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【美少女音楽ゲーム】短編

【日明】
「あーっ! 明日はついにーっ! 我が新生吹奏楽部の命運がかかった県大会かあ〜っ!」
【のあ】
「やめてください日明先輩。窓の外に向かって叫ぶなんて安いドラマみたいです。それに一二三副部長が 凍っています」
【日明】
「ん? ええっ、一二三息してないじゃん! 前日からこんなに緊張してどうすんだよ!」
【一二三】
「す、すみません......私......」
【のあ】
「日明先輩のせいで一二三副部長の思考回路・現在停止中」
【一二三】
「皆さん、すみません......」
【日明】
「どうした? またここからウジウジ虫が出て来てんぞ」
【一二三】
「私達、どうしても県大会に勝たなければいけないんでしょうか」
【日明】
「はあ? お前何言ってんだよ。負けたら廃部でいいって元部員達に啖呵切ったのお前だろ」
【のあ】
「一部誤りあり。始めに言い争いのきっかけを作ったのは日明先輩です」
【一二三】
「あの時は、こんなに頑張ってる皆さんの事を悪く言われたのが許せなくて、咄嗟に。でも勝つとか負けるとかじゃない気がして」
【日明】
「なんだよそれ。なんで今そんな風に、一番頑張ってきたお前がテンション下げるんだよ」
【のあ】
「副部長は皆と演奏するのが嫌になったんですか」
【一二三】
「そうじゃないよ! むしろ全然逆。私、皆さんに会うまで、学校は怒られずにトランペットを思い切り吹ける場所だと思ってたんです」
【日明】
「そうじゃないのか?」
【一二三】
「そうだけど、トランペットは大好きだけど、今はそれ以上に、皆さんに会えるのが、一緒に演奏するのが楽しいんです。私達が戦う相手も同じなんじゃって思ったら、争うのは違う気がして......」
【日明】
「私はやるからには絶対負けたくないね。......でも、そうだな。まあ......少しわかる」
【のあ】
「......同意します。すべてはバランスで、一人で演奏するのも、大勢で演奏するのも変わらないと思っていました。でも......不格好で荒削りで、てんでバラバラなのに、あなた方と演るのはなぜか酷く楽しい」
【日明】
「私も、始めはただの暇つぶしだったのに、今じゃこんなだ。正直さ、大学行っても走れないし、もう学校なんていいやって思ってた。お前らに会わなかったら、辞めてたかもしんない」
【一二三】
「私......自分のことなんて誰も必要じゃないと思ってました。でも皆さんっていう仲間ができて、初めてここに 居てもいいんだって思えたんです。だから誰かのそう言う場所を壊したくない」
【日明】
「壊れないんじゃねえの?」
【一二三】
「え?」
【日明】
「自分達に置き換えてみろ。負けたらまあ廃部だな。でもそれで私がフルート初心者に戻るか? 勝ち負けってのはただの結果で、今まで皆で積み上げてきたものは何にも変わらない。例え吹奏楽を辞めても、 私が肺活量でフルート吹けたみたいに、無駄になることなんて何もない。それを私に教えてくれたのは一 二三、お前だろ」
【のあ】
「勝っても負けても、あなた方と演奏し続けたい。......楽しいから。それに、時間には限りがある。日明先輩が留年する確率は現在68%ですが、万が一卒業が決まった場合、このメンバーで演奏できるのはあと半年足らずです」
【日明】
「万が一ってのはやめろ」
【一二三】
「二人とも......」
【日明】
「ほら。部長も頷いてんだろ。一二三が元気出してくれなきゃ、張り合いないんだよ」
【一二三】
「ありがとうございます。私、とにかく頑張らなきゃって思ってました。でも違ったんですね」
【のあ】
「音を楽しめない人間の音楽は、音楽ではありません」
【日明】
「私達はチームだ。ミスったら誰かが助けりゃいい。初出場ってのは1度きりだからな」
【一二三】
「はい! せいいっぱい楽しみます。部長。指揮、よろしくお願いします」

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