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自分が躁鬱にならなければ出会わなかったかもしれない本

"坂口恭平"という方の存在を知ったのは、自分が双極性障害だとわかってからのことだ。

自分が双極性障害かもと思い出した頃から、ひたすらネットで病気のことを検索して読み漁っていた。

その中で、双極性障害の有名人を調べていたときに出てきた1人が"坂口恭平"さんだ。Twitterもフォローした。

Twitterを見ていると、ちょうど今回紹介する「まとまらない人」が発売された頃でその話題が多かった。多くの人がリプしたり、リツイートしていることで興味を持ち、なによりタイトルに惹かれ、すぐさまAmazonでポチる前に書店へ走った。プライム会員だから次の日には届くが、その1日を待てなかったのだ。

本屋3軒ハシゴして、ようやく見つけた。、家へと急いで帰る車中もなんだか楽しみでドキドキしていた。入浴などすべてのことを済ませて、読書体制に入ったことを覚えている。

まとまらない人 坂口恭平が語る坂口恭平 https://www.amazon.co.jp/dp/4898155146/ref=cm_sw_r_cp_tai_eAasEb2DPKEDM

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まずは簡単に"坂口恭平"さんをご紹介。
1978年熊本生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築の仕事(といっても設計図は書けないらしい)をしていたが、路上生活者の住居を撮影した写真集を刊行。以後、小説や絵を描いたり、料理をして料理本を出したり、曲も作ったりとマルチな才能の持ち主。東日本大震災のときには、自ら新政府初代内閣総理大臣を名乗り、新政府を樹立。躁鬱病であることを公言して、希死念慮に苦しむ人たちと電話で会話する「いのっちの電話」の活動もしている。

そんな一風変わった経歴を持った方の最新刊。双極性障害であることがわかった自分にとって、同じ病気を抱えながらも成功している人の存在は救いだった。

一読した感想は、わかるわかると共感するところもあったが、後半はまとまらない感じが出ているように感じた。

著者の生活や活動についてが書かれており、とにかく思いついたことをどんどんやる人という印象。双極性障害の躁の状態なのかなというエピソードが色々と出てくる。

例えば、思いつきでカフェもやろうと1日だけ営業したり、紹介文にあるがいきなり新政府を樹立したりというものがある。

躁のときは一般的にとにかくアイデアが溢れ、活動的になることが多いらしいのだが坂口さんも同様、当てはまっていると思う話がちらほら見られる。ぼく自身もそうだなぁと思うことが、ちらほらと見られたものだ。

そんな坂口さんは、双極性障害とも向き合った上で、自分らしい生き方をしている。作家や建築家、音楽家、画家など様々な肩書きがあり、自分でも器用と評している。しかし、誰かと比較するでもなく純粋に自分がやりたいことをやっていった結果、そうなっただけで自分の"弱さ"についても認めている。例えば、コンスタントに仕事できないとか、責任があることは苦手なことだ。

双極性障害はいつ躁になるかという不安や、その後に来る鬱の落差への恐怖がある。だから、コンスタントに仕事ができなくなるのではとか、責任があることを任されて放棄してしまったらという不安が付き纏う。

そうならないように自分のできる範囲で、できることをする坂口さん。もちろん周りの助けがあってのことだろうけれど、人を惹きつける魅力を持った人なんだということが、読み進めることで伝わってくる。

希死念慮のある人の駆け込み寺的な「いのっちの電話」の話も興味深い。無料で基本24時間対応していることにまず驚く。ボランティアである。色々な悩みを抱えた人の話を聴く。だれにも愛情を持って接している。音楽もそうだが、「声」でのコミュニケーションの大切さを説いている。

会社という組織には所属していないので、責任は取りたくないとは言え自分のことはしっかりしている。

規律がないと、気分の波ですべてが乱れることを自覚しているのだろう。毎日、文章と絵は自分でノルマを設定したり、早寝早起きで生活のリズムを整えている。

文字を綴り、絵を描いたり、手芸などをしたり手を使うことも重要視している。作品作りや料理などはそこに、段取りなどを含めるので脳を使っていて、疲れて休めるということもあるのだろう。

金銭面にも疎いようで、きっちりと商売として考えているしたたかな面も垣間見える。

読後は、やはりまとまらない人だなというのは伝わってくる。でもそこには、ネガティブなものはほとんど見えない。

双極性障害だからと言って読み始めたけれど、そうではない人にもきっとなにか伝わるはずだ。

誰もが同じ様には生きられないわけだけれども、双極性障害だからと可能性を狭めてはいけない。双極性障害のせいにしないで自分なりの生き方を模索したいとと思わせてくれるし、新しいことにチャレンジしたくなる。そして、まとまらないようで、実はまとまってるのかもしれない。「まとまらない人」はそんな本だった。

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