自分の感情や心を大切に扱う

ハートドリブン 塩田元規

株式会社アカツキ

 はじめに、簡単にこの本の著者が経営する会社について説明したいと思う。
 著者は株式会社アカツキの創業者代表取締役CEOである塩田元規さん。
株式会社アカツキは2010年に創業され、心が求める活動がみんなの幸せの原動力となる世界「A Heart Driven World.」をビジョンとし、モバイルゲーム事業、リアルな体験を届けるライブエクスペリエンス事業を柱として、心が躍り感動とつながりをもたらすエンターテインメントをグローバルに展開している。創業して3.4年は、株式会社アカツキの理念や哲学はなかなか周囲に理解されず、否定されることもあったようだが、創業6年目に東証マザーズ上場、7年目に一部上場を果たした。2018年度の決算では、通期売上281億円、営業利益で136億円を計上している。自分たちがワクワクしながら作ったものが誰かの心を動かし、一人ひとりの人生を豊かに色づけていくと信じて、活動の幅を広げながら急成長を続けている。
 具体的な事業内容としては、アメリカのハリウッドでは映画事業を行っていたり、リアルでは、アウトドア専門のアクティビティ予約プラットフォーム「SOTOASOBI(そとあそび)」や、横浜駅直通の複合型体験エンターテインメントビル「アソビル」を運営している。「うんこミュージアム」や宇宙をイメージした屋内キッズテーマパーク「PuChu!(プチュウ)」など人気コンテンツが続々誕生している。また、スポーツ事業も始めていて、2018年からは東京ヴェルディの主要株主となり、コーポレートパートナーとして応援しているようだ。これらは全て、「心を動かす体験」という点でつながっている事業であるとのこと。

 私はこの会社を知ったとき、とても驚いた。ワクワク仕事ができることに越したことはないし、やりがいを感じながらできる仕事は素晴らしいと思うけど、そうは言っても、私がこれまでに見てきた会社はお客様のニーズに合わせた商品やサービスを作り出し、カスタマーファーストで、営業の技、テレアポの技を駆使して顧客獲得に繋げ、少なからず数字を気にしているというものだった。それが会社として当たり前のあるべき姿だと思っていた。
 しかし、株式会社アカツキは本気でハートを大切にして、自らの感情を大切にすることで生み出されたもので事業展開をしている。目に見えないもの、説明ができないものをビジネスにしていくのはとても難しいことである。それでも、株式会社アカツキは心を動かす体験をキーワードに実際に“大成功”企業と言われるほどにまで成長しているのである。

 私はこの会社にとても未来を感じた。昔のような大量生産の第一次産業から第二次産業、第三次産業(サービス業)と変化してきて、今まさに大切にすべき、感情に訴えかける、心を動かすというような人々のQOLをより高くする会社だと思った。コロナの影響により、今まで以上に人の心を動かすものやサービスが注目されていくといわれている今、株式会社アカツキのスタンスは広まっていくべきだと思う。

心に注目している企業

 実際に人の内面、心に注目している企業は多く存在する。

 実はこの領域は世界的にも注目が集まっている。アメリカの経営者の間では以前から禅の考えが重要視されているし、マインドフルネスや瞑想など心へのアプローチでストレスを低減し、集中力を向上させる取り組みは企業でも盛んに行われている。その流れを加速させる動きとして、最先端の脳科学、生体科学、心理学、テクノロジーを活用して、心の健康や幸福を実現するスタートアップ企業も増えていて、産業としても成長が期待できる分野だ。(本書14.15p) 

とのこと。

 マズローの欲求5段階説を見てみても、人は物質的に豊かになり、安心・安全に対する欲求が満たされると、充実感やつながりといった心の欲求にシフトすることがみてとれる。(下図)


便利だから商品が売れるという機能的価値が中心だった時代は、もう終わった。
 精神的、感情的な満足に価値の源泉が移っていく。見えない感情的な価値(感情価値)がどんどん高まっていく時代だ。感情価値に払う金額は、機能的価値に払う金額よりはるかに大きい。そして、感情価値の高まりは、顧客をファンに変えていく。(本書7p)

日本の現状

 では、日本人の生き方はどうだろうか。
 自分の心に正直に生きている人がどれだけいるだろうか。
 月曜日が楽しみだと思えている人がどれだけいるだろうか。
 ちなみに、世界には幸福度指数なんてものもあるが、日本は156ヵ国中58位(2019年)。GDPで見ればアメリカ中国についで日本は世界第3位であるのに、幸福度となると、一気に落ちる。これは日本人がいかに自分の心に正直に生きられていないかを表すものだと言える。
 とはいっても、自分の気持ちに正直に生きることは難しい。特にまだ社会人としての力がないうちは、どうやれば効率的に成果を出せるか、仕事で役立ちそうな戦略やノウハウをインプットして、とにかく行動あるのみでも良いのかもしれない。だけど、それに慣れてしまって、とにかく必死に成果にこだわり続けていると、自分がみえなくなり、自分の気持ちの真髄がわからなくなってしまう。なんのためにやっているのか、自分の目的はなんなのか。自分自身を見つめて、自分の感情を大切にしていくことが自分なりの成功の近道なのかもしれない。

 今まで読んできた本を振り返ると、How toの記述ももちろんあったが、どの本にも共通していたことは、やっぱり最後は気持ちだということ。テレアポでもプレゼンでも、ビジネスマナーでも、人との付き合い方でも、意義目標を持つということも、結局は相手の心、自分の心に働きけるというのは必要不可欠で、共通していることであった。自分の心の持ちよう、相手の心の持っていき方で一度きりの自分の人生の生き方が変わる。実に人間らしいと思った。人間ならではの特徴である。

 私は今までやりたいこと(Doing)がわからない、見つからないと悩んでいた。だけど、自分がなりたい理想の人物像は持っている。これからは、やること(Doing)だけじゃなくて、自分の在り方(Being)も大切にしていきたい。そう考えさせられる1冊だった。

志とは“心指し”だ。心が指し示している方向のことだ。ワクワクといった感情を丁寧に見れば、心は自分の進むべき道を教えてくれる。(本書72p)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?