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うねる大地 ぐりんぐりん(建築物語6)

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福岡県の植物園、ぐりんぐりん。


名前の通り、大地がめくりあがり、うねったような建築です。

グリーン(緑)と、ぐりんぐりんとした形をとった施設名ですね。市営の施設ですが、その直接的なネーミングセンスが抜群だな、と個人的には思っています。


場所は福岡県福岡市、博多駅から北へ電車とバスを乗り継いで30分ほどにあります。アイランドシティという、埋め立て地の新興住宅街の公園の中にあります。

設計は、伊東豊雄さん。仙台メディアテークや台中国家歌劇院など、コクk内外問わず、その挑戦的な構造表現で数々の建築賞を得た、日本を代表する建築家です。ちなみに、これまた日本を代表する建築家の安藤忠雄さんと同じくの1941年生まれです。

ぐりんぐりんは、2005年竣工の鉄筋コンクリート造の建築です。構造デザイナーは、佐々木睦郎さん。

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構造のイメージは、模型が多くを物語っています。シェル構造という、ヨーンウッツォンのシドニーオペラハウス等にみられる構造形式です。


シェルというだけに、貝殻に見られる、部材が薄くても力強い構造なのです。より単純なドーム屋根の構造より複雑な形のため、構造解析のレベルが高く、複雑な計算になるみたいですよ。

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屋根・壁の境がなく、すべて緑に覆われています。うねりでできた開口は、そのままガラスがはめ込まれていて、非常にシンプルな構成で、うねった構造体がダイレクトに表現された見せ方になっています。


施工は、竹中工務店。こちらも日本を代表するゼネコンです。竹中工務店は、設計デザインにも業界的にかなりの定評がありまして、様々な賞をもらっている、デザインに力を注いでいる企業です。

その理念から、デザインを理解する姿勢を持っているので、しばしば建築家が御用達にしているようです。(妹島和代さんとか)


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屋根の下は、そのうねりを感じられる空間となっています。植物園ですので、大開口のスカイ・ライトが印象的で、内部空間の最も重要な要素の一つとなっています。


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この建築は、床がありません。通常の建物は床がありますので、基礎、床、壁、天井が一体となっています。

この建築は植物園で、地面に様々な植物が植えられているので、床はそのままの地面となっています。耐久性のある、巨大なビニルハウスみたいなものですね。



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屋根の上は、高低差のあるひとつなぎのデッキで回遊できるようになっています。高いところから360度、様々な視点で景色を眺めることができ、楽しいです。

しかし、手すりのデザインが、割とよく見られる太めのスチールパイプで、少々残念でした。もっとデザインをしてほしかったです。工事費がなかったか、工期がなかったか。。


ただ、その構造そのままの表現がコンセプトですので、他の要素はありふれたデザインでよかった、と僕は解釈しています。


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この屋上の緑化は、とても薄い、軽量な植栽基盤で芝や低木が植えられています。また、軒先は樋の形状にコンクリートがデザインされています。理にかなった屋根上のデザインですね。

しかし、屋根を全面的に緑化すると、設計者としては雨もりが心配です。しかもこんなうねった構造ですので。でも安心してください、これは植物園ですので、雨が漏っても人は困らず(?)、植物の糧となるだけなのです。


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この建築は、呼吸をしています。つまり、内部に常に新鮮空気を、機械によらない換気で送っています。そのかなめはジャロジーです。

こんな大きなジャロジーを見たことないので、特注だと考えれます。開閉は、機械がついたハンドルがみられるので、半オートマティックの機構を持っていると推察されます。



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うねりは様々な陰影を作り出して、奥行き感を生み出しています。

このうねりを実現するために、当時ではまだ珍しかった3DCADで作図し、型枠(コンクリートを形作るための木枠)を割り付けていったそうです。

職人さんの腕が存分に発揮された建築なのですね。



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すごい立断面図ですね~!!

おそらくですけど、設計の段階で、3DDADを使っていたのでしょうね。でないと正確な断面図が描けないし、そもそもXYZの座標が定まらない。

今でこそBIMが流行っていますけど、BIM黎明期にもなっていなかったこの時期では、設計にそそぐ熱量がはんぱないと想像できますね。(僕はBIMを使ったことがないので、あくまでモウソウです)


だいぶ前になりますが、伊東さんが、学内の講演会で言ってましたね。その時はまだぐりんぐりんはできていませんでした。

「平面・立面・断面で表しきれない建築をつくりたい」

まさに、このぐりんぐりんは2次元では表現しきれない建築なのですね。ですから、意外性のある空間がこの建築にはあります。


雑誌で初めて見た時の印象と、実際訪れた時の印象はかなり違います。思ったよりコンパクトで、うねりが空間に変化を常に生み出していまして、とても楽しい空間体験だなと思いました。


ぱなおとぱなこ


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