"Entrée" behind-the-scenes⑨クリミアのリンゴ売り

—”僕”と彼女は、彼女の故郷へ訪れる。

彼女が育った町は内戦で荒廃し、家は吹き曝しになっていた。
ラッパの音が町中に鳴り響き、彼女が幼い頃大切にしていたブリキ人形は風に揺られ踊っているように見えた。
なんてぎこちないダンスなんだろう。

愛おしさと哀しみの共時性は、しょっぱい水になる。
彼女は、故郷を守ることを決意する。

”僕”は、その彼女の想いを受け、プロポーズする。
その瞬間だけ、町の霧が晴れたような気がした。


“彼女”の出自が明らかになる一曲。
クリミアという単語においてあからさまなように、細やかな設定は歌詞やストーリー、また現実の社会問題からご想像してみて下さい。

音楽的には、PASSION PITやKLAXSONS、MIKAの影響を強く受けました。
そして、欠かせないのが故・上田現さんからの影響。
※上田現さんとは、日本のロックバンドレピッシュの元メンバーで、日本のスカ/レゲエロックを押し上げたとともに、元ちとせ「ワダツミの木」の提供など、ソロ活動においても独特の寓話的世界を展開された、僕が最も尊敬するアーティストの一人。

寓話や神話などを通して、自分の想いを作品に落とし込んでいくのは、上田現さんから学び取った。時には、まったくナンセンスだったり、受け手にその解釈を委ねる作品作りも現さんからだ。

僕は、直接的、直情的に作品をつくることも多い人間だが、『Entrée』においてはどうしても自分が創作した寓話的世界観の中で、今の自分を表現したかった。

その結晶のような曲が、
「クリミアのリンゴ売り」。

上田現さんの魂も、入っていると僕は思っています。


BRIAN SHINSEKAI - クリミアのリンゴ売り(1st Album『Entrée』収録)

https://open.spotify.com/track/6smCy13PJ3OSoCGrLZ1zwq?si=v-Z9f8v9RFOOb2XxSW5yMA

2018年、ビクターよりメジャーデビュー。シンガーソングライター/トラックメイカー。愛猫カールをこよなく愛す。ベイスターズと北欧料理に励まされるピアノマン。◆新曲「三角形のミュージック」MV→https://youtu.be/hKb500zLQCE