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アメリカの学生新聞を見てぼんやり考えたこと

「学内のスタートアップが工学部のチームと共同して、旧型のバイブレータを大きく改良した”スマート”バイブレータを開発した。

ライオネス(雌ライオン!?)と名付けられたこのバイブレータは、収縮や温度、動きを感知する5種類のセンサーを搭載しており、ブルートゥースでスマホやPCのアプリにデータを送り、より良い前戯のためのサジェストを提供する。」

ジャーナリズム教育と学生新聞について調べるため、プリンストン、ミズーリ大コロンビア校、UCバークレーの三校を訪ねました。

東海岸の有名私立(学費は東大の10倍!)プリンストンでは、去年の9月に人種差別への抗議がエスカレートして、学生が総長室を占拠する事件があった。その渦中で取材をつづけた学生新聞も、キャンパスの問題をよりフェアに議論するための場を作るという意気込みをもって活動してた。

アメリカ最古のジャーナリズムスクールがあるミズーリ大では、教育の一環として新聞(テレビ局やラジオ局もある)が運営されていて、学生と教員が話し合いながら街や州のことを広く伝えている。大学から毎年5000万円近いお金が出ていて、それでもときには総長を批判することも辞さないジャーナリスト精神あふれた新聞だった。(ミズーリ大も去年人種差別問題がエスカレートして、学生の運動を受けて総長が辞任している)

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こっちに来て驚いたのは、多くの学生が自分の暮らす町や大学の問題に強い関心を持ってること。キャンパス内の寮やそのすぐ近くに暮らす彼らにとって、大学は一つの町であり家のようなもので、その問題に関心をもつのは当たり前なのかもしれない。就活がインターン中心だったり、新卒じゃなくても就職のチャンスがあったりして、大学生のときに使える時間が多いのも一つの理由だと思う。

日本の優秀な学生は、まじめに勉強(研究)も就職活動もしようとすると、ぜんぜん時間がないのが現状だ。休学や留年は社会的なハードルが高すぎるし、奨学金は不十分で苦学生はたくさんバイトしなきゃいけない。卒業前に就職するのは当然で、いちばん研究の楽しい時期に研究と関係ない能力を測られる。大学や町といった自分の所属するより広いコミュニティに対して、関心や時間を割く余裕なんてぜんぜんない。

僕らはいつ自分たち自身のことについて話しあえばいいんだ?

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ところで冒頭の「スマート」バイブは、UCバークレーの学生新聞The Daily Californianの記事。この新聞には毎週連載の人気コラム”SEX ON TUESDAY”なんかもあって面白い。編集部員に「こういうセックスネタ、カリフォルニアって感じでいいね」って笑いながら言ったら、「君たちの学生新聞ではこういう記事は禁止されてるの?」だって。書ける人がいねーんだ悪かったな(募集中)

ちなみに、バイブレータと同時開発されたスマホアプリでは、生理的・性的な問題について話し合う質問板が提供されるとのこと。開発チームは、今までの日常生活で性的なテーマを話すことが制限されていたことを指摘して、こういった疑問や課題を自由にぶつけあうことが大事だと主張してる。

僕らもふだん話し合わないことについて、もっと話してみてはどうだろうか。自慰の話じゃなくっても、どうすれば僕らの大学がもっと良くなるかとか、就職制度はどう変わるべきかとかについて。今回アメリカの学生新聞をまわって、そういう意見を伝え合える場をとてもうらやましく思った。

バイブレーターにブルートゥースでつながるスマホアプリは作れないけど、学生メディアを通してそういう場所が作れればいいなと思う。東大新聞オンラインで一緒に活動してくれる人、募集しています。

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