見出し画像

【掌編】内側。

毎日のように通る道に、私の好きな造りをした家がある。四角い窓の中に、ひとつだけある丸窓。

そこから毎日違うひとが外を眺めている。じーっと、睨みつけることもあれば、笑い転げていたり、時に涙している。

なにが怖くて、面白くて、悲しいのだろう。ぼくから見る世界は特に変わったことなどないように見える。

今日見かけたのは、初老のおじいさん。その目は虚ろだった。どんな思いを抱いているのだろう。声をかけてみたいが、家の前に立つと声が出なくなる。

帰ろうと歩きだすと、また違う視線を感じたので振り向くと、隣に同じく初老の奥さんと思われる女性が立っている。

2人はダンスを踊りはじめた。

明日はどんな景色が見られるか密かな楽しみだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?