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母の日

嫁さんは母の日を前に、義母とケンカをしている。

おいおい勘弁してくれ。今日仕事から帰ってから、カーネーションを渡しに行かなきゃならないんだ。

この2人はよく似ている。
不平不満や文句が多く、人を許すまでに相当な時間を要する。
だからこじれると周りまで巻き込んで落ち込ませる、台風のような2人。

まぁでも、ケンカ出来るだけ良いじゃないか。生きてなけりゃ会話も出来ない。
どうせまた仲直りして、2人して愚痴の対象を見つけるんだろうなと。

自分の母親はとっくに亡くなっている。
大正の最後の年に産まれた母は、大工で財を築いた(自分から見た)祖父母に大切に、且つ厳格に育てられたお嬢様だった。

WW2に学徒出陣で出兵し、敗戦で退役した父と結ばれると、自分を含む8人の子供(うち2人は乳児の時に病死)を産んでくれた。

祖父が亡くなると転げ落ちるように我が家は困窮を極め、多くの財を手放し、大家族でバラックに移り住んだ。その時期に自分は産まれた。

我が家の旺盛な時期は知り得ないけれども、母を見ればなんとなくわかった。

献身的で気丈、貧乏でも最低限の誇りを持っていたように思う。

心労と献身の末に70歳を迎えることなく亡くなった母とは会話やケンカも出来ないが、兄弟みんな、今日は母を想っているはずである。

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