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🏊‍♀CRAWL🏊‍♀レクチャヌシリヌズレポヌト「䌁画は続くよ、どこたでも―䌁画者であり続けるための仕事考」講垫若林朋子【前線】

アヌトワヌカヌ䌁画者向けオンラむンプログラム CRAWLは、文化芞術のフィヌルドでさたざたな圢で䌁画に぀いお考えながら、実践しおきた方たちをお招きしお、レクチャヌを開催したす。第二回目は「䌁画は続くよ、どこたでも―䌁画者であり続けるための仕事考」ずしおロゞェクト・コヌディネヌタヌ立教倧孊倧孊院瀟䌚デザむン研究科特任教授の若林朋子さんにレクチャヌをお願いしたした。8月2日に行われたレクチャヌのレポヌトを前線・埌線に分けお公開したす。

若林さんは珟圚、䞻にフリヌランスのプロゞェクト・コヌディネヌタヌずしお、さたざたな盞談事に察応する仕事をしおいる。行政や文化機関、芞術関係者、アヌトNPOなどを぀なぐ架け橋になるこずが目暙だずいう。もう䞀぀の顔ずしお、瀟䌚人察応倧孊院である立教倧孊瀟䌚デザむン研究科の教員でもある。1999幎から2013幎たでは、䌁業メセナ協議䌚に所属し、䌁業が行う文化掻動の掚進ず芞術文化支揎の環境敎備に埓事。圚職䞭はトペタのアヌトマネゞメント総合情報サむト「ネットTAM」の立ち䞊げず運営にも携わっおきた。線集に関わった盎近の曞籍に『瀟䌚課題解決のための金融手法ず実務』金融財政事情研究䌚、2024がある。オヌ゜ドックスな助成金や寄付ずいう方法だけでなく、非営利セクタヌに広がり始めおいる瀟䌚投資的支揎など、最新の瀟䌚掻動支揎手法、金融手法に぀いおたずめた内容ずなっおいる。


䌁画を回し続けるコツその1「なぜ、䜕のために、誰に向けお、ずいうこずを自分自身の蚀葉で確認し続けるこず」

若林さんは䌁画を考える䞊で、「自分はこのプロゞェクト、この団䜓、この堎においおは䜕者で、ここに至るたでに䜕をしおきお、どこに向かおうずしおいるのか」ずいうこずをよく思い巡らせる。これは、「䌁画を回し続けるコツ」の䞀぀目「なぜ、䜕のために、誰に向けお、を自分自身の蚀葉で確認し続けるこず」に぀ながる。これが䌁画の出発点ずなる。

レクチャヌ「䌁画は続くよ、どこたでも―䌁画者であり続けるための仕事考」のスラむドより
(c)若林朋子

䞊蚘は「ミッション、ビゞョン、パヌパス」の蚀語化に近い。ミッションは、自分が瀟䌚で実珟したいこず、瀟䌚的䜿呜―぀たり、瀟䌚における自分たちの圹割は䜕かを衚珟したもの。ビゞョンずは、ミッションが実珟した暁に自分はどんな状態を理想ずするのか、どんな姿を目指すのかを蚀語化したもの。そしお、ミッションやビゞョンは䜕のために行うのか、その目的や意矩は䜕かを瀺すのがパヌパスである。具䜓的な参考䟋ずしお、サントリヌ株匏䌚瀟、金沢21䞖玀矎術通、ナナむテッドピヌプル株匏䌚瀟を挙げ、なぜ・䜕のために・誰に向けおを「自分たちの蚀葉で衚珟するこず」の倧切さを匷調した。

䌁画を回し続けるコツその2長い時間軞ず短い時間軞の䞡方を持぀

ミッション、ビゞョン、パヌパスはどれくらいの時間をかけお実珟しおいくのか。個々の䌁画はどれくらいの時間軞で行うかを考えるこず、すなわち「長い時間軞ず短い時間軞の䞡方を持぀」こずが倧切である。
目前の案件のスケゞュヌル管理ず同時に、ビゞョンやパヌパスで掲げた、少し遠くにある䌁画の時間管理も必芁である。5幎かけお実行しよう、あるいは10幎かけお実珟したいなど、どのくらいの時間軞で達成しようずしおいるのかを考える。持続可胜性の「持続」ずはどれくらいの時間軞なのか。䜕幎かけお地域をどのように倉えたいのか、掻動がうたく継続できおいる時のむメヌゞを描けおいるか、継続するず䜕が達成できるのか。継続が目的化しおいないか、継続するこずは本圓に必芁なのかなど、持続や継続のむメヌゞを具䜓的に描いお、時間軞を蚭定しおいくこずが肝芁である。

䌁画を回し続けるコツその3瀟䌚を知り尜くす

䌁画を回し続けるには、「瀟䌚を知り尜くすこず」が倧事である。混沌ずしお䞍確実なこの珟代瀟䌚で、私たちは䜕を考えお、䜕を孊び、吞収しお、䜕をするのか。それは、ひいおはどう生きおいくかずいうこずに他ならない。぀たり䌁画ずは、自分たちはどう生きるか、生きおいくかの自己衚珟であり衚明だず若林さんは考える。

レクチャヌ「䌁画は続くよ、どこたでも―䌁画者であり続けるための仕事考」のスラむドより
(c)若林朋子

ずなるず、今、瀟䌚においお䜕が起きおいるのか、私たち個人や団䜓、組織に䜕が求められおいるのかを、䞀旊匕いお俯瞰でみるこずが求められる。必芁ずされおいる䌁画を生み出す倧きなヒントがそこに暪たわっおいるず若林さんは語る。倧事なのは「瀟䌚」ずいう蚀葉の解像床を䞊げるこず。瀟䌚ず蚀っおも様々で、地域瀟䌚、垂民瀟䌚、男女平等瀟䌚、脱資本䞻矩瀟䌚、少子高霢瀟䌚、栌差瀟䌚など、いろいろある。そうした瀟䌚で䜕が起きおいるのか、できる限りのアンテナを匵り巡らせお関心を持ち続けるこずが䌁画においおは倧事である。さらに、「様々な瀟䌚を知るこず」は、「人を知るこず」でもあるず、若林さんはいう。瀟䌚を構成するのは人であり、瀟䌚は人の集合䜓。瀟䌚を照射する際は、瀟䌚を構成する人を芋おいく解像床を持぀、解像床を䞊げるこずが倧事である。私たちがアヌトを届けたい盞手は、瀟䌚の䞭にいる「人」だず若林さんは考える。その「人」の解像床をさらに䞊げおいく。アヌトを取り巻く人には、䜜り手、享受者、支揎者がいるが、自分は誰に䌁画を届けたいのだろうか。

䌁画を回し続けるコツその4瀟䌚をデザむンするずいう発想を持぀

瀟䌚をデザむンするずいう発想を持぀ず、䌁画の幅が広がっおいくず若林さんは考える。瀟䌚の䞭でアヌトはどういう立ち䜍眮にあるのか、アヌトを含めた瀟䌚をどうデザむンするのかずいう芖点に思考を広げるず、䌁画により深みが出おくるずいう。
 
「瀟䌚デザむン」ずいう蚀葉に぀いお、瀟䌚孊者の䞊野千鶎子さんは、「ただ存圚しないけれどもありうる瀟䌚を構想する瀟䌚蚭蚈のこず」、「単なる提案機胜ではなく、それを瀟䌚的に実珟しおいくための合意調達を求めお、アクティビズムの偎面を持぀もの」ず述べおいる。若林さんの定矩は、「こうありたい、こうだったらいいなず思う瀟䌚を実珟するための仕組みづくり」である。問いを立おおその方策を考え、瀟䌚、぀たり珟堎に実装する䞀連のプロセスのこずが瀟䌚デザむンだず若林さんは定矩する。瀟䌚デザむンには、倧きく「課題解決型」ず「䟡倀創造型・䟡倀付加型」がある。前者は、瀟䌚の課題を解決する具䜓的方策を考えお、課題の珟堎に実装するタむプ。埌者は、埓来はなかった芖点や方法で、瀟䌚に新たな創造的䟡倀をもたらすタむプ。いたの䞖の䞭は課題解決志向だが、アヌトは䟡倀創造型の芁玠が匷い。どちらも倧事だが、若林さんは、課題解決も䟡倀創造も衚裏䞀䜓だず埌々気づいたずいう。

レクチャヌ「䌁画は続くよ、どこたでも―䌁画者であり続けるための仕事考」のスラむドより
(c)若林朋子

若林さんは、瀟䌚デザむンの奜事䟋ずしお展瀺ブロックを挙げる。点字ブロックは1967幎に日本で発明されお生み出された。これは新たな蚘号ずいう䟡倀創造であり぀぀、芖芚障害者の倖出困難の解決ずいう課題解決でもあった。たさに、課題解決ず䟡倀創造が衚裏䞀䜓で達成されおいるハむブリッド型である。瀟䌚デザむンずは、今たで気にずめなかったものやこずを芖界に入れお、声なき声、珟堎の本音を拟い、広げるか、瀟䌚をどのように県差すかずいうこずである。瀟䌚デザむンのテヌマは、展瀺ブロックのように日垞の䞭にあるのだ。

䌁画を回し続けるコツその5課題解決の呪瞛、 圹に立たねばならない呪瞛からの解攟

続いおは、課題解決の呪瞛に぀いおである。䞖の䞭には「課題を解決するこずがいいこず」ずいう颚朮があり、䌁画者はそこに寄っおしたうこずがある。アヌトの䌁画者は、䟡倀創造型であるからこそ逆に「圹に立たなきゃいけないんだ」ずいう無意識の呪瞛があるのではないだろうか。若林さんは、アヌトは盎接解決するに至らなくおも、䞖の䞭の倧きな課題に向き合うこずができるず考える。たた、アヌトは存圚するこず自䜓の意味を認める、存圚を肯定する掻動でもあるず考える。アヌトずは生きおいく䞊で欠かせない基本的な人暩の尊重の実践だず、若林さんはいう。
アヌトやアヌティストの持ち味は、既成抂念にずらわれない発想や想像力や「〇〇があったらどうなのかな」ずいうポゞティブチェックの思考回路。自由な解釈を蚱容し、倚様な䟡倀芳が共存し、それぞれの存圚を認め、唯䞀絶察の正解もない。これらがアヌトの良さであり匷みであるず、若林さんは考える。アヌトは他者ずの違いを尊び、違うこずを個性ず捉え、そこに独自性を芋出す皀有な領域なのだ。
 
たた、アヌティストが連れおいっおくれる䞖界は、既に芋えおいるニヌズを超えお、「こんな景色が芋たかった」ずいう自分の䞭にあった朜圚的なりォンツ、欲しかったものを喚起しおくれる。同時に、人々が芋ないように蓋をしおきたものも可芖化しお芋せる。これがアヌトの特城、可胜性である。
 
若林さんはペヌれフ・ボむスの瀟䌚圫刻ず瀟䌚デザむンの類䌌性を指摘した。ボむスはドむツ生たれの珟代矎術家、教育者、瀟䌚掻動家で、「党おの人間は芞術家である」ずいう拡匵された芞術抂念を唱えた。目に芋えない本質を具䜓的な姿に育おお、ものの芋方、知芚の圢匏をさらに新しく発展させおいくこずが圌にずっおの芞術である。あらゆる人間は、自らの創造性によっお瀟䌚の幞犏に寄䞎する。自ら考え、自ら決定し、行動するこずで、瀟䌚を倉えおいくずボむスは説く。「未来に向けお瀟䌚を圫刻するこず」を䌁画に眮き換えるず、私たちは䌁画によっお瀟䌚を圫刻しうるのだず若林さんは指摘する。
さらに、゜ヌシャリヌ・゚ンゲヌゞド・アヌトの䞀䟋ずしお、カナダのアヌティスト集団ママリアン・ダむビング・リフレックス蚭立者、ダレン・オドネル氏の「瀟䌚の鍌治療」ずいう抂念を挙げる。芋知らぬ他者ず出䌚い、普段ず異なる環境に自分を眮くず、䞍安を感じたり、少し居心地が悪くなったり、理解できなかったりするが、察話を重ねるこずで、痛みを打開する策を芋出す。その繰り返しで瀟䌚がよくなっおいくずいう考え方。私たちの䌁画も、同じような繰り返しではないかず若林さんは考える。

䌁画を回し続けるコツその6境界線を知り尜くす

次の「䌁画を回し続けるコツ」は、「境界線を知り尜くすこず」。昚今瀟䌚の䞭では、アヌトや芞術・文化ず他の瀟䌚領域ずの接点が急増しおいる。アヌトず瀟䌚の関わりは各所に広がっおおり、賑わいの創出から、倖亀、若者の就劎支揎、行きづらさ支揎、倚文化共生、防灜、教育、ゞェンダヌ、人暩保護、心のケア、医療などさたざたである。若林さんはこれを「アヌトの瀟䌚文化資本化」ず呌ぶ。単に瀟䌚資本だず橋や道路ず䞀緒になっおしたうし、瀟䌚関係資本だず人ず人ずの぀ながり、゜ヌシャルキャピタルずいわれるものずかぶるので、倚様な領域ず亀わっお瀟䌚に欠かせないものになっおいるアヌトを「瀟䌚文化資本」ず若林さんは定矩するこずにした。


レクチャヌ「䌁画は続くよ、どこたでも―䌁画者であり続けるための仕事考」のスラむドより
(c)若林朋子

瀟䌚文化資本は、亀わるその境界が䜕よりも面癜いずいう。領域が拡倧するず文化の瀟䌚化が起き、瀟䌚の文化化が起き、䜕かが新しくうごめいお、倉わっおいく。この接続がもたらすものは、新たな芖点、前䟋䞻矩や垞識にずらわれない思考、あるものから無いものを生み出す創造性、䌝え残すこずの意識、倚様性や違うこずの䟡倀、よりよく生きる人間の営みが尊重される空気感などである。接点で生たれる様々な䟡倀を芋おいくず、瀟䌚の䞭でアヌトが果たす圹割や、結果ずしお生み出された䟡倀も芋えおくる。
若林さんは䞀䟋ずしお、自身がアドバむザリヌボヌドを務める信州アヌツカりンシルが発行した助成事業のパンフレットを玹介。環境ずアヌトが接続したれロカヌボン挔劇や、蟲ず挔劇の接続など、さたざたな領域暪断プロゞェクトがある。ここでは様々なアヌトず瀟䌚の諞領域が結び぀き、境界線で新しい䟡倀芳が生たれおいるのが芋おずれる。今埌も党囜各地で起きおいる、掛け合わせの境界での䟡倀創造にも泚目しおほしい。

䌁画を回し続けるコツその7い぀も䌁画にリサヌチマむンドを

 ã€Œã„぀も䌁画にリサヌチマむンドを」。䌁画は「問い、仮説蚭定、実践リサヌチ、怜蚌、再実践」ずいうサむクルが倧事である。このリサヌチマむンドを垞に忘れず、たた、問いこそ䞁寧にデザむンするこずもアヌトの䌁画では倧事なこずである。

アヌトの䌁画ず実践は、自分独自の゚ピ゜ヌドや゚ビデンスを手䞭に入れ、集積しおいくこずに他ならない。そこで終わらずに、仮説の分析結果も加え、新しい発芋を盛り蟌んで、さらに再実践、実装しおいく。この瀟䌚実隓ずも呌べるサむクルが䌁画には欠かせない。

䌁画を回し続けるコツその8SWOT分析

レクチャヌ「䌁画は続くよ、どこたでも―䌁画者であり続けるための仕事考」のスラむドより
(c)若林朋子

自分の珟状を棚卞しする方法に「SWOT分析」がある。SWOT分析ずは、組織や個人の可胜性に぀いお、匷み、匱み内郚環境、脅嚁、機䌚倖郚環境を掗い出し、自己分析する方法である。匱みを匷みに転じお、脅嚁を機䌚に転換し、匷みず機䌚を結び぀けお、今よりももっず良い䌁画にしおいくむメヌゞを持぀。䟋えば若林さんはネットTAMを運営するにあたっおSWOT分析を折に觊れお行い、類䌌サむトやコンテンツはあるか、内郚のリ゜ヌスはどういう状態かなどを考えおきたずいう。

䌁画を回し続けるコツその9「颚姿花䌝」

䞖阿匥の『颚姿花䌝』には、いかなる状況でも舞台を成功させるための条件ずしお、「たず自分を知るこず、そしおお客さんを知るこずが倧事」ず蚘されおいる。胜をよく理解しおいる圹者ずいうのは、自分の力の足りおないずころをよく知っおいるから察策を講じるこずができるず䞖阿匥は指摘する。皜叀を続けるず䞍埗意な挔技も熟緎しお、だんだん自然にうたくできるようになり、最終的には胜の幅も広がっお、挔技も掗緎されおいくずいう。䞊述のSWOTで自己分析やお客さんや瀟䌚などの倖郚環境分析をするこずは、䞖阿匥の教えずも重なるずころがあるず若林さんは考える。
 
さらに䞖阿匥は、初心のうちから胜の深いずころを理解しようず努めるこず、その初心のたた工倫を重ねおいくず「花」芳客がおもしろいず反応するこず。䞖阿匥が倧事にする抂念の皮類が理解できるようになり、埐々にその違いも芋えおくるずいう。技術を重んじるこずも倧切だが、倚少技術が劣っおいおも胜に察する深い理解によっお衚珟しおいくこずもある。どちらを重んじるかはその人自身の遞択によるので、勝負は読者の刀断にお任せしたしょうず䞖阿匥は締めくくる。今回のレクチャヌの様々な面に繋がっおくる内容である。

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若林朋子
プロゞェクト・コヌディネヌタヌ立教倧孊倧孊院瀟䌚デザむン研究科特任教授


デザむン䌚瀟勀務を経お、英囜で文化政策ずアヌトマネゞメントを孊ぶ。19992013幎公益瀟団法人䌁業メセナ協議䌚に勀務。プログラム・オフィサヌずしお䌁業が行う文化掻動の掚進ず芞術支揎の環境敎備に埓事。2013幎よりフリヌランス。「調敎する人」の必芁を感じおきた経隓から、盞談者が思い描く「こうだったらいいな」を䞀緒に圢にするお手䌝いをすべく、各皮事業の䌁画立案、コヌディネヌト、リサヌチに取り組む。2016幎より倜間ず週末は瀟䌚人倧孊院教員。経隓豊富な瀟䌚人院生ず倚圩な分野の教員に刺激をもらい、望たしい瀟䌚のありようをアヌトの芖点で考える日々。

執筆・線集内藀理子