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リハ職だけでなく、介護職や看護師さんも、
病棟や在宅にて、患者・利用者さんのADL(日常生活動作)を介助を行うことがあると思います。

そんな時、皆さんはどんなことを意識して動作を介助していますか?

誰の、そして何のための介助技術なんでしょうか?

そしてあなたが、もし患者さん利用者さんの立場だったら、どんな介助を受けたいと思うでしょうか?

一緒に「良い動作介助」って何か?を考えていきましょう。


結論を先に書いておきますが、

僕の考える良い介助とは、

いずれ介助がなくても自分の力で再度動けるように、
患者さんの持っている力を少しずつ取り戻していけるような介助

が「良い介助」だと考えています。


1.動作の介助の考え方を変える:介助量が多いのは患者さんのせいなの?

若い頃の僕はといえば、移乗動作などでは

①まずは無事に!(当然)
転ばせることなく、車椅子や椅子、ベッドなどに移れるか?ですね。
ただ、転ばせてはいけない、床に落ちないようにしないといけない事ばかりを気にしていて、
移乗動作の間の、患者さんの怖さや痛みなど患者さん側に経った配慮は全然できていませんでした。

②少しでも速く!(僕が大変だから…)

「せーの、はいっ!」くらいの感じで勢いよくやっていたこともあったと思います。介助量の多い方だと力も要ります(介助方法が下手すぎて)。
こちらも疲れますし、ふらついても危ないので、いかに自分が介助する時間を短くするか?を重要視していたように思います。

という2つのことを意識していたと思います。

僕は体格も大きく、力もそこそこある方なのでこれまで患者さんを転倒、転落をさせてしまうことは幸いにもありませんでした。
でも自分が小柄であったり力がなかったら、転倒につながったんじゃないか?と思うことも何度か経験しました。


介助量が多くなる方は、どのような方でしょうか?
・体重が重い
・筋力が低下している
・意識障害や高次脳機能障害などで、動作の協力が得られない
・運動麻痺などで身体が思い通り動かない
 →立つ時に膝が曲がってしまったり、膝が伸びて足が前に滑ってしまうなど
・拒否が強い

こういった要因が影響していると思います。


体を動かすには筋力が必要です。
立ち上がる際にも、多くの筋肉を同時にコントロールしながら、自身の体の重さに打ち勝ち体を移動をすることができます。

つまり、
「筋力 > 自分の体重」
となって初めて、体は動きます。
(上の筋力は、1つの筋肉の力ではなく、その動作の瞬間に働く複数の筋肉の力の総和、というイメージです)

なので、廃用によって筋萎縮が起きてしまったり、骨折などの怪我や脳卒中などで上手く力が入れられなくなると、結果として筋力は落ちることになります。その場合、体重は変わらなくても自分の体を動かすのに必要な力は不足し、これまで通りスムーズに動くことが難しくなります。


高次脳機能障害といっても、様々な症状があります。

左側の視界を認識できない左半側空間無視があれば、左側にあるベッドや車椅子などへ乗り移る際に、どこへ移動するかが認識できないかもしれません。

また感覚性の失語があれば、介助者側の声かけが理解できず、何をするか分からないまま急に身体を動かされているのかもしれません。

注意障害があると、聴覚には問題がなくても何か他のことに気を取られて介助者の声かけが届かなかったり、声かけが届いて動作をしようとしても、途中で急に中断したり、手すりから手を離し急に目についたものに手を伸ばそうとしたりして転びそうになってしまうこともあります。

様々な要因で、患者さんは上手く動けないでいます。
上に書いたような「患者さん側の理由」で、僕は介助が大変なんだ、と思っていました。


でも…本当にそうなんでしょうか?

僕が新人の頃、教育担当だった先輩は、小柄で細身の女性のセラピストでした。

その先輩は、僕が力づくで、全力で移乗を介助している患者さんを、スッと移乗を誘導しました。


「………ん?今何した?」「どうやってやったの?」

と思い、先輩に質問しました。すると先輩は、

あの方は、右の足の裏が着いてる感じが分かると、安心して自分からおじぎをしてくれるよ。

あとおじぎの時も、急にこちらが背中を押して前に倒そうとすると後ろにのけぞって嫌がるよね。だから前から介助する時に、自分の肩を相手の胸に当てて、少しおじぎして肩にもたれてくれるのを待ってあげると良いよ。

右脚は足の裏が着いていれば、自分である程度力を入れてくれるし、両手は力が入るから、手すりを持ってもらっておじぎをして、お尻が浮きそうになったら「右脚に力を入れて」って伝えると上手く立てるよ。

方向転換してベッドに移る時も、立った後に一旦止まった方が良いよ。
立つのが安定しないまま、急に体が回転されたら怖いよね?

立って、落ち着いた時に「車椅子に移りますよ」って伝えれば、ご自分でお尻の向き変えてくれるから。

と教えてくれました。

新人時代の僕にはすごく衝撃で。

一つの動作介助のやり取りで、これだけのことを考えているのか!!!とただ先輩すげーわ、と思ったわけです。

そりゃ僕の力づくでえいやっ!!という感じの移乗だと、何をされるか分からないし、動きは速いし、相手の心の準備はできないし、ただただ怖いよね…そりゃ全力で嫌がりますよね…とものすごく反省をした記憶があります。


介助量が多いのは、介助が大変なのは患者さん側の要因だけではなく、僕ら介助者側の要因も大きいんです。

そしてこれは、僕ら介助者側の意識改革と、トレーニングによって改善、解決できる問題だと思っています。


この記事では、そんなことが伝わったら嬉しいなと思っています😊


では、動作を介助するにあたって、まず動作ってそもそもどうやって生まれるの?
について考えていきましょう。


2.動作はどのように生まれる?動作を介助する前に動作について考えよう

動作は、大きく以下の3つの段階を経て生まれます。

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①状況把握

ヒトは全身のセンサーを使って、自分の状況と周囲の状況を把握、認識しています。
皮膚や筋肉、関節からの体性感覚の情報は、右手はどこにあるか、右膝はどのくらい曲がっているのか?どこか地面やベッドに接しているか?など、

今自分がどんな姿勢を取っているか、自分の体のパーツはどこにあるのか?

を教えてくれています。

また視覚や聴覚などの情報によって、車椅子はどこにどのくらいの距離であるのか?周囲に人がいるのか?歩いているときに車や人が近づいているのか?など

自分の周囲の環境には何があるのか?状況はどうなっているのか?

と自分自身(内部)と周囲の環境・状況(外部)の情報を認識しています。


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