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5-7 三週間、ファッションチラシの仕事を除いて全ての時間を君の目録へと注ぎ込む。枠取り…
5-6 その後、打ち合わせも兼ねて君の工房へと向かった。真田は留守の様で、聞けば今日も化…
5-5 渡月橋の前に立つ君は白い帽子を被り、白いワンピースを着ていた。肌も白い。うなじに…
5-4 インタヴューが終り、的場と岡田が写真のチェック作業を行っている。岡田には俺の意図…
5-3 三日後、自宅に届けられた真田芳雄の作品の目録に目を通す。分厚い革張りの作品集は、…
5-2 真田は芸術家に転身した。事実、獅子猿事件の狂騒の後、真田は人形作りに没頭し始めた…
5-1 その屋敷は風光明媚な立地に佇んでいた。嵯峨嵐山からほど近い、寺社仏閣が点在する山間に佇む屋敷。タクシーで指定の住所まで向かう道中、ポツポツと観光客の姿が見受けられた。数キロ離れた嵐山界隈の大渋滞とはほど遠い、閑静な住宅街だった。十月も後半に入っていたというのに、風鈴の音が時折聞こえた。真田という表札を見た時、思わず身震いしてしまう自分がいた。屋敷は今にも何かが出そうな程に古びており、黴臭さすら感じてしまう。的場が躊躇せずにチャイムを押した。俺は襟元を正す。屋敷の奥
4-3 今出川までは十分足らずの道のりだった。老舗天麩羅屋の『都屋』はミヤコヤではなく、…
4-2 君がチーズケーキを食べ終えたと同時、僕らは席を立ち北山の老舗着付け店へと赴く。閑…
4-1 柔らかい風に頬を撫でられ眼を覚ます。君の姿が見当たらないことで、思考が明晰になる…
3-3 邸宅は静まり返っていた。難波を車から下し、肩で支えながら玄関まで歩いていく。 歩き…
3-2 猟銃を手にする。狩人の血が俺の中に流れているのか。獲物を追うことは古代からの男の…
3-1 先刻の夕立が嘘の様に、夕陽が美しく街を照らしている。眼を細めてその光景を眺めてい…
2-7 「綺麗になったろう?」 粘つく様な声が背中に降り注ぐ。振り向くと、東条がニヤついた笑みをして部屋の入口に立っていた。その笑みはマスクに様に東条の顔に張り付いている。僕は先生を見る。先生は静かに首を振った。 「今までよりも遥かに、より美しく彼女は進化したんだ」 「なんであんたがここに」 僕の問いを鼻で笑い、東条は近づいて来た。東条の発する不快な臭いに咽せそうになる。 「ここは僕が提供した場所だからね。患者の容態を見に来るのは当然だろう?」 「先生」 「すまん、難波。