D&D2024年版 DMGの中身
こちらは、10月2日に配信された「2024 Dungeon Master's Guide | Everything You Need to Know | D&D」の内容を日本語でまとめたものです。必要な解説も中に交えて説明するので、初心者も読みやすいです。
事前知識
経験者の皆さんは御存知かもしれませんが、この記事を初めて読んだ初心者には「DMG」という見慣れない単語が突然現れたと思います。
DMGとは「ダンジョン・マスターズ・ガイド」の略で、D&Dの過去版から続く3つのルールブックの一つです。DM=ダンジョン・マスター=進行役(GM)なので、「進行役のための手引書」です。
厳密には必須のルールブックではない
ゲームを遊ぶためのルールは「プレイヤーズ・ハンドブック(PHB)」にありますが、このDMGはシナリオを自作したり、長編の公式シナリオに含まれるマジックアイテムなどを参照するために使われます。
結局長編シナリオを遊ぶ場合は買わないと行けないですが、初心者DMが無理をして手を出す代物ではない……………というのが2014年までのDMGのです。
2024年からはそもそも初心者DMがプレイヤーを集めるための情報や、そもそも進行を行うためのアドバイスなど、文字通りこの書籍だけでDMをチャレンジできる内容になっています。
以下本文です!
DMの頼れる友人
この新しいダンジョンマスターズガイドは、2014年に発行された前作へのフィードバックを基に改訂を行い、当時の予算や人員の都合で実現できなかった内容を盛り込んだものだ。
本書の中心的な考え方の一つは、ダンジョンマスターにとって「頼れる友人」となるべきであり、コンテンツの作成やゲームの進行において欠かせない存在と感じられるようにすることである。
本書は情報が見つけやすく、直感的に利用できるよう構成が見直され、ページ数も増加している。
新しい要素として、5つの短いサンプル冒険、完全なキャンペーン設定、設定用語集、新章「拠点(Bastion)」が追加されている。
魔法アイテムの新しいアートが多数追加され、ポーション・オヴ・インヴィジビリティ(透明化ポーション)は実際に空の瓶に見え、ポーション・オヴ・ピュジリスト(格闘家のポーション)は缶詰のほうれん草に似ている等、ユーモアも含まれている。
*ほうれん草の缶詰の元ネタは「ポパイ(Popeye)」というほうれん草を食べるとパワーアップする船乗りのカートゥーンアニメのことです。ピュジリスト=格闘家なので、ほうれん草を食べて筋肉を強化する意味が含まれています。
冒険(アドベンチャー)の作成
「冒険の作成」という章では、ダンジョンマスターが冒険を作成するためのアドバイスが提供されている。商業的なコンテンツ作成を作る時に気をつける段組みや構成の話とは異なり、個人でのゲーム運営を念頭に置いている。
アドバイスを読み切ったあと、5つの短い冒険(シナリオ)を具体的に提示し、マップを使ってどのように自分の冒険を作成・準備できるかを示す。サンプル冒険はシンプルでありながら、必要な情報が全て詰まっているため、初心者でも遊びやすくなっている。
個人でシナリオを作る際には、物語のメモや使用するマップやモンスターのデータだけを持っている場合が多いため、商業では使えない個人の運営を想定した実用的なアドバイスが組み込まれている。
サンプルシナリオはアドバイザーと共に作成され、ダンジョンマスターが使いたくなる、または真似たくなるような内容を目指している。
収録シナリオとは関係ない汎用的な新しいマップが多数追加され、自由に使えるツールボックスとしても機能している。
各レベル帯(1, 5, 11, 17)のためのフックや、シナリオ作成のためのアドバイスが多く盛り込まれている。
サンプルシナリオは「森に異変がある!解決しよう!」から「妖精の晩餐会で主催者に祝福をもらうよう説得せよ」まで、様々な内容が含まれている。
グレイホーク
「キャンペーン設定」(世界観・背景世界)の項目も強化され、初心者のダンジョンマスターがすぐにキャンペーンを作成しなくても良いよう、キャンペーンの章は本書の後半に移動された。
初心者DMは初手からキャンペーン運用ができることを期待されていない。プレイヤーとの関係やキャラクター作成、パーティーの編成など、ゲーム運営に必要な基本的な知識を学んだ後に、キャンペーン作成に取り組めるように後半へ移動した。
また、今回初めて完全なキャンペーン設定が収録されており、50周年を迎えたD&Dを祝う意味でも、「グレイホーク」が採用された。
グレイホークはダンジョンズ&ドラゴンズの最初の公式キャンペーン設定で、多くの英雄や敵キャラクターがここから生まれた。初めてのDMが触れる世界観が「初めてのD&Dのキャンペーン設定」というエモさも含んでいる。
グレイホークは自由度が高く、ダンジョンマスターが自分なりにアレンジできるキャンペーン設定である。
2024年版のグレイホークも自由度を重視し、読者が自分で肉付けできるよう詳細は曖昧にされている。
グレイホークの主要なテーマや大規模な対立には、アイウーズ(半悪魔の悪人)やティアマット(邪悪なドラゴンの女王)などがある。
グレイホークのポスターマップが付属しており、片面には荒野、もう片面には都市が描かれている。
グレイホークの都市はキャンペーン拠点として機能し、冒険を展開する起点となる。
都市周辺のダンジョンや森林に潜む脅威についても詳しく解説されており、ダンジョンマスターが自由に冒険を作り上げられる。
グレイホークは過去版から愛されている設定で情報も豊富だ、初心者が初めても、まるで公式シナリオのような重厚さをもたせることができる。
『恐怖の墓所』や『ツォジカンスの失われた洞窟』などの有名な冒険もグレイホークに起源を持つ。
ダンジョンズ&ドラゴンズの多くの伝承がここに由来しているため、グレイホークはD&Dの遺伝子に深く刻まれている。
プレイヤーズハンドブックの呪文やモンスターマニュアルのモンスターにも、グレイホークに由来するものが数多く含まれている。
設定用語集(Lore Glossary)
本書には2つの付録があり、本書には2つの付録があり、1つはマップ、もう1つがこの「設定用語集」である。
「設定用語集」は、ダンジョンズ&ドラゴンズで最も有名な場所や人物、物質をアルファベット順にリスト化している。
用語集は、すべてのプレイヤーが共有すべき知識を提供し、特定の場所や人物について迅速に参照できるようになっている。
収録されている例として、「オルクス」「モルンカナン」「ロルス」「デーモンウェブ・ピッツ」「バルダーズ・ゲート」などがある。
過去の版で登場した設定も収録されており、第4版のレイヴンクイーンや初版のアサーラックなども含まれている。
経験者は知っているかもしれない情報を、初心者もわかりやすいようにまとめた。
拠点
4つ目の新しい要素として、「拠点(Bastion=バスチオン)の章」がある。去年の旧One D&Dのプレイテストで発表された拠点のルールを見た方は、少しだけその内容を垣間見たかもれしないが、それはほんの一部に過ぎない。
フィードバックをもとにいくつかの改善や追加を行い、さらに楽しめる内容に仕上げた。また、アートも大量に盛り込んでワクワクする章へと昇華させた。
拠点はオプションであり、すべての卓・シナリオに適しているわけではない。冒険者グループが拠点を持ちたい場合には素晴らしいフックとなるが、移動が多い冒険には適さない場合もある。
初期のD&Dにも「拠点」を築くルールは存在していたが、高レベルになるまでアクセスできなかった。今回のダンジョンマスターズガイドでは、キャラクターがレベル5から拠点を構築できる。
拠点は、冒険の中断を意味せず、プレイヤーが拠点を管理し、維持する仕組みとなっている。「拠点ターン」というルールが導入され、プレイヤーが不在でも拠点は何かを作り続ける。
拠点は、安全な家であり、資源を提供する場所でもある。例えば、製作命令や収穫命令を出すことで、アイテムや資源を得ることができる。
拠点同士を結合して「ウーバーバスチオン(複合の拠点)」にすることも可能であり、守備隊の共有などの利点がある。
拠点システムは、キャラクターが何のために戦うのかというテーマを具現化し、感情的な重みをゲームに追加する要素となる。冒険に出かけていても「守りたい場所がある」というRPに役立つ。
プレイヤーは、拠点内でイベントを発生させ、その結果を確認することで、ダンジョンマスターの視点を少し体験することができる。
拠点システムは、プレイが中断された際にも活用できるミニゲーム的な要素を持つ。
他のダンジョンマスターズガイドの要素とも連携しており、グレイホークのキャンペーン設定では拠点を設置する場所が紹介されている。
マジックアイテム
2024年版のDMGでは膨大な財宝セクションが収録されており、魔法アイテムが大幅に増補されている。
2014年版では一般的な魔法アイテムが少なかったため、今回の版ではそれを補うためにいくつかを追加し、50周年を祝うためのアイテムも収録されている。例として、D&Dカートゥーンアニメのキャラクターが使用するアイテムが含まれている。
新たなマジックアイテムとして汎用的になった「フレイムタン」(例フレイムタン・グレートクラブ等)や「スレイングの矢弾」など、様々なバリエーションが追加された。
エベロンやスペルジャマーのような高技術レベルの世界にも対応するアイテムが収録されており、レーザー銃の弾薬も作成できる。
レアアイテムやヴェリーレアアイテムの価格設定がより明確になり、魔法アイテムの製作ルールも改善されている。
プレイヤーは、自分のアイテムを作成する際に、ダンジョンマスターの許可を得る必要があるが、その行程は非常に魅力的な体験となる。
マジックアイテムの製作
魔法のアイテムの製作はプレイヤーズハンドブックにも収録されているが、簡単なポーションや巻物に限られている。
ダンジョンマスターズガイドでは、より多様で幅広い種類のアイテムを作成できるルールが提供されている。
アート
ダンジョンマスターズガイドのカバーアートには、ウォーデュークやヴェンジャー(Venger)など、ダンジョンマスターが演じる悪役(ヴィラン)が描かれている。
これはダンジョンマスターがモンスターや悪役を演じる重要性を強調しており、表紙が英雄的なキャラクターを描くプレイヤーズハンドブックとの対比がなされている。
ダンジョンマスターズガイドは、悪役やモンスターだけでなく、世界全体を描く役割も持っており、アートに特に力を入れている。
ダンジョンズ&ドラゴンズにおける多元宇宙(マルチバース)はすべての世界を包含するテーマであり、プレイヤーが作り出す世界もその一部として受け入れられる。
多元宇宙に関する章では、ダンジョンズ&ドラゴンズの世界や次元、探検すべき場所が詳しく解説されており、ダンジョンマスターは自由にキャンペーンに適した世界を選べる。
トラッキングシート
最後に、2024年版のダンジョンマスターズガイドには「トラッキングシート」という新しい道具が追加されている。
これらのシートは、NPCや拠点、キャンペーン中に登場する魔法アイテムなど、重要な情報を記録するために使えるもので、ダンジョンマスターがゲームを円滑に進めるのに役立つ。シートはきれいで洗練されたデザインで提供され、ダウンロードして印刷できるようにもなる予定だ。
さらに追加されたセッションプランナーシートでは、次回のセッションで起こるイベントやキャラクターに関するメモを取ることができ、キャンペーンの進行状況を追跡するシートも含まれている。
シートにはベビーモンスターのアートもあり、可愛らしさが加わっている。
これらのシートは2024年版のダンジョンマスターズガイドの最も魅力的で実用的な部分の一つであり、設定用語集やポスターマップと共に一番役立つ道具である。
1章「基本」
第1章「基本」では、主にダンジョンマスター初心者やダンジョンマスターの役割に興味を持つ人向けに基本的な知識が提供されている。
プレイヤーを集める方法や、ゲームの最初の一歩を踏み出すためのアドバイスが記載されている。
2章「進行」
第2章では、ゲームを運営するための具体的な方法やプレイヤー全員が楽しめるようにするためのアドバイスが詳しく解説されている。
シナリオを進めるだけでなく、誰が遊んでいるのかを意識し、場の全員が楽しむことを重視した内容もある。
伏線の出し方や「全てDMの思い通りだった」という感覚をプレイヤーに与えるための方法も紹介されている。
新米ダンジョンマスターだけでなく、経験豊富なダンジョンマスターにも役立つ内容が満載。
「戦闘の進行」セクションでは、イニシアチブのロールやグリッド上での位置を把握する方法など、基本的な戦闘の進行方法が説明されている。
「社交の進行」「探索の進行」のセクションが新たに追加され、これらは戦闘よりもダンジョンマスターとプレイヤー間の対話に依存しているため、簡潔に説明されている。
「探索の進行」では、長い旅を物語として計画し、各段階での障害を考慮する新しいアプローチが提案されている。
3章「DMの道具箱」
第3章は「変わり者」である。ゲームの進行に関するアドバイスを一通り終えた後、自分自身で冒険やキャンペーンを作成する前に、さまざまな事柄に触れる必要がある。
罠や毒、攻城兵器の仕組み、NPCの作成など、ゲームで頻繁に出てくるが、通常の流れに直接関連しない要素が多数含まれている。2014年版のダンジョンマスターズガイドでも扱われていたが、情報が散在していた。
例えば、呪いに関する情報や新しい危険要因(グリーンスライム、イエローモールド、ファイアボール・ファンガスなど)について詳しく説明されている。
隕石の落下や雪崩など、災害のダメージの規模についても網羅されている。
さいご
本書の構成は、基本的な要素から始まり、より応用的なアドバイスに進み、冒険やキャンペーン作成の方法を説明した後、財宝や拠点といった「ご褒美」について触れる流れになっている。
2014年版のダンジョンマスターズガイドは便利なアドバイスがあったが、情報が散在しており扱いにくかった。2024年版ではこれが改善され、より明確で使いやすい構成となっている。
ダンジョンマスターの役割について最初の章から明確に解説され、友人とゲームを楽しむ方法やプレイヤーとの対話の仕方も紹介されている。
2014年版では限られたリソースで制作されたが、今回の改訂版では10年分の情報を基に、ユーザー体験が改善されている。