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10年ぶりに高校三年生になって

この夏、僕は10年ぶりに高校三年生だった。
同級生の幼なじみに恋い焦がれる、真っすぐで不器用な男子高校生だった。

瀬戸内国際芸術祭の演劇に出ました。
二日間の公演は大成功で、400人のお客さんに満足のいく舞台を見せられたような気がします。

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恥ずかしさや照れを相対化して、一枚一枚自分の殻を破っていく稽古の時間は、文化祭の準備のように愛おしく刺激的な時間だった。
公演直前の若いメンバーが舞台への思いを口にしながらポロポロと涙を流すのを見て、僕は彼女たちが持ち合わせているような豊かな感受性を、どこかに置き忘れてきたような気がしたのでした。

僕の演じた男子高校生はジャンプ漫画の主人公ように真っ直ぐで、曖昧模糊とした未来よりも、今の気持ちを大切にする少年だった。彼は生まれ育った島を出る決断をして、恋人とともに未知の世界に踏み出します。初秋の夕焼けに染まるラストシーンで彼らは友人たちにさよならを告げ、舞台を包む夜の帳とともに、二日間の公演の幕も下りた。

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そういえば彼が島を出る決断をしたのと同じように、僕自身も大小の選択をしながら生きてきたのでした。これまでしてきた選択を後悔することは無いけれど、選ばなかった人生に後ろ髪を引かれることはある。そしてその感傷は初秋の夕焼けが赤いのと同じくらい意味のあるものだ。

僕は10年ぶりに高校三年生になって、思わず涙がこぼれることのなくなった大人の自分を見つけたのでした。この10年間で選び取ったものを心から愛しながらも、選ばなかった人生も死ぬほど恋い焦がれて生きていたいと思ったのです。

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(画像は全て瀬戸内海放送のニュースから)


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