君は驚いた様子で僕を見つめていた。君に覗き込まれると心すら見透かされそうだが、その感覚すらも今では心地よい。今頃になって自覚し始めていた。僕は新しい存在だ。僕は何物にも囚われることない存在だと。考え方がシンプルそのものへと変化していく感覚がある。僕の頭の中は鮮明な二つの思いと目的だけが交錯していた。君への思いと、獅子王の後始末だ。
「獅子王は僕が狩ります」
先生は吹き出す様に笑った。その瞳は炎を宿し、僕に対する怒りを燃やしていた。君と同種とはいえ、先生にとっては愛娘に手をかける軟派な男にしか僕は映らないらしい。
「奴を狩る?馬鹿馬鹿しいな。アイツは俺がデザインしたんだ。そこらの獣と訳が違う。ただの猛獣狩りとは訳が違うんだ」
「知ってます。奴の獰猛さ凶暴さは僕も近くで見てきた。僕の責任でもある」
先生が笑い声をたてる。僕を嘲る笑い声だ。今にも涙を零しそうな程に大笑いをした後、急に真顔になって僕を見据えた。
「お前がそこまで傲慢だとは思いもよらなかったよ、難波。確かにお前はゲノム解析のプロだ。そこらの奴とは物が違う。けどな、お前には解析は出来てもそれらを自由に組み替えデザインすることは出来ん。獅子王も、千も、お前も。全て俺の作品だ。お前はその一部を手伝ったに過ぎん。あまり驕るな若造が」
何かの口上の様に、先生はがなり立てた。いきり立っていた。先生の自尊心を傷つけたのか、鬼の激情で僕に詰め寄る。僕は静かに先生を見つめ返した。
「いいか、難波。お前はどこまでいっても所詮は俺の作品だ。お前は俺の物なんだ」
「千ちゃんも?千ちゃんもあなたの物?」
先生に切り返す。先生は唇を真一文字に結び、僕を睨みつけた。
「パパ…」
君のか細い声すらも掻き消そうな程に、先生は息を荒げ僕たちを睨んでいた。
「千を放せ」
「先生、僕は千ちゃんに求愛する資格を与えられた。それはあなたが下さったものだ」
この一点において嘘偽り無く僕は先生に感謝している。先生の手が伸びる。僕はひょいとそれを避ける。身体が軽かった。病み上がりとは思えない程に、軽やかに身体が動く。僕は硝子片が飛び散る地面を蹴り、君を抱きかかえたまま窓枠に飛び乗る。耳が遠くで鳴るサイレンの音を捉える。獅子王を狩る為に動く者達への合図だろうか。先生は緊張した面持ちで僕を見つめた。夏子さんはただただ震えている。この二人は壊れてしまった。
「待て、難波」
「先生。僕たちは遠くにいきます。その前に獅子王を狩る」
「待て、難波。俺の話を聞け」
「すみません、先生。僕は変わってしまった。感情が先にいけと言っています。抗えない強い感情だ」
「難波」
「千ちゃんと出会ってから、僕は感情だけが先走ります。その感情に追いつきたい」
「話を聞けと言っとるだろう!」
先生が怒鳴り声を上げたと同時、僕は君を抱きかかえたまま窓枠から外へ飛び降りる。高さはマンションの四階に相当したが、何の躊躇もなかった。君は驚きの表情を浮かべ、次いで瞳を閉じた。足に激痛を感じたが、折れてまではいなかった。若干の痺れを感じたが、身体が完全に人間の頃を凌駕していた。先生が僕を出来損ないに造る訳がなかった。獅子王をデザインした時と同様、人間の力を超越していた。獅子王の教訓は全く活きていないらしい。窓から覗き込む先生の声を捉える。レーダーの様な耳だった。先生の囁きが、鼓動が、そして君の不安までもがダイレクトに僕に伝わる。君の手を取り、僕は走り出した。出口はどこかわからなかったが、第六感とも呼べる感覚が僕を正しい道に導き出した。危険が少ない方へー聴覚、嗅覚、触覚。その全てが僕を危機から遠ざける情報を導き出す。銃声がした。次いで硝煙の匂い。僕は振り返ることなく、君を抱きかかえ疾走した。自分の呼吸音と、君の息遣いだけが聞こえる。世界がその二つに染まっていく。

 三十分は走っただろうか。馴染みの場所に来た。賀茂川の辺り。産業大学の近くの山道で、僕たちは休憩を取る事にした。汗を大量にかいている。心臓が凄まじい速度を刻みながら動いている。疲れきってはいたが、同時にどこか爽快感すら伴う感覚に身を任せる。浴衣姿の君が足を濡らしたまま川岸から歩いて来る。足を濡らしたいと言う要望に応え、かれこれ十分近くここで休憩していた。僕たちが囚われていた場所は恐らく向日町の辺りだろう。東条は幾つも山荘を持っている。奴の別宅で僕は飼われる所だった。東条の顔を思い出す。ぞっとする程の緑の瞳を思い出し、自分が如何に危険な状況下にいたのかを改めて思いいる。僕を見下ろす視線に気付く。君が僕の前に立ち、冷たい眼差しで見下ろしている。
「どうかしたの?」
「どうかしたのじゃない」
君は少々お冠のようで、頬を膨らませてみせた。表情はあどけない女性のままで、まだまだ人間の面影を多分に残している。僕は首を傾げて君の怒りの根源を推測する。
「難波さん。勝手過ぎる。パパの事置いて来ちゃったし。何かよくわからない事を言うし」
君の抗議に対して、僕は肩をすくめる他なかった。君は不満げな表情で腕を組み僕を睨みつけるが、どこか愛嬌のあるその顔に思わず微笑みが漏れてしまう。
「私は怒ってるのよ」
「わかってるよ。ごめん、千ちゃん」
僕は立ち上がり、君の前に立つ。元から君よりも二十は背が高かった。君は僕を見上げ、僕の中にある犬の香りを嗅ぐ。君の頬が紅潮するのがわかる。モノクロの世界は僕が想像する以上に色彩豊かで、君の肌はどんな白よりも美しい肌色だ。僕は君を抱きしめる。君はどうしていいのかわからずに、ただ立ち尽くした。
「私は怒ってるの」
「知ってるよ。良かった。君が無事で」
君の緊張が解けていくのが腕の中に伝わっていく。ゆっくりとその腕が僕の身体を抱き寄せた。先生が此所にいたのなら、僕は叩き殺されているだろう。僕は君の髪の毛をゆっくりと撫でる。細く美しい黒髪はどこか犬の体毛を思わせる匂いは発散していた。君の身体のそこここを覆う体毛は、何よりも美しく僕の心を捉えた。
「これからどうなるの?」
君の質問が幸福な時間を砕いていく。僕は君を放すと、静かに頬を撫でた。
「獅子王を狩りに行く」
「殺される」
僕は頭を振った。冬の空気が今頃になって僕らの身体を引き裂いていく。それでも犬の細胞のおかげか、人間の時以上に寒さを感じることはなかった。
「殺される可能性は高い。あいつは化物だからね。でも僕たちの兄弟みたいなもんだ」
「あいつは違うわ。難波さんを、パパを傷つけた」
「恐怖もあったのかもしれない。勿論怒りも。僕たちはあいつを止める義務がある」
本能的な使命感だったのかもしれない。今も大勢の人間が襲われる可能性を孕んだ化物を、あのまま放置しておく訳にはいかなかった。自分の同胞とも呼べる存在をあのまま放置して置く訳にはいかなかった。君を見つめた。震える君を。寄る辺ない君は、不安げに僕を見つめ続ける。
「千ちゃん。僕と結婚して欲しい」
君は驚き、眼を見開いた。その頬は真っ赤に染まり、あの時渡した椿が頬で咲いたかのようだった。君は困惑し、自分達の今の状況が判っているのか、僕が正気なのかを訝し気に問いただす。僕は君の数々の問いに応え、はぐらかし、微笑んだ。君は根負けしたかの様に肩を落とし、そして嬉しそうに笑った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?