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D&D2024 宇宙観(コスモロジー)

こちらは、11月8日に配信された「D&D Cosmology | 2024 Dungeon Master's Guide | D&D」の内容を日本語でまとめたものです。必要な解説も中に交えて説明するので、初心者も読みやすいです。

いろんなものの元ネタ

今回の話ではD&Dの宇宙観の話がでてきます。冒険者が良く冒険するであろういわゆる「地球」に相当する物質界以外にも、地獄や天国などの様々な世界が存在します。これを次元界と呼びます。

魔法がある世界なので、門をくぐり抜けたり、転移したい、神隠しにあっちゃったりと他の次元界へ行くことはできます。いくつかの次元界は呪文や能力の元ネタになっていて、これを知っていると「進研ゼミで見たやつだ!」みたいな感覚を味わう事ができます!

一般的に冒険に全部を使うことは稀だけど、必要なときに情報を引き出すためのネタ集や読み物としてはお勧めです。

以下本文です!


宇宙観の章は、この本に取り掛かる際に最初に書き始めた部分なんだ。他の章は既にクリスやレイ・ウィニンガーがいくらか進めていたけれど、最初の課題として「ジェームズ、宇宙観(コスモロジー)の章を担当してくれ」と言われた。割り当てられたページ数は32ページだったが、実際には少し超えてしまった。実はこの本全体のテーマでもあるね。

この章は、2014年版のDMGと比べると、まず第6章になっていて、第2章ではない。すでに多くの人が、情報が少し後ろの方に配置されたことに安心しているようだ。最初から膨大な情報を詰め込むことに抵抗を感じる人もいるかもしれないけれど、この章は冒険で実際に役立つものにしたいと思って書いている。

*旧版との変更点
旧ダンジョン・マスターズ・ガイドでは、宇宙観についての項目が第2章になっていたが、新版では混乱を避けるため奥の方(第6章)に移動されている。

章の序盤には、冒険状況の表があり、冒険の焦点を次元界(プレーン)に当てたい場合に使えるようになっている。特に興味深いのは、各次元界の説明に1〜3段落程度で、その次元界での冒険について書かれている部分だ。これによって「ここは不思議な環境だ」と伝えるだけでなく、「この次元界では哲学が具現化する場所だ」ということも表現している。

  • 次元界の例とテーマ

    • 深き暗闇の幽閉界カルケリ:物理的・心理的・霊的な力や、キャラクターを閉じ込める悪魔的な存在と向き合う冒険が展開されるかもしれない。

    • 永遠の戦場アケロン:終わりなき戦闘の虚無、権威主義的な支配の現実、社会的同調の圧力がテーマとなる。ここでは戦いが日常で、キャラクターは「何のために戦っているのか?」と自問する機会を得る。

この章は、神話的な冒険を語るための場であると同時に、空想にふけるための場でもあるんだ。

この章には、次元界のすべての層の名前も含まれている。これはD&Dの長い伝統の中で確立された知識だが、2014年版のDMGには記載されていなかった。例えば、「氷に閉ざされしアガテュス」というカルケリの最下層の一つがあるが、これは「アーマー・オヴ・アガテュス(氷を纏う呪文)」という呪文の名前の由来になっている。こうした背景がわかると、呪文の存在意義がさらに理解できる。

  • 他の背景例

    • ハダル:死にかけの知性を持つ星で、これも理解すると「ハンガー・オヴ・ハダル」呪文に対する納得が深まる。

    • 次元界のイラスト:例えば九層地獄の溶岩や、立方体形のアケロンなど、次元界の特徴がイラストでよく表現されている。

こうした詳細や背景に触れることは楽しく、ジェフ・グラブが80年代初頭に書いた初版の次元界のマニュアルにまで遡れるんだ。彼の仕事は、例えば『神と半神』で紹介された神々にそれぞれ住まいを与えることに似ている。これらの次元界の層は、様々なパンテオン(神々の体系)や神々の故郷として設定されていたが、第5版のDMにはあまり実用的な視点ではない。しかし、パンテオンを作りたい場合は、次元界ごとに1柱ずつ神を割り当てると簡単にできる。

九層地獄やアビスについてはアスモデウスや各種デーモン・プリンスのような強力な存在がいるため、割り当てを省略しても問題ない。

次に「内方次元界と外方次元界の違い」について疑問を持つ人もいるだろう。内方次元界は、物質界を構成する物理的なものが存在する場所であり、元素の次元界だ。一方で外方次元界は、属性や哲学に結びついており、知的・道徳的・倫理的な側面が物質界の知的生命の基盤になっている。

  • 違いのまとめ

    • 内方次元界:「具体的なもの」の場で、物理的な要素が存在する。

    • 外方次元界:「大いなる思想」の場で、神々の故郷や哲学が反映されている。

内方次元界では、例えば火の次元界が地の次元界と自然に接して「マグマの次元界」が形成されるように、極端な環境が常に待っている。さらに、内方次元界の最も内側には物質界に近い場所もあり、真鍮の都やダオ(土魔人)の偉大な洞窟が存在する。

物質界から概念的に遠ざかるほど、住みにくい環境となり、元素が混じり合わなくなる。例えば、地の次元界の奥深くに行くと、もう空気すら存在しなくなるんだ。

内面的な意味で言えば、内方次元界の最も内側の領域はどこか「家にいるような感じ」がする場所なんだ。例えば、火の元素界は暑いけど、どこか親しみが感じられる。この感覚は、SFで「週ごとに異なる惑星を訪れる」ような設定を思い起こさせる。たとえば、『スター・ウォーズ』に出てくるような砂漠や海の惑星のように、特定の要素だけで構成されている惑星が出てくる。これに似た感じが内方次元界にはあるんだ。

お気に入りの場所の一つとして、「フェイワイルド」と「シャドウフェル」がある。これらは物質界の反映であり、こだまのような存在だ。物質界に対応した場所が存在する。

  • フェイワイルドとシャドウフェルの特徴

    • シャドウフェル:物質界のポータルを通ってシャドウフェルに入ると、同じ場所に似ているが、暗くて不気味な場所に変わる。

    • フェイワイルド:キノコの輪を通ると、崩れた遺跡が美しいフェアリータワーに変わり、輝くクリスタルや優雅な尖塔が並ぶ場所に出る。

「初めの世界」という神話があり、これが物質界の起源とされている。フェイワイルドとシャドウフェルは、この初めの世界が破壊されて物質界が生まれた際に、その残響として生まれたのではないかと考えられているんだ。物質界に存在する様々な場所が、同じフェイワイルドやシャドウフェルに通じているかもしれないという考えもある。D&Dにおいて、影の次元界(シャドウフェル)は、物質界の異なる世界間を移動する手段としても使われてきた歴史があり、こうした「つながり」の感覚がある。

また、フェイワイルドとシャドウフェルはハロウィンの異なる側面に例えることもできる。

  • レイヴンロフト(シャドウフェル):ホラー映画的なハロウィンの一面を表現。

  • フェイワイルド:民話的で、魅力的だが恐ろしい一面もある。たとえば、ハグ(魔女)はフェイワイルドから来る存在。

ちなみにキャンディコーンはあまり好きじゃないけど、その見た目は好きだよ。ハロウィンの対比も気に入っている。ハロウィンは、あの世とこの世の境界が薄くなる時期という考えが起源にある。これは諸聖人の日(All Saints' Day)以前の起源から来ていて、現世と死後の世界の間の境が薄れ、怪しいものが越えてくるかもしれないとされていたんだ。フェイワイルドも、チェンジリング(取り替え子)やフェイ(妖精)が子供をさらったり、他の存在と入れ替えたりする話が多く、その点で『ウィッチライトの彼方へ』が、フェイワイルドとシャドウフェルの表裏一体の関係を強調しているのはとても興味深い。

例えば、ウィッチライトのサーカスは、シャドウフェルのキャラクターによって運営され、彼らが入れ替わりながら進行していく。ウィッチライトには魅力的なキャラクターが多数登場するので、フェイワイルドに興味があるなら、ぜひ深く掘り下げてほしい。

また、次元界特有の出来事についても情報が充実している。たとえば「流血戦争(Blood War)」がある。これはファンタジーでよく見られる「悪が互いに戦い合うため、悪は決して勝てない」というテーマの具体的な表現だ。

  • 流血戦争の概要

    • 登場勢力:九層地獄のデヴィルとアビスのデーモン

    • 戦争の目的:法に基づいた悪(デヴィル)と混沌とした悪(デーモン)のどちらが支配的な悪となるかを巡り、下層次元界を戦場に変えている

    • デヴィルの狙い:魂を求め、契約を結ばせようとする

    • デーモンの狙い:ただ破壊し、混乱と悪を広めようとする

デヴィルは交渉や契約を重視するが、デーモンは単に破壊と混沌を撒き散らす恐ろしい存在だ。子供の頃、なぜデヴィルとデーモンが違うのか疑問に思ったが、今ではホラー映画や本でもこの違いが明確に表現されていることに気づいている。アビス冒険の項目では、アビスがまるで病のように広がっていく様子が描かれている。物質界にアビスへのポータルがあると、その不浄な影響が周囲に広がり、冒険のテーマとして非常に適している。

  • 冒険での使い方

    • 比較的低レベルのキャラクターでも、悪魔的なクリーチャーが物質界に流れ込んだり、普通のクリーチャーが悪魔化するシナリオが可能

    • 血戦を使うことで、多くのデーモンが物質界に侵入するのを防いでいる設定

もともとアヴェルヌス(九層地獄の1階層)は、魂を堕落させるための楽園となるはずだったが、悪魔との果てしない戦争の影響で荒廃した地と化してしまった。

中間次元界(旧DMGでは「その他・狭間」とされている)も存在する。もちろんポータルや鍵、シギルの街もあるけれど、無限階段やオケアノスについての情報も載っているんだ。まだオケアノスは使ったことがないが、無限の海のステュクス河やユグドラシルも含めて、そのアイデアが気に入っている。

  • ユグドラシル(世界樹)

    • 世界樹バーバリアンの原始の道(サブクラス)と関連し、D&Dの伝統的な要素

    • 巨大なトネリコの木で、枝が複数の次元界をつなげている

これらの要素は、キャラクターを一つの場所から別の場所へと導き、次元界同士のつながりを形成する冒険の要素となる。ただの「大車輪」を巡るだけでなく、秘密の裏階段を通って目的の次元界にたどり着くこともできるんだ。

この多元宇宙の構成や、ビジュアルも素晴らしい。アビスのデーモンに絡まる次元界の残骸の描写などは非常に不気味で、蜘蛛が苦手な自分でも、見ているだけでその雰囲気に驚かされる。アビスには45層、47層、66層といったデーモンウェブの層の情報も載っている。

  • アビスと九層地獄の項目

    • 2014年のモンスター・マニュアルから情報を取り入れ、デーモン・プリンスやアーチデヴィルが支配する次元界について詳細に記載

    • ゲームで使わなくても、読むだけで楽しい内容

D&Dの次元界の世界観がここまで詳細に描かれているのは少し驚きだ。初版の『Manual of the Planes』では、ジェフ・グラブが古代の伝承をもとに「何でも起こり得る場所」として次元界を語っていた。初期の書籍では、外方次元界が『ブートヒル』という西部劇RPGや、『ガンマワールド』のようなポストアポカリプス世界の冒険の場となる理由でもあったんだ。

*補足
当時はTRPGの選択肢が少なく、D&Dルールセットを使って中世ファンタジー以外の場所で冒険をするためのアイデアとして設計された。

個人的に一番怖いのは「彼方の領域」だ。そこに通じるポータルが開いたら、絶対に行かないほうがいい。触手が絡み合い、宇宙的な恐怖を感じる異様な場所だからだ。『火嵐峰(ファイアーストームピーク)』で開くポータルは素晴らしい設定で、これはブルース・コーデルの第2版アドベンチャー『火嵐峰の門』へのオマージュでもある。

  • 火嵐峰の門

    • 古代のエルフが山にポータルを建てて様々な次元界にアクセスできるようにしていたが、「彼方の領域」に繋がってしまい、すべてが悪い方向に向かった

    • ダンジョンには「彼方の領域」のエネルギーに影響を受け、変異した恐怖が満ちている

エベロンがここに登場しているのも嬉しい。エベロンの美学がとても楽しいし、アートを見るのも大好きだ。本書のアートディレクターであるケイト・アーウィンは、多くのアーティストをまとめ、素晴らしい作品群を作り上げた。

フェイワイルドの時間の歪み効果もお気に入りだ。フェイワイルドに行って戻ってくると、何年も経っているかもしれないという設定は、キャンペーンに素晴らしいフックを提供する。

  • フェイワイルドの時間の歪み

    • キャンペーンのタイムラインをどれだけ混乱させるかについて、DMがランダムテーブルで調整可能

    • フェイワイルドで数日を過ごして帰ってきたら、何年も経って世界が崩壊していた、という展開もあり得る

    • キャラクターが時間を遡る方法を探し始め、世界を元に戻すための冒険を展開できる

フェイワイルドは、キャラクターが数日過ごした後に、彼らの不在中に世界が終わってしまったことに気づき、どうやってそれを元に戻すかを考えさせるのに適した場所だ。

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