直木賞作家たちによるアンソロジー「チーズと塩と豆と」角田 光代/井上 荒野/森 絵都/江國 香織~そば粉のガレット
「チーズと塩と豆と」
4人の直木賞作家 角田 光代さん、井上 荒野さん、森 絵都さん、江國 香織さんによるヨーロッパを舞台に食をテーマにした短編集です。
NHK・BSで4人の作家がそれぞれヨーロッパの田舎を旅する番組で小説が書かれドラマ化もされ番組に挿入されたようです。
角田光代さんがスペインのバスク地方、井上荒野さんはイタリア・ピエモンテ、森絵都さんはフランス・ブルターニュ、江國香織さんはポルトガル・アレンテージョを訪ねています。
本を読んだ後このドラマを観たくなりますが、2010年放映とのことで、今は視聴出来る術はないようです。
「チーズと塩と豆と」あらすじ
4つの短編集です。
・「神様の庭」 角田光代
料理人の父に反発し故郷を出る娘が料理を通じ家族の絆に気づく話。
旅先のゲストハウスでふるまった娘の料理が美味しいと評判になり、難民キャンプへの炊き出しをするNGO団体にスカウトされます。
チョリソ入りの豆のスープ、生ハム入りのコロッケ、伊勢エビををカリフラワーとウイキョウのスープに浮かべたもの、塩だらのパセリクリームソース・・・・。
美味しそうなバスク料理が並びます。
気になったのは、娘の作るパスタがイタリア人には評判が悪いと。
スペインとイタリアのパスタって違うの?
単にイタリア人程極めていないから?
とっても気になりました。
・「理由」 井上荒野
意識の戻らない夫のためにミネストローネを作リ続ける妻の話。
ミネストローネは玉葱、セロリ、トマト、2種類のズッキーニ、パプリカ、インゲン豆をほんの少しの塩で味付け。
ミキサーで野菜を潰すのが夫の家の流儀。
イタリアの太陽の光いっぱいで育った野菜で作るスープは魅力的です。
・「プレノワール」 森絵都
生きるための食事しか認めない家に育った青年の話。
フランス、ブルターニュといえばクレープ。
青年の母は甘いクレープが王道でしょっぱいクレープを邪道といって認めません。
どちらも私には美味しいものですなんですが、ね。
・アレンテージョ 江國香織
男性同士の恋愛。愛し合いながらすれ違う二人の晩餐
ポルトガル、アレンテージョ地方の料理は素朴だけどミルク菓子と呼びたいほどみずみずしいヤギのチーズなど素材のそのもの良さが際立っているようです。
オリーブとワインが料理を更に引き立てますね。
「チーズと塩と豆と」感想
4人が実際に訪れたヨーロッパ。
チーズと豆、そして基本の調味料は塩。
タイトルだけでヨーロッパ感が伝わります。
4人とも美味しい物好きそうだから郷土料理の描き方に興味津々でしたが、どの作品も料理の味を想像しながら堪能できました。
それぞれの物語は終わりはなく、ストーリは全く違うのにどこか一貫した筋の太さを感じさせます。
手元にずっと置いておきたい1冊でした。
本の中の美味しい料理
どの作品の料理も美味しそうなのですが、気になったのは森絵都さんの「プレノワール」の中の黒麦のしょっぱいクレープ。
黒麦って一瞬ライ麦かな?と思いましたが、ブルターニュなのでやはりそば粉ですよね。
甘いクレープも美味しいけれど独特な塩気を持つそば粉のガレットをサラダ仕立てにしたらブランチにも良さそうなので再現してみました。
アーティチョークは手に入らなかったので、マッシュルームで代用。
茹でたジャガイモなどでもOKです。
そば粉のガレット レシピ
材料
(6枚分)
そば粉 100g
薄力粉 50g
塩 1g
卵 1個
牛乳 330~350g
サラダ(2人分)
ビーツ 1/4個
好みのレタス 適量
マッシュルーム 2コ
チャービル 適量
ドレッシング
オリーブオイル 大匙1
マスタード 小匙1
白ワインビネガー 小匙1
塩、こしょう 適量
1.そば粉、薄力粉、塩を一緒にふるい、ボウルに入れる。
2.卵を割り入れ、ホイッパーで混ぜ、牛乳を注ぎ入れよく混ぜる。出来れば一晩冷蔵庫で寝かせる。
3.フライパンにオリーブオイル(分量外)を入れ温め、②をレードル1杯分流し入れ、両面カリッと焼く。
4.ドレッシングの材料を混ぜ、皮をむいて薄く切ったビーツを5~10分漬けておく。
5.レタスとチャービルは冷水に漬けパリっとさせ、水気を切る。
6.焼いたガレットにレタス、ビーツ、マッシュルーム、チャービルを置き、ドレッシングをかける。
*ビーツは生のままだと土臭いのでドレッシングに漬けます。茹でた方が柔らかく召し上がれます。
*野菜はお好みで。ハムやベーコン、茹で卵、チーズなど加えてご自由にどうぞ。
*そば粉によって水分の量が変わりますので調節してください。フライパンに入れサーっと広がればOKです。
モチモチした生地が美味しいので、何を合わせても美味しいです。
デザート用にはジャムや生クリームにフルーツを加えたりとサンドイッチの具にようにバリエーションを楽しめます。
まとめ
ヨーロッパの郷土料理って決して派手ではないけれど滋味深い。
そんな料理を思い浮かべながら読むのも楽しいです。
4人の作家の力量を改めて感じる短編集でした。
文庫本は手軽ですが単行本の表紙が素敵です。