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LEGO 部品を利用した回転型倒立振子のレシピを公開!(第 1 回:製作編)

YouTube 「かーたー」チャンネル

以下の動画は,SCI22 でのプレゼン資料(音声入り)です

以下の動画は,デモ用の振り上げ安定化制御です.


1. はじめに

 工作に自信がない人でも,比較的,簡単???に「回転型倒立振子」を製作するできることを目指して,本記事を書きます.

 なお,モノによっては,発注してから届くまで1ヶ月半程度を要します.これは,輸入品であったり,受注生産であったりするためです.届くまで,気長にお待ち下さい.

# 2022/05/29:公開
# 2022/05/30:LEGO 部品表の画像を追加
# 2022/05/30:LEGO 部品表の PDF ファイルを追加
# 2022/05/30:LEGO 部品表の Excel ファイルを修正


2. 部品の調達

2.1  LEGO 部品の調達

 「回転型倒立振子」の筐体は,LEGO 部品を利用して製作をします.

  • 部品表の Excel ファイルはこちらから入手できます.

  • 部品表の PDF ファイルはこちらから入手できます.

  • EV3 replacement pack3 以外はブリッカーズさんから購入できます.

  • EV3 replacement pack3 はアフレルさんから購入できます.

EV3 replacement pack3 以外の LEGO 部品をブリッカーズさんで購入すると,約 9,000 円(2022/05/30)
アフレルさんから購入可能な EV3 replacement pack3(1,320 円)にはこれらが 2 個ずつ入っている(2022/05/30)

【EV3 replacement pack3 について】
 土台が動かないようにするためのおもりとして,EV3 replacement pack3 を利用しています.
 2022/05/30 現在,アフレルさんに在庫がありますが,在庫がなくなり次第,販売終了です.Amazon などからでもしばらくは購入できるかもしれませんが…
 入手できなかったら,土台に金属製の何か(四角い 9V 電池とか)を両面テープで貼り付けるなどして,土台が動きにくくなるように工夫してください.単なるおもりですので.

EV3 replacement pack3

 ちなみに,私は教育用 LEGO MINDSTORMS EV3 の基本セットと拡張セットを多数,所有しているので,その中から部品を調達しました.

2.2  モータと関連部品の調達

 まずは,調達する部品のリストです.


 それでは,個別に説明します.
 まず,モータについてです.

DFRobot 社のモータ〔Micro Metal Geared motor w/Encoder〕

 エンコーダ付きのギヤード DC モータとしては,DFRobot 社Micro Metal Geared motor w/Encoder を使用しています.ギヤ比(減速比)に応じて 7 種類が用意されています.今回は,アームや振子が軽量であるので,速応性を考慮して 30:1 のモータを使うことにしました.

国内では,DFRobot 社のモータを,スイッチサイエンスさんなどから購入できます.スイッチサイエンスさんの場合,輸入取り寄せの商品なので,納期は1ヶ月半程度だそうです.

【スイッチサイエンスさんから購入する場合のコード番号】
DFROBOT-FIT0481
DFROBOT-FIT0482  DFROBOT-FIT0483
DFROBOT-FIT0484  DFROBOT-FIT0485
DFROBOT-FIT0486  DFROBOT-FIT0487
※ クリックすると,商品ページに飛びます!

私は利用したことがありませんが,米国の会社である Digi-Key さんは,日本語のサイトがあるだけでなく,日本語での電話,メールをサポートしているようで,在庫に応じて即日出荷してもらえるようです.

【Digi-Key さんから購入する場合のメーカー製造番号】
FIT0481
FIT0482  FIT0483  FIT0484
FIT0485  FIT0486  FIT0487
※ クリックすると,商品ページに飛びます!

 DFRobot 社のモータ (Micro Metal Geared motor w/Encoder) は,エンコーダが最初から取り付けられているという,うれしい仕様です.電源が供給されると,エンコーダ基板の緑色の LED が点灯し,おしゃれ???です.磁気式のインクリメンタル型であり,分解能は 7 PPR(パルス / 回転)です.モータのギヤ比 (減速比) は 30:1 なので,4 逓倍でカウントすると,$${ 30 \times 7 \times 4 = }$$ 840 [カウント / 回転] なので,約 $${360/840 = }$$ 0.42 [度 / カウント] となります.

【Pololu 社のモータとの比較】
 DFRobot 社のモータ (Micro Metal Geared motor w/Encoder) は Pololu 社のモータ (Micro Metal Gearmotor) と酷似しています.本家 Pololu 社のモータはギヤ比や定格電圧などの種類が豊富です.種類の一覧はこちらに公開されています.
 Pololu 社のモータ (Micro Metal Gearmotor) は,エンコーダが取り付けられていませんので,オプションのエンコーダ(磁気式,インクリメンタル型)を購入し,自分で半田付けをする必要があります.また,分解能は 6 PPR(パルス / 回転)ですので,DFRobot 社のものより分解能が劣ります.
 価格についてですが,スイッチサイエンスさんで購入すると,DFRobot 社のモータが 1,500 円程度であるのに対し,Pololu 社のモータは 2,700 円程度(これにプラスして,オプションのエンコーダが 1,200 円程度)と少々,お高いです.

Pololu 社のモータ〔Micro Metal Gearmotor〕

 モータ軸の長さを除くと,DFRobot 社のモータは Pololu 社のモータとほぼ同じサイズです.したがって,Pololu 社のモータ用の様々なアクセサリを利用することができます.今回は,Pololu 社のモータブラケットを利用して,モータを LEGO 部品で製作された土台部に結合します.また,Tenka 社の 3mm 軸用アダプタを介して,モータ軸と LEGO 部品で製作されたアーム部を結合します.

Pololu 社のモータブラケット〔2 個入り〕
付属のネジは不使用ですが,六角ナットは使用します

 Pololu 社のモータブラケットは,たとえば,朱雀技研工房ストアさんから購入できます.これは,「ブラケット」が 2 個,M2 の「なべ小ねじ」が 4個,「六角ナット」が 4 個,入っています.

DFRobot 社のモータと LEGO 部品の結合

 本来の使用方法は,「ブラケット」のねじ穴に「六角ナット」をはめ込み,「ブラケット」の反対側から「なべ小ねじ」で締めるというものですが,この実験装置の製作では,異なる使用方法となります.
 「LEGO 部品」と「ブラケット」の穴の間隔は,少しずれています.そこで,「ブラケット」のねじ穴に M2 x 18 の「バインド小ねじ」を通し,反対側に取り付けられた「LEGO 部品」の穴も貫通させます.そして,LEGO 部品側の穴に M2 の「ワッシャー」をはめ込み,M2 の「六角ナット」で締めます.詳しくは,後述します.

ネジ類

M2 x 18 の「バインド小ねじ」や M2 の「ワッシャー」は,大きなホームセンターであれば,売っているかもしれません.ネットで購入するには,たとえば,モノタロウさんの場合,M2 x 18 の「バインド小ねじ」ここから,M2 の「ワッシャー」ここから購入してください.M2 の「六角ナット」は,Pololu 社のモータブラケットに付属しているものを利用します.

Tenka 社の D カット 3mm 軸用アダプタ〔Motor Shaft Adapters,2 個入〕

 モータ軸に LEGO 部品で作られたアームを取り付けるために,Tenka 社の D カット 3mm 軸用アダプタ (Motor Shaft Adapter) を利用します.Motor Shaft Adapters は日本国内では販売していないので,Tenka 社から直接,購入する必要があります.2 個入で 0.99 ドルなので安いのですが,送料が 26.36 ドルですので,余裕をもった個数を購入するのが良いでしょう.ちなみに,私は 30 セット(60 個)も購入しました … 
 さて,このアダプタは Pololu 社のモータ用に製品化されたものなので,D カット3mm 軸に合うよう設計されています.DFRobot 社のモータは Pololu 社のモータと軸の形状は同じなので,このアダプタを利用できます.
 D カットに対応しているので,負荷がかかった状況で使用しても,力をロスすることなく回転させることができます.

2.3  エンコーダと関連部品の調達

まずは,調達する部品のリストです.

 エンコーダ軸に LEGO 部品を取り付けるため,Pololu 社2mm 軸用アダプタを利用することにします.Pololu 社からは「3mm 軸用アダプタ」も販売されていますが,これは,六角軸に対応したものですので,エンコーダに利用することが困難です.
 「2mm 軸用アダプタ」を利用するために,

  • 軸径が 2mm

  • 分解能がある程度高い

  • エンコーダ側のねじ穴の間隔が LEGO 部品の穴の間隔とほぼ同じである

という条件を満足するエンコーダを選定する必要があります.これらの条件を満足するエンコーダをいろいろと探しましたが,最終的に,AUTONICS 社のインクリメンタル型の光学式エンコーダ E20S2-360-3-V-5-R を利用することにしました.価格は 9,160 円です(2022/05/30 現在).

AUTONICS 社のエンコーダ E20S2-360-3-V-5-R

なお,受注生産のようで,購入手続きをしてから届くまで,1 ヶ月半くらいを要します.
 このエンコーダの分解能は,360 PPR(パルス / 回転)です.4 逓倍でカウントすると,$${ 360 \times 4 = }$$ 1,440 [カウント / 回転] なので, $${ 1440/360 = }$$ 0.25 [度 / カウント] となります.振子の角度検出用としては,十分の精度でしょう.

3. 組立図

3.1  振子部の組立図

 振子部の組立図の PDF ファイルは以下から入手できます.
  pendulum.pdf

振子部の組立図

 振子部は非常に単純な構造で,4 個の LEGO 部品で構成されています.
 LEGO なので,振子の長さを変えたり,重さを変えたりすることも容易です.

振子部


3.2  土台部の組立図

 土台部の組立図の PDF ファイルは以下から入手できます.
  body_step1.pdf  body_step2.pdf
  
body_step3.pdf  body_step4.pdf
  
body_step5.pdf  body_step6.pdf


 土台部の組立図において,ステップ 1 からステップ 3 まで(body_step1.pdfbody_step2.pdfbody_step3.pdf)は,指示にしたがって組み立ててください.


土台部の組立図(ステップ 1)
土台部の組立図(ステップ 2)
土台部の組立図(ステップ 3)

 ステップ 3 では,EV3 replacement pack3 に含まれる部品を「おもり」として装着していますが,購入していない場合は,無視してください.


 つづいて,ステップ 4 に進む前に,モータを LEGO 部品と結合します.
 まず,Pololu 社のモータブラケットDFRobot 社のモータをはめ込みます.モータブラケットは向きがありますので,注意をしてください.

Pololu 社のモータブラケットの向き
モータをモータブラケットに装着

つぎに,モータブラケットのねじ穴に,M2 x 18 の「バインド小ねじ」を貫通させます.

モータブラケットに M2 x 18 の「バインド小ねじ」を貫通させる

さらに,LEGO 部品 (デザイン ID:99773)

LEGO 部品(Technic, Liftarm, Modified Triangle Thin 3 x 5 with Short Supports,デザイン ID:99773)

を 2 個,用意し,穴に M2 x 18 の「バインド小ねじ」を貫通させます.

LEGO 部品に「バインド小ねじ」を貫通させる

そして,M2 の「ワッシャー」と M2 の「六角ナット」をはめ込み,M2 x 18 の「バインド小ねじ」を締めます.

「ワッシャー」,「六角ナット」をはめ,「バインド小ねじ」を締める

最後に,Tenka 社の D カット 3mm 軸用アダプタ (Motor Shaft Adapter を,モータ軸に差し込みます.

Tenka 社の D カット 3mm 軸用アダプタをモータ軸に差し込む

 以上でステップ 4 の下準備は終了です.


 ステップ 4 からステップ 6 まで(body_step4.pdfbody_step5.pdfbody_step6.pdf),指示にしたがって組み立ててください.

土台部の組立図(ステップ 4)
土台部の組立図(ステップ 5)
土台部の組立図(ステップ 6)

 以上で土台部が完成です.

土台部


3.3  アーム部の組立図

 アーム部の組立図のPDF ファイルは以下から入手できます.
  arm.pdf


 アーム部を組み立てる前の下準備として,エンコーダを  LEGO 部品と結合します.

 まず,エンコーダ,LEGO 部品 (デザイン ID:99773)M2 x 8 の「なべ子ネジ」2 個M2 の「ワッシャー」2 個を準備します.

LEGO 部品(デザイン ID:99773),なべ小ねじ,ワッシャー

そして,LEGO 部品の穴に「ワッシャー」と「なべ小ねじ」を通し,エンコーダの前面のねじ穴にしっかりと取り付けます.

LEGO 部品(デザイン ID:99773)に「ワッシャー」と「なべ小ねじ」を通し,エンコーダに取り付ける

 つぎに,LEGO 部品 (デザイン ID:99773)

LEGO 部品(デザイン ID:99773)

を 2 個,用意し,エンコーダのコードを LEGO 部品の穴に通します.

エンコーダのコードを LEGO 部品の穴に通す

エンコーダのコードは硬いので,アームを回転させると,バネのような反力を生じてしまいます.そこで,ワイヤーストリッパーで断片的(1 cm くらいごとに)に外皮部分を剥がしてください.

ワイヤーストリッパーで外皮を断片的に剥がす



 つぎに,エンコーダ軸に「2mm 軸用アダプタ」を装着します.
 Pololu 社の「2mm 軸用アダプタ」の製品紹介を見ると,説明文に

(原文)
Instructions
1. Fit the adapter onto the metal output shaft of one of the four gearmotors linked above. You will need to push quite hard; be careful not to damage the gearmotor.
2. Slide the adapter into a LEGO wheel of your choice.

(日本語訳)
<略>
かなり強く押し込む必要がありますが,ギヤモータを傷つけないように注意してください.
<略>

https://www.pololu.com/product/1001

とあります.かなりどころか,元のままでは,どんなにがんばっても,モータ軸の先端しか「2mm 軸用アダプタ」の穴に入りません「2mm 軸用アダプタ」の穴が狭すぎるのです.

「2mm 軸用アダプタ」の穴が狭いので,モータ軸を奥まで挿し込めない

したがって,「2mm 軸用アダプタ」の穴を少しだけ拡げる必要があります.少しだけです.拡げすぎるとガバガバになってしまい,エンコーダ軸が空転してしまいます.つまり,「2mm 軸用アダプタ」の少しだけ拡げられた穴にエンコーダ軸を挿し込み,摩擦で固定しなければなりません.
## 心配なら,接着剤を使ってみても良いかも.

「2mm の精密ドライバー」の先端を「2mm 軸用アダプタ」の穴に挿し込み,左右に何回か回転させることで,穴を少しだけ拡げる

 「2mm 軸用アダプタ」の穴を少しだけ拡げるために,穴に「2mm の精密ドライバー」の先端をまっすぐに挿し込み,左右に何回か回転させます.このとき,先端は奥に入れすぎないようにしてください.穴を拡げすぎてガバガバになってしまいますので.『少し削っては挿し込めるかを確認』し,慎重に作業を進めてください.

「2mm 軸用アダプタ」の穴を少しだけ拡げると,エンコーダ軸の根本付近まで挿し込める

なお,「2mm 軸用アダプタ」の根本が LEGO 部品 (デザイン ID:99773) に接触していないようにしてください.

「2mm 軸用アダプタ」の根本が LEGO 部品 (デザイン ID:99773) に接触しないようにする



 以上の下準備が終了したら,arm.pdf にしたがって,アーム部を完成させてください.

アーム部の組立図
アーム部


3.4  完成図

 以上でそれぞれの部分ができあがったので,合体させてください.

完成図


4. おわりに

 今回の記事では,LEGO 部品と汎用のモータ,エンコーダを利用して,「回転型倒立振子」を製作する手順を説明しました.

 次回は,MinSeg.com 社から販売されている車輪型倒立振子のキットに含まれている,マイコン MinSegShield M2V5 との接続について説明する予定です.

 さて,いつになることやら…

(終わり)

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