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小説『メルヘン』

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ピンサロ嬢 ナナの話 1~9 原稿用紙47枚程
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記事一覧

小説 メルヘン #1

小説 メルヘン #1

ピンクサロン「メルヘン」では、働いている女の子が、お客さんの連絡先を聞いたり、自分の連絡先を教えたりする行為は、禁止されている。
でも私は、彼らの電話番号を聞くのをやめられなかった。
他の女の子には、内緒にしていた。ヌキに来ただけの男の人を、プライベートに流れ込ませるなんて信じられないと、軽蔑されそうだから。

女の子は、名刺を持たされる。表に「メルヘン」、下に店の電話番号が印刷されていて、裏には

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小説 メルヘン #3

ピンクサロンで働く前は、介護の仕事をしていた。
高校を卒業し、家を出て、老人ホームでアルバイトをしながら介護職員の資格をとった。同じ職場に恋人もできて、二人のシフトが重なると嬉しかった。廊下ですれ違ったりすると、微笑み合うのだ。
そんなある日のこと、入居者さんを車いすからトイレへ移乗させる時、私は右の股関節に違和感を覚えた。激痛でもなく、ネジがうまいこと穴に入ってないまま動くような、ちょっとした不

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小説 メルヘン #9 (最終回)

そのお客さんは、私を壊そうとした。
開かない脚を押し広げ、中に入ろうとした。
「やめてください。ルール違反ですよ」
私は抵抗した。
「違反もくそもあるかよ。おまえなんて、壊れればいいよ」
お客さんは、お酒に酔っているようではなく、そのせいで一層怖かった。
いなくなった小嶋さんの代わりに新しく入ったタカシ君が、ちょうどフロアの見回りをしていて止めに入ってくれた。店長とタカシ君に両手を掴まれ、お客さん

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小説 メルヘン #8

ある日、店のドアを開けると、レジのところで店長とレイナさんが話し込んでいる。珍しく部長も来ている。
「何かあったんですか?」
フロアのソファーで週刊誌を見ているマミさんに、聞いてみる。
「なんだか、リサと児嶋さんが、逃げた、とか」
言葉が出ない。
「ナナ、リサと仲良しだったでしょ。何か聞いてない?」
「いえ、何も」
もう、リサが現れてもいい時間なのに、来ない。昨日は一緒にうどんを食べに行ったけれど

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小説 メルヘン #7

ホテルはメルヘンと同じように薄暗かったけれど、静かで清潔だった。

細野さんのを口に含む。好きな人の、コンドームがついていない性器を舐めるのは何て気持ちがいいんだろう。私は赤ちゃんになったような、同時にお母さんになったような気がした。彼の声が、聞きたかった。

細野さんの両手が私の頭を挟んだ。そして、押し付けた。あそこの先が、喉の奥にくっついて苦しいのに、細野さんは弛めてくれない。舌が彼を追い出そ

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小説 メルヘン #5

「今日、細野さん来たね」
いつものうどん屋で、リサはおかめうどんに七味をかける。私は、キツネうどん。
「うん。ちょうど六日ぶりくらいかな」
「あの人、いいお客さんだよね。手のかかるプレイとか、しなくていいんでしょ」
確かにそうだ。リサは、自分のお客さんの話を始める。
「俺の顔の上に跨って。それで片手で乳首を刺激しながらもう片手でしごいて。とか言わないでしょ」
「言わないね。でもさ、その人、咥えて欲

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小説 メルヘン #6

店が終わった後、一人で近くのバーに行った。雨は弱まって、傘を差さなくても平気だった。
コロナビールを頼んだものの、口に詰まったライムのやり方がわからなくてマスターに習った。マスターは五十ぐらいで、十八の頃からこの仕事をしているという。一月くらい前に店長とレイナさんと来た時、マスターは、「今度、ナナちゃん指名で行きますよ」と言った。でも、まだ来ていない。催促しにきたと思ってるだろうか。それも、間違い

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小説 メルヘン #4

リサはおかめさんに似ていて、柔らかい。柔らかくて白くて小さい。リサはお客さんに人気がある。私は、色白じゃないし、大柄。でも、私を指名してくれる人も、少しはいる。 

細野さんは、私に会いに来てくれる人。
「私、股関節が生まれつきおかしいみたいで、脚をあんまり広げられないんだ」
ソファーに座った私の脚を開いて、上に乗っかるようにしてキスをしたりおっぱいを舐めたりしてくるお客さんがいると、いつもそう伝

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小説 メルヘン #2

「ナナって、店に入ってからもうどのくらいになる?」
開店前、接客フロアのソファーに座り、朝礼が始まるのを待っていると、レイナさんが私の隣に腰かける。深緑色のキャミソールを着た、レイナさんの香水が香る。四月でも夜になれば冷える。この地下の店内にも暖房が入れてある。
「ええと、半年くらいでしょうか」
私は脚に保湿クリームを塗っていた手を止め、それから指を折り答えた。レイナさんは煙草に火をつけると眉間に

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