ポートフォリオ 2 「お告げ」

 むかしむかしあるところに妙という娘がおった。親は早くに亡くなったので叔母夫婦が面倒を見ておった。
「そろそろ妙も年頃じゃ。良い婿殿をさがさねばな」
 叔母夫婦はつてをたよって良い縁を探したがなかなか釣り合うものがおらなんだ。
 困った叔母は村の和尚様にどうか良い知恵をお授けください、と頼んだ。
「ふた山超えた山奥に霊験あらたかな阿弥陀様が祀られておる。そこで一晩お経をあげると良いお告げがあるそうな」
 叔母は妙を連れて山道を越えた。道中は険しくやっとのことで御堂を見つけたときにはもう夜になっていた。
「お告げをいただくためにはお前が自分で阿弥陀様にお経を上げなければなりません」
 妙はうなずいて一心に経文を唱え始めた。真夜中になったがまだなにごともおこらない。妙は疲れはてて眠気をもよおしふらふらと揺れ始めた。叔母は妙がかわいそうになり「では、私が代わりましょう」とお経を唱えだした。
 夜が明けたがついになんのお告げもないままだった。二人はとぼとぼと山道を戻っていった。
 帰り着くと叔母は熱を出して寝込んでしまいとうとう亡くなった。そののち妙は叔父の後妻となったという。


サークルのショートショート講習の後書いた作品。最初のアイデアは破棄しました。私はどうも他人の声が聞こえるアイデアは使うことができません。

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