D&D2024 キャンペーン(長期卓)
こちらは、10月25日に配信された「Campaigns | 2024 Dungeon Master's Guide | D&D」の内容を日本語でまとめたものです。必要な解説も中に交えて説明するので、初心者も読みやすいです。
長期プレイとD&Dの関係性
ここで紹介されている「キャンペーン」とは、長期シナリオをプレイするというよりかは、PLとそのキャラたちのために専用の長編シナリオを「宛書」
で作ることです。
そのため、プレイヤーが何を遊びたいのか、どういう雰囲気の卓がほしいのか、長さはどれぐらいか等……DMが考えないと行けないことがけっこう多く、初心者が手軽に手を出せるものではないです。それでもD&Dの「華」ではあるので、慣れてきた人にはぜひとも挑戦してほしいです。
こうした宛書シナリオは配信で実際に回していますので、興味あるかたはぜひ見てあげてください!
以下本文です!
「キャンペーンの構築」の章では、複数の冒険を一つのキャンペーン(長期卓)にまとめる方法が説明されている。これは、個々の冒険を長期的にどうつなげていくかを考えさせる内容だ。ダンジョン・マスターズ・ガイドの第5章では、楽しく深みのあるキャンペーンを作るための手順をステップバイステップで教えてくれる。
まず、キャンペーンの基本的な骨組みを持つことが大事だ。
以下のように進める:
どんなスタイルのキャンペーンにするか、プレイヤーと話し合う。
プレイヤーの希望(ハイファンタジー、ホラーなど)を聞き、自分のアイデアと融合させる。
「キャンペーンの基本的な前提は何か?」や「どんな対立が物語を駆動するか?」を考える。
この視点で考えると、敵やキャラクターたちの関与が見えてくる。前提をしっかり考え、対立の構造やテーマ、雰囲気をイメージすることが重要だ。
主要な対立やキャンペーンのテーマ、雰囲気が決まったら、プレイヤーたちをどう物語に引き込むかを計画する。
考えるべきことは以下の通り:
プレイヤーたちの期待やキャラクターの行動を考える。
キャラクターたちがどのように物語に引き込まれていくかの導入計画する。
キャンペーンが進むにつれて、キャラクターの動機は変わり、物語が予想外の方向に進むことがある。
そのため、最初の段階で重要なのは「キャラクターたちをどう物語に引き込むか」を考えることだ。その後、冒険の流れを計画し、例えば「キャラクターがどのようにキャンペーンの個々のシナリオに遭遇するのか」や「どのイベントが他のイベントにつながるか」を決める。ただし、あまり遠くまで計画しすぎる必要はなく、予測外のことが起こることも想定しておくことが大切だ。
プレイヤーから着想を得て冒険の流れが調整されるのが理想的だ。良いダンジョンマスターなら、プレイヤーの行動に影響されて「これをこう展開させよう」と判断できる。私自身は、2、3個先の冒険について考えるのが好きだ。ただし、遠い未来の計画は曖昧になることが多い。物事は常に変わり得るからだ。
キャンペーンを終わらせる時期や方法について考える必要もある。すべてのキャンペーンが永遠に続くわけではなく、短いものや何年も続くものがある。たとえばホラーテーマのキャンペーンでは、6ヶ月も続けば飽きが来るかもしれないので、それに合わせて計画し、X回のセッションで物語を締めくくることが重要だ。
また、ダンジョンマスターズガイドでは「キャンペーン資料(ジャーナル)」の概念も紹介している。ノートを整理して情報を管理する方法として、以下のような追跡シートを導入している:
セッション追跡シート:次のセッションで重要視すべきことを事前に書き出す。
ダンジョン・マスター用追跡シート:プレイヤーキャラクターの情報(動機、性格、家族、持ち物)を整理し追跡する。プレイヤーが特に楽しんでいる活動や、持っている魔法アイテムなども記録できる。
キャンペーンの対立を考える際には、3つの対立を用意しておくと良い。プレイヤーがどの対立に関心を持つかわからないため、対立を切り替えることで、プレイヤーに「この世界は多面的で、さまざまなことが同時に進行している」と感じさせることができる。
この方法は、フィクションやテレビ番組でもよく使われている。たとえば『ピーキー・ブラインダーズ』のように、主人公には複数の敵がいて、彼らが出たり入ったりする。これにより物語がリアルに感じられ、キャンペーンにも深みや多様性が加わる。
異なるテーマをキャンペーンに導入する手段としても、複数の対立を活用できる。例えば、
ある対立は迫りくる戦争の危険を描くもの。
別の対立は「人間対自然」や「文明対未開の辺境」といったテーマに関わるもの。
対立の重要度や影響は異なり、長く続くものもあれば、短期間で解決するものもある。たとえば、村とゴブリンボスの対立は数回の冒険で解決するかもしれないが、ホブゴブリン将軍との対立は、キャンペーン全体にわたる長期のテーマになることもある。
私がキャンペーンを作る際には、悪役を3種類用意することが多い。
1人目は特定のアーク(キャラの成長の物語)に影響を与える悪役、2人目は長期的な影響を持つ大きな存在、そして「第三の黒幕」が常に背後で出来事を操っている設定を好む。
ダンジョンマスターズガイドでは、キャラクターアークも重要な要素として扱われている。
これにより、キャラクターが何を原動力にし、どのように成長するかを考えることができる。
1レベルのバーバリアンやパラディンは、最初から目標や性格を持っているが、キャンペーンが進むにつれて成長し、新たな人物や組織、敵と出会うことで世界観が変わり、次第に新たな目標や願望が生まれる。時には、衝撃的な出来事をきっかけに、性格や属性が変わることさえある。
私が特に好きな展開は、善のNPCが悪に堕ちたり、悪のNPCが最終的に善へと転じるストーリーだ。例えば、『ファースケープ』のスコーピウスのようなキャラクターは、当初は最悪の悪役として描かれるが、最終的にはチームの一員になるという深みがある。
キャンペーンの魅力は、キャラクターたちが単なる型にとどまらず、深みを持つ点にある。これは、単発の冒険とは異なり、キャンペーンだからこそ探求できる要素だ。
また、キャラクターの動機や目標、野心、癖についても考え、それをプレイヤーと協力して設定することで、キャラクターがキャンペーンにしっかりと根付くようにできる。
例えば:
キャラクターが王国の後継者である。
代々受け継がれてきた剣を持っている。
こうした背景要素をしっかり設定することで、キャンペーンにより深い結びつきを持たせることができるんだ。
次に、冒険を考える際に「何がキャラクターを動かすのか」「キャラクターが何に引きつけられるのか」を考えることが重要だ。例えば、以下のような動機付けが考えられる:
キャラクターの背景設定からライバルを登場させる。
後援者が強力な魔法使いで、彼のために冒険を行えば呪文書を共有してもらえる。
こうしたつながりを形成することが、キャンペーンにおいて非常に重要だ。ダンジョンマスターとしても、キャラクターをどう物語に絡ませ、反応を引き出すかを考えるのは、楽しめる要素の一つだ。
2014年版のダンジョンマスターズガイドでも、同様の内容が触れられていたが、今回は情報がよりアクセスしやすく、使いやすいように再編成されている。また、キャンペーンの特定のテーマやジャンル、雰囲気に結びついた対立も紹介されており、具体的な例も提供されている。
例えば、以下のような「対立」の具体例がある:
「顔無き王」ジュイブレクスはスライムやウーズのデーモンロードで、アビスからアンダーダーク(地下世界)に滲み出てくる。このデーモンロードとその手下を倒すため、地下に住む人々がキャラクターたちに助けを求める。これは超自然的なホラー要素を含んだ対立だ。
吸血鬼たちが死霊術の学校を開き、悪しきネクロマンサーたちが新鮮な死体を求めて集まる。吸血鬼ハンターの団体がキャラクターたちに助けを求めてくる。
ホラーキャンペーンだけでなく、冒険活劇スタイルのキャンペーンにも適した対立例がある。例えば:
「遺産の争奪戦」では、キャラクターが亡くなった親族から魔法のアイテムを相続し、その親族の敵がそのアイテムを狙ってくる。
「目覚めた深海の怪物」では、深海に眠っていた巨大な恐怖が目覚め、サフアグンやメロウ、ドラゴンタートルの手下が海上の船を襲う。キャラクターたちはこれに対抗して艦隊や私掠船を守る冒険に巻き込まれる。
さらに、自分でキャンペーンを作らなくても、公開されているキャンペーンを利用するのも完全に真っ当な方法だ。私たちもいくつかのキャンペーンを出版しているし、サードパーティ製のものもある。それらを自分のキャンペーンとしてアレンジして使うことも問題ないんだ。
キャンペーンの始め方に関するアドバイスの後半では、「セッション0」の重要性についても触れている。セッション0では、プレイヤーと一緒にキャラクターを作成し、バランスの取れたパーティーを作るための話し合いを行う。ここで、以下のようなキャラクター同士のつながりを考えるフックを決める:
二人は兄妹である
同じ町に住む共通の後援者がいる
次に、最初の冒険の設定を考える際、「エピソード形式」か「連続形式」のどちらにするかを選ぶ。
エピソード形式:それぞれのセッションに明確な始まりと終わりがある
連続形式:1つのストーリーが続いていくスタイルで、セッション終了は必ずしもそのシナリオの終了ではない。
さらに、プレイヤーたちを物語に引き込むために、繰り返し登場する要素を導入する方法もある。たとえば、以下のような要素が考えられる:
彼らに拠点を与える
信頼できる友人や「この世界は守る価値がある」と言ってくれるNPCを登場させ、頼れる状況を作る
魅力的な悪役を設定し、戦い続けたいと思わせる
番外エピソードの重要性
長期間のキャンペーンには、時折「番外編(Break Episode)」を挟むことが有効だ。例えば、水着回などのキャラクターたちが一日中ビーチでくつろぐエピソードを用意して、物語に変化を加え、新鮮さを保つことができる。
ダンジョン・マスターズ・ガイドにもでも「番外編」の意味や、その力について説明している。また、以下のようにキャンペーンに区切りや変わった要素を挿入することもできる:
カーニバル・サーカスに行くセッション
ショッピングをするためだけでのセッション
プレイヤーが自分の拠点で何が起きているかを話すセッション
これらは物語に新たな味わいを加える絶好のチャンスだ。お気に入りの一つは、「バッグ・オヴ・ディヴァウアリング」がパーティを食べ、その中にある別次元の空間に送り込むというものだ。その空間はD&D初版のような過酷な世界で、すべてがキャラクターを殺そうとする場所だ。たとえば、激しい雨や悪天候などが脅威となる。外の世界には何の影響も与えず、一回限りの奇妙な冒険を提供することがポイントだ。
私がよく取り入れるのは「祝日エピソード」だ。ホラーキャンペーンではないのに、次の週はハロウィンの回にしたり、感謝祭の回にしたりして、プレイヤーが「今回はちょっと変わったセッションになる」と知った状態で楽しむことができる。
今回の書籍で追加した最も重要な要素の一つは、キャンペーン設定だ。これまでのダンジョンマスターズガイドでは、自分でキャンペーンを作るためのアドバイスや、既存のキャンペーンを自分のニーズに合わせて再利用する方法はあったが、実際の設定は含まれていなかった。今回は、具体的なキャンペーン設定を提供しいる。
提供されているキャンペーン設定は「グレイホーク」で、ファンタジーの要素が詰まった最高の世界地図と都市マップが用意されている。名前を変えて自分のものにするのもよし、そのまま使うことも可能だ。
「ウィザーズ・オブ・ザ・コースト」が公開しているキャンペーン設定を知らない場合は、このダンジョンマスターズガイドにそれらを簡単に紹介した表も含まれている。たとえば、「プレンスケープ」と「スペルジャマー」はどちらも多元宇宙をテーマにしているが、それぞれ異なる雰囲気を持っている。
スペルジャマー:多元宇宙の端を探索し、遠くへ旅する感覚
シギル:宇宙の中心にいるような感覚、ロンドンのダウンタウンのような雰囲気
「レイヴンロフト」は、「冒険者たちが呪われた領域、「戦慄の領域」に引き込まれ、邪悪な領主に支配された世界から脱出する方法を探さなければならない」というものだ。レイヴンロフトの特徴として、霧が物語の流れを変える最適な装置として機能する。霧が立ち上がり、パーティーを物質界からシャドウフェルの戦慄の領域に引き込む。この仕組みは、ワンショットや大きな物語の転換点として非常に適している。
*レイヴンロフトのシナリオはこちらで配信でもプレイしてます!
レイヴンロフトのもう一つの魅力は、単一の設定ではなく、「小さな設定の集合体」であることだ。異なる戦慄の領域ごとに異なる冒険が展開される。たとえば、ある領域は小さな幽霊屋敷だけかもしれないし、別の領域はずっと大きく、脱出が非常に困難なものもある。
ベテランダンジョンマスター向けの要素
キャンペーンの章には、新しいダンジョンマスター向けの情報が豊富だが、ベテランのダンジョンマスターにも役立つ要素が含まれている。
たとえば、
特定のハンドアウトを再利用する方法
すぐ使えるキャンペーン設定の案
セッション0のヒントや対立、導入の紹介(実際は経験関係なく有益な上方)
さらに、この書籍にはキャンペーンの終わり方に関するアドバイスも含まれている。キャンペーンの終わりは非常に難しいが、いくつかの状況が考えられる:
計画通りに終わる場合
予想外に終わる場合(例:プレイヤーが引っ越して予定より早く物語をまとめる必要が出てくる)
どのダンジョンマスターも経験に関係なく、キャンペーンの終わりに直面する。これが計画的か、強制的かに関わらず、その時点でどのように終わらせるかを考えることが重要なんだ。
この書籍でも、キャンペーンの終わりについて話している。いつものスタイルで、確実に役立つ、試行錯誤の結果得られたアドバイスだけを提供しようとしているんだ。でも、その中でも特に重要なアドバイスの一つは、意外と忘れられがちなんだけど、プレイヤーたちも意見を持つべきだということ。キャンペーンをまとめる際やその計画を立てる際には、プレイヤーを巻き込むのがいい。というのも、理想的にはプレイヤーたちが自分のキャラクターに強い愛着を持っているからだ。キャラクターの物語が終わる前にキャンペーンが打ち切られてしまうのは、彼らも望まないことだろう。
プレイヤーに「キャンペーンが終わる前に、キャラクターが達成したいことは何かあるか?」と聞くことが大事だ。
DMとして、その要望をすべてプレイヤーに事前に話すわけではなく、それを実現できるかどうかを考える。
私はいつも、キャンペーンの最後にプレイヤーたちにモノローグを与えて、「20年後、君のキャラクターはどうなったのか?」を語ってもらうんだ。そうすると、みんなが順番にダンジョンマスターの役割を少しずつ引き受けることができる。
もう一つのアプローチとして、DMが疲れ切った場合、キャンペーンを誰か別の人に引き継ぐ選択肢もある。例えば、プレイヤーたちに「このキャンペーンを引き継いで、何か楽しいことをやってみないか?」と提案することもできる。それもまた一つの可能性だ。
個人的に誇りに思っているキャンペーンとして、『D&D in the Castle』でダンジョンマスターをする機会があって、すごく誇りに思っている経験がある。私はタイムトラベルものが好きで、次のような設定を使った。
物質界の表面10フィートがシャドウフェルになった世界で、プレイヤーはノーム製の機械仕掛けの歩く装置に乗り渡り歩く。
その間、知覚判定や捜査判定を繰り返し行い、3日後に過去に戻って同じ場所に戻る。
自分たちに発見されないために、以前に行った知覚判定の難易度を超えなければならないことにプレイヤーが気づいた瞬間、「これだ、やったぞ」と感じた。
別の版でもタイムトラベルのシナリオをやったことがあって、そのときはプレイヤーが自分自身と出会い、それぞれが二重に存在するキャラクターを操作していたんだ。タイムトラベルではなくても、キャンペーン全体で「これだ」と感じる瞬間が何度もあったよ。
ライブ配信「Dice, Camera, Action」をやっていたときも、プレイヤーたちを面白い形で挑発し、キャラクターを恐怖を感じる状況に置く工夫をしていた。それは、ホラーテーマのキャンペーンにとって重要なことだったんだ。このゲームは最初、レイヴンロフトをテーマに始まったが、シーズンごとにトーンや設定を変えることができるほど長く続いた。
最初に怖れていたのは、プレイヤーたちが恐怖を感じるよりも笑ってしまうんじゃないかということだった。
しかし、シリアスな状況でも自然とおかしなことが起こる中で、恐怖がにじみ出る瞬間を作ることができたと感じている。
3年続いたキャンペーンの後、感じる感情や充実感は本当に言葉では表現できない。これは、ドラマの監督のようなものだ。
キャンペーンは自分の赤ちゃんのように育て、プレイヤーたちも深く関わっていく。
みんなが満足する形で終わらせたいし、それが楽しい経験であってほしい。
この体験に匹敵するものはあまりない。自分が形作りながらも、時にはその方向に驚かされることがある。これは大きなアート作品を作るようなもので、最終的には自分の手を超えたものになっていくんだ。
だから、ダンジョンマスターをやってみよう。ダンジョンマスターは最高だよ。