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いいね#8 鬼を成敗するために稲を栽培するニート

2020年11月12日にマーベラスから発売されたNintendo Switch / PS4用ソフト「天穂のサクナヒメ」が話題になっています。日本神話を思わせるような和風テイストの今作は、農具を使って鬼を倒していくというシンプルで軽快なゲームで「和風アクションRPG」と銘打たれています。パッケージを含む、キービジュアルは名作と言われた大神をも連想させますね。前情報から十二分に期待値の高い作品でしたが、今回話題になったのはそこではありません。何が注目を浴びたのでしょうか。少し見てみましょう。

まずあらすじがなかなか攻めてます。

武神と豊穣神を両親に持つサクナは家の財産を食いつぶして、ぐうたらな生活を送っていた。ところがある日、神界に迷い込んだ人間たちを都に侵入させてしまった上に、主神への献上物である米の備蓄を全て台無しにしてしまうという失態を犯す。罰として鬼が支配するヒノエ島の調査を命じられ、サクナは人間たちと共に泣く泣く島に渡るのであった。
はたしてサクナたちの運命やいかに……。

穀潰しのニート神がやらかしていよいよ家から追放される、というこどおじには辛い内容となっています。神様であっても穀潰しの末路はこうなるんですね。最近流行りの「なろう系」とは違って、あまりかっこいい始まりではないですし、サクナが人間から神様としてリスペクトされてないのも悲しいところです。とはいえサクナを一人前にパワーアップさせていくことは可能で、武器や衣類、料理を作って能力強化するシステムが備わっています。

米は力だ!稲を育てて強くなる和風アクションRPG」というキャッチコピーの通り、サクナをパワーアップさせるための基本となるのが稲作。良いお米を作り、収穫することでサクナを強化し、攻略を優位に進めたりさらに良い米を作ることができるようになります。

さてこのゲームが話題になった大きな理由はこの稲作にあります。このゲームを農業シミュレーターと呼ぶ人がいるように、稲作の工程や方法、厳選ポイントが本格的過ぎるのが最大の特徴です。通常のゲームで植物を育てる場合、種を蒔き、水をやり、収穫する程度でしょう。しかしこのゲームは田植えまでに、田起こし種籾選別育苗を行わなければいけません。育成期を経て、稲穂を収穫した後も、脱穀籾擦りといった作業が待っています。しかも田に入れる水量を調整したり、稲の病気や害虫に気を配ったり、肥溜めから肥料を作ったりと、他の細かいところまでガチガチのガチです。

どんな感じになっているかはプレイ動画をご覧くださいw


日テレの「鉄腕DASH」での企画「DASH村」を思い出す人もいるかもしれませんね。多くの工程が機械化されている今ではもう少し利便性の高い方法が取られているものもありますが基本の工程は今も変わらないわけで、一昔前はこのようにして米作りが行われていたのかと、流れを追従して農家の方のご苦労を察せずにはいられません。

GamesIndustry.bizには開発チームである「えーでるわいす」と日本のゲームをローカライズして海外展開させている「XSEED」のインタビューが掲載されています。「えーでるわいす」が開発にあたってかなり綿密な調査を行ったことや、海外展開のための翻訳に苦労があったことが述べられていますが、今回まさにその成果が実を結んだと言えるかもしれません。

「XSEED」の取締役副社長のKenji Hosoi氏はこのゲームの気に入っている点について「サクナヒメと同時に稲作にまつわる複雑な概念を経験の浅いプレイヤーに伝え,知識を発見させることができる」と語っています。

攻略のためにwikiじゃなくて農林水産省やJAのHPを見ることが推奨される異例の作品となりましたが、結果として何気なく食卓に並んでいるお米にまつわる歴史と苦労を知ることができました。お米が主食の日本人にとっては知っておくとご飯が美味しくなる大切な知識なのかもしれませんね。


Yahoo!ニュースでは米の国内需要が落ち込んでいることが取り上げられていました。新米の季節、食欲の秋だなんて言いますし、今日は農家の人に感謝しながら地元産の美味しいお米を食べてみるのもいいかもしれません。


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