論2.音高の喉への影響について

Q.A=444Hz(C=528Hz)の響きの世界には、癒しとかポジティブな力があり、またDNAの修復力もあるとか。ピアノを使う場合などは、実現できないわけですが、こういうダブルスタンダードでトレーニングすると、喉の具合が悪くなる可能性はあるのでしょうか?

「音高の喉への影響について」

○考えすぎないように

私の結論としては、ポップスの歌唱においては、関係ないと思います。喉への影響も気にする範囲にないと思います。常識的なところで言えることは、今まで歌ったり弾いたりした曲を半音くらい上げてやると新鮮、かつ心地よく感じるでしょうということです。でも続けて上げていくと、どこかで無理がくるでしょう。そういう問題に置き換えられると思います。

 これまでも絶対音感や平均律(と純正律)、オーケストラの基準音の変化(高くなっている)、テンポ、音楽療法や音楽心理学で似た事例を扱ってきました。今回も考えすぎることによって歌に悪影響が出ないように、というのが実践的なアドバイスです。以下はその根拠です。

○高音化による昂揚感

 音楽の持つ昂揚感の要素には、ピッチ(音の高さ)が関わっていることは言うまでもありません。歌唱が話声域よりも総じて高くなるのは、その顕著な例と言えます。サビには多く高音が使われています。また、くり返しや2番、3番で転調して半音、または何度か高くする、あるいは部分的にアドリブを入れるなども、そのためです。

 現在、オーケストラの基準音(オーボエのA)は442~444くらいではないかと思います。以前はA=440と言われており、古い演奏では438、436などもあったそうですから、444Hzは、特に驚くべきピッチではありません。

 クラシック曲は楽器の制限もあり、原調で演奏されるので、基本のピッチは大きな問題となります。あまりに大きな変化があると楽器を加工しなくてはいけないかもしれませんし、歌い手も、最高音がギリギリの人や絶対音感をもとに固定度で歌っている人は調整に無理が出るかもしれません。しかし、現実にはそこまで心配することはないかと思います。

○絶対値ではありえない

 平均律でつくられている今の音楽では、半音高さが異なると高低とも次の音になります。声も楽器も純音ではないので、440 Hzの基準音でも440 Hzだけを出しているのではありません。高低も強弱も揺れています(ピッチビブラートと強弱ビブラート)。まして歌い手の声であれば、かなりぶれていることも少なくありません。そこで、その音と半音高い音(半音低い音)、のどちらに近いかで判断されます。結果として、すぐれた歌い手や演奏家は、厳密に正しいピッチでなく心地よい動かし方をしています。

ちなみに絶対音感といっても、多くの場合は440 Hzがあてられるのでなく、AフラットとAシャープの間の辺りのAの音がわかるくらいです(その他の音も同様)。

440 Hzと444 Hzを比べて、444 Hzが高いとわかるくらいですから、およそ444分の4、100分1くらいの最小の感覚値が閾値となります。つまり、私としては、444 Hz(A)とか528 Hz(C)という絶対値の意味を認められないということです(これは似たケースで「テンポ=110」のよさというのを私が認めていないことと同じです)。

 ポピュラーなら転調できるケースで、半音あげて演奏すれば昂揚感は高まるということでしょうか。

○スケールで決まる

 もう一つの理由は、音楽はスケールを基にできています。クラシックは調律まで決めますが、ポピュラーでも平均律のスケールを使っていますから、一つの音がどの高さということよりも、ドレミ…(1オクターブ12半音)の音の組み合わせでイメージが決まります。もちろん、平均律が不快ということで、純正律で演奏している人もいます。が、それもスケールです。

 どんどん高くしていけばよいということにならないのは、人間が使ってきた声や耳での捉え方という人類のDNAがあるためでしょう。ただし、このDNAについては、人類とか民族などとかでは、簡単に述べられません。DNAに特定の音の高さやテンポが反応するというのは、それぞれに比較すればもっとも大きな値の出る音高やテンポは出てくることでしょう。しかし、それを単音でなく基準音にした音楽となると、スケールの問題も入り、関係がなくなります。

 曲は全体の音の組み立てによってできていますから、ピッチとテンポを上げたら高まるというのは、かなり安易な手段の一つでしかありません。

○聞く能力での制限

 人間の声域には個人的にも制限があります。そこで高さの効果をあげるために、低い音が効果的に使われているのです。つまり、高低は相対的に捉えられているものです。

 人間の声は4~5オクターブ出るのですが、ある程度の完成度をもつのは2オクターブくらいなので、歌唱曲の大半は1~2オクターブでつくられています。

 シンセサイザーの開発以降、ピアノよりも広い音域でたくさんの音を重ねられるようになりました。しかし、それほどオーケストラの編成や曲づくりが変わったとは思えません。また、20世紀に出尽くした感のある実験音楽の試みやアバンギャルドなものからは、絵画などと異なり、前衛にいかず、戻っていったように思います。

 人間が心地よく聞ける音楽としてはDNAもですが、生まれて育ってきた環境も外せません。特に歌唱は人間の声ですから、およそ話声域のマックス内(この場合、感情を入れた声ということで)の2オクターブ内に留まります。

○育った環境とピッチ、テンポ

 参考として付言すると、テンポは呼吸や心臓音、鼓動、脈拍と関係していると言われます。ただ、必ず♪=60とか♪=80で歩くロボットのような人はいないので、絶対的な数値は出ないと思います。若い人がロックを、年配の人がワルツなどを好むのも、こうした生理的なことの例として出されますが、育った時代にもよると思います。今の私たちにとって3時間や5時間の映画、芝居などが苦行と感じられるとしたら、それも現代の生活や環境のせいです。

 映画も芝居もドラマも、アナウンサーの話すテンポも速くなりました。音楽のテンポも早くなり、ピッチも上がりました。音は振動ですから特定の音が人体に何らかのプラスの働きをすることはあるかもしれませんが、それは曲や歌の問題とは別のことと思います。ある音楽がその人を元気にしたり癒したりすることは、現実としてあります。しかし、それはどんなものを聴いて、どう生きてきたかにもよることも大きいでしょう。

 (参考)ちなみに440 Hzの1オクターブ高い音は880 Hz、1オクターブ低い音は220 Hzです。

 ラが440 Hzなら半音高いラのシャープ(シのフラット)は440×[2の12乗根(1.059…)]、466 Hzくらいです。(この高さでは、次の音と26 Hzくらいの差です)ドは523.3 Hzとなります。

Q.お腹がきつくて歌えなくなるということがあります。横のほうが痛くなるのを中から鍛えたいのですが、走りこんだらいいのでしょうか。

A.ストレートにいえば、息を吐くことで変えていきましょう。やっているとき以外に痛くなったり歌っているときに痛くなったりするなら、意識的にお腹を動かさなければいけないとか、お腹から声を出そうとか思って固まってしまっていませんか。体のトレーニングは、歌の場合、高いところが出にくくなったり、喉を使ったりするので、分けて考えたほうがいいですね。

Q.ヴォイトレと歌の結びつきは、どう考えたらよいでしょうか。

A.歌に関しては、基礎のトレーニングをしていくと、どこかで変わるということでよいでしょう。リラックスした感じで脱力して歌いましょう。発声に力を入れるというのではなく、体を使ってみようとか、呼吸と結びつけてみようとか意識してやってみましょう。

Q.歌のための体づくりとは

A.歌に必要なものは、すごくたくさんあるものです。音域も広いので、発声で慣れていないようなやり方をとると、変なところで力が入ってしまいます。スポーツ選手のように強い体を持たないと、歌えないと考えるのも一つの手です。実際に歌うときには、そんなに体を強く使うわけではありません。体で支えて息と声をコントロールするほうが大事です。

Q.体を鍛えると筋肉がついてよくないのですが

A.体を鍛えるのはいいことです。筋トレでも走ることでも何でもよい。体力が落ちたら集中力が落ちてしまうからです。実際には歌うときに力で持っていこうとよくないから、そこは切り替えてください。歌っていたときにそんなふうにならずに普通に歌えばいいのですが。

Q.トレーニングしたように歌えない

A.歌とトレーニングの間にはいろいろな段階があります。それを一つずつ自分で踏まえていきましょう。歌っているときには、何も考えないで気持ちよく歌ったほうがいいでしょう。

フレーズの練習をするときに体を使ってと考えすぎないように、練習したときにどこか痛くなるようなら、やりすぎです。偏りがでるのは、やむをえません。スポーツでも、筋力トレーニングで体が痛くなるのはいい。そのときは試合ができる状態ではないのです。

Q.心と体とどちらが大切ですか

A.簡単にならすトレーニングで、体をほぐしていくほうに使います。目的によって、細かく自分でわけたほうがいいでしょう。どちらかになってしまうのも危険です。トレーニングと同じような状態で、一つにして全部何もやってしまおうとすると、いろんなことがネックになってしまいます。

Q.たくさんやればよいのでしょうか

A.最初は不安でたくさん量をやりたいと思うのですが、スポーツや楽器に比べると、質のほうがすごく大切になってきます。本当に集中して、声の状態のいいときに、今までになかった感覚で、どのくらい新しいことを感じていくのかでしょう。歌っているし、言葉を出しているというだけでは大して何も変わりません。話声とヴォーカルの声の違うところですね。あまり視野がせまくならないように大らかにやりましょう。

Q.アスリートに学ぶことはどんなことですか。

A.たとえばスポーツ選手と30分くらい立っていてもくらくらしてしまう人と比べてみましょう。筋力トレーニングというのは、この中でもスポーツに長じている方もいるでしょう。そういう人がすでに持っているものは大きいのです。

アスリートとして10年のキャリアのある人とか国体やオリンピックに出たという人に対して、普通の人が2~3年トレーニングやってもかなわないものです。人並に足りないということでなければ、それほどの必要を感じることはないです。歌や声そのものではなくて、舞台をやっていくために、人前に立って活動を続けられるための最低限必要なものとして腹式呼吸とか歌唱法があります。

Q.しぼって歌っている感覚があるといわれています。きつそうに聞こえるということです。

A.発声については、トレーナーから具体的に改良の指導を受けてください。それに加え多くの場合は、体力とか集中力、テンションの問題になってきます。

Q.本当に初心者なので、声を出すことの時点で何がいいか悪いかわかりません。自分でやってみて歌っているときに気持ちいいときが、力が抜けているときがすごくいいときかと思いますが、どうでしょう。

A.当人が気持ちいいというのは一つの実感でもあるのですが、そこから先は、いろんな目的、価値観、素質によっても違ってきます。ご相談ください。

Q.私は仕事で長時間話すと喉が疲れてしまいます。雑踏の中で話すと声が通りにくくて聞き返されることがあります。

A.今日の状態はいいほうですか。長く話しているとそういうふうになってくるのとは違うのでしょうか。声の使い方と管理の仕方から学んでいきましょう。

Q.ちょっと風邪を引くと、ひっかかっている感じがします。

A.無理をせずに治してからトレーニングしましょう。

Q.コールセンターの仕事をしていています。オペレーターはどういうふうに声でお客さんに接するかということを知りたいのですが。

A.コールセンターには、昔からつきあいがあります。コンピュータでオペレーターの声の分析や声の加工までをしています。相手の感情分析、購買予測まで取り入れられるようになりました。

クレーム処理ができなければビジネスとして成り立たなくなってきています。お金や人材が投資され、よい装置ができていきます。それを相手の反応にあてはめて、どうなのかというのは、私などが指標を出しているわけです。

 コンピュータで変化させられるのです。それを人がどういうふうに聞くのか、どうすれば好ましく聞くのかは、突き詰めていくと、声のアーティックな世界になってきます。

一番大変なクレーム処理が、ビジネスの要です。何がいいのか悪いのかというのは、すべて相手があって、言えることです。声での演出面や舞台での、客とのコミュニケーションでどう成り立っているかというのと似ています。

Q.電話の交換手やオペレーターの研修をやっていただけますか。

A.ヴォイストレーニングというと、歌い手が歌えるようにするのですが。私のところでは、歌えているかではなくて、声で伝わっているか、客から見たときにどう声が感じられるかということです。

 コールセンターでは、大連やインドまでとばして受けているところがあります。そういうところで対応するほど、仕事ということでいうとキャパが大きくなっているのです。

 発音や話し方というのならアナウンサーの先輩やナレーションのプロでもよいでしょう。その方がよいこともあります。

 ただし、声の感覚というのは複雑です。たとえば年配の人なら許されるのに、若い人が同じ喋り方をすると、カチンとくる人もいます。地方によって、相手によって使い分けなければいけないくらい複雑な要因があるのですね。そういうことも踏まえてレッスンを行っています。

Q.いつも教室では声がうまく出なくて歌えません。なぜですか。

A.発音、歌唱、最高音の安定した発声ということになると思いますが、ヴォイストレーニング自体が、制限の中におかれてしまっていることが多いのですね。座って、30分もたてば発声の具合が悪くなるはずです。

30分で教えてくださいという人がきても、30分で先生と生徒という関係を破ることさえ難しいと思うのですね。それが破れないと、いい声は出てこない。

 ヴォイストレーニングで教えているときには、ステージとは別に教室で、特別に起きる問題があるのですね。そこにくる、緊張する、先生とコミュニケーションをとるのに神経を使う、体も自由には動かない。その状態ではいい声というのはあまり出ません。

 ワークショップの演出家はうまくやっています。心身をほぐすことにほとんどの時間をかけている場合が多いですね。

教室という環境のほうが、現実的にはトレーニングの効果に大きな妨げになっていることが多いのです。もっといい声が出せるし、歌の中で出てくるいい声を使わずして、限られた場所において、緊張した関係で、悪い声を取り出して直しているケースがざらです。

先生とも半年くらいするとリラックスできるほど慣れて、いい声がでてくるようになります。それはもともともっていた声で、大した進歩でもないのです。それだけで1年くらいたってしまっている教室が多いというのが実際です。それをヴォイストレーニングや発声の勉強の成果と捉えるのです。それでもいいのですが、私たち日本人が捉える勉強というのは、どうも難があって、心が自由であった環境で、受けられていないようです。そのほうが大きな問題です。ここでもトレーナーに、私がよく問題にしていることです。

Q.公の場でのアナウンスに興味があります。日本語の音声についてうかがえたらと、音声学に興味があります。

A.アナウンスに興味がある方は多いですね。私も音声の本は書いていて、音声学の専門家とみられます。日本語の音声教育の分野において、いい教材も出てきています。音声の研究や教材が、追いつかないくらいに出てきました。しかし、それは、アナウンサーの世界やナレーターの世界とは、少し異なります。

 日本語の発音では、アナウンサーが一番しっかりと勉強しています。台詞を読むのなら声優さん、ナレーターです。朗読家もレベルがあがってきました。声に気をつかっているのは、朗読の人が多いかもしれません。

Q.介護の仕事をしています。声が聞きづらいと言われます。

A.年配の人は高い声が聞きづらくなってきます。これは耳の仕組みなのためです。耳の聴覚センサーが高いほうからだめになって、低めだけにしか対応できないのです。低い声はクリアに出しにくいので、強めにはっきりと言うのが大切ですね。甲高くすると、どんどん聞き取りにくくなってしまいます。そういうときは、重要なことだけ何回かくり返すことです。

Q.選挙応援などの声のトレーニングもできますか。

A.場面に応じて対応しています。その状況は詳しくはわからないのですが、演劇の人と同じく、修羅場に近い状況でも大きな声を出せるようにします。日常の中では、そこまでの声を要求されることはほとんどありません。

選挙やスポーツの応援をするとかになると、あるいは、外交官とか、特に海外の人と接する人は声の不足を感じる人が多い。女性でもリーダーやマネージャー役の人がよく来ます。

Q.声は大きくなくてはいけないのですか。

A.声が大きくなったところで本当に伝わるかということになると別です。でも、伝わらない限り、他の問題はどうにもなりません。

マイクを使うといろいろな可能性が広がるのですが、生声は、ある程度徹底してやらないと、強くはなりません。大声から元に戻すというときに、自然にならなくなってしまいます。トレーニング中はそれでいいと思います。そのときに、自然にできなくなってしまうから、元のモクアミになる人も多いのです。

短期に強化するトレーニングなのか、今の力を思う存分使うために調整していくのかというようなことは、わけておいたほうがいいかもしれません。

Q.ヴォイトレの課題とは何ですか。

A.声の問題は多面的なものです。

 ヴォイストレーニングというのを、私が代表できるわけではないので、いろいろな立場でいろいろなアドバイスをしています。ビジネスや日常で難しいのは、相手がどう聞くかということによって、変わっていくことです。

 ヴォイストレーニングということの位置づけは、今よりも応用ができるようにしていくこと。キャパシティとして広くとって、その上でセレクトしていくのです。

 一般の人とヴォーカルとプロの方は、今の器がこのくらいだとしたら、それをできるだけ広げて、もっと大切なことはそこからきちんと選択する、選ぶことです。

Q.ヴォーカルとヴォイトレのよい関係とは、どういうものでしょう。

A.ヴォーカルの考え方も変わりました。もっとも適切な声をきちんと選ぶことでしょうか。選ぶということは他を捨てるのです。声が出るよりも確実に負担が来ないことを優先するようになりました。

声だけが朗々と出るが、何も伝わらないというタイプもいます。それでは、どうすればいいのかわからなくなってしまいます。器を大きくすることが強化ということですが、その器ということも歌の場合は、はっきりしているわけではありません。その人の状況によってずいぶん違うわけですね。

 私は、その人の器の中で調整できることはトレーニングではないと思っています。

 どこかで程度を決めて、あとは作りこめます。

Q.1、2分でプロのような声は出せますか。

A.花王のアジエンス大学というのをJ-WAVEでやりました。声を2分でプロにするということで、実際に素人さんがやったものをプロのナレーションのかわりに使えるところまでやってみました。放映したのですが、プロがやったレベルに聞こえていると思います。

 音響強化はしていなくて、調整をしているだけです。調整しているというのは、この状況とこの状態をよくしているのですが、日本のヴォイストレーニングというのは、まだそのレベルだと思うのです。

 状態づくりしかやっていないのに対し、研究所でやるべきことは条件づくりです。

Q.ヴォイトレは初めてですが、私にもできますか。

A.声の場合は、20歳くらいでも、いろんな声のレベルの人がいる。スポーツでは、こういう体というのはこれだけのことをやっているという目安があります。しかし、言葉や歌の場合は、外からみるだけでは初心者が想定できないのです。

 ヴォイストレーニングに初心者ということであれば、誰かに習いにいくということが初めての経験です。日本人は、日本語の勉強をしていないようでも、しゃべって修正してきています。耳で聞いて修正しています。声もそういうところがあります。

Q.ヴォイトレは、習わないとできないのですか。

A.外国語を一つマスターしているといったら、そこで意識的にヴォイストレーニングの基本のことをほとんどやっているわけです。

 小さいころ、赤ん坊のころに喃語からことばを覚えていくプロセス、これもヴォイストレーニングです。声を出すことも覚えてきたのです。耳で聞いてそれで出しては声で正すという、インすることアウトすること、この程度の問題ですから、一人でもできるともいえます。

Q.ヴォーカルスクールでヴォイトレは身につきますか。

A.私はヴォーカルスクールをいろいろ見ています。けれど、何年経っても声は全然変わっていない人ばかりでしょう。歌はうまくなり、人によってはプロっぽくこなせるようにはなります。しかし、そのためにプロになれないのです。

元の声とトレーニングした声というのは、ほとんど変わっていない。オペラ歌手や声優なら、5年もやっていたら声も変わります。とはいえ、トレーナーによります。トレーナー次第、またそれを受ける人次第です。

Q.声を変えないことは、よくないのですか。

A.声は、変わるほうがいいとはいえません。必要に応じて変わらなくてもいい場合もあります。よくわかるのは、不調の時の問題解決ができるかというところです。アマチュアの人は、よし悪しの波が大きい。声が出るときと出ないときの差が大きいと、使えません。

 トレーニングということなら、今の最高の状態からどれだけオンできるかということでしょう。そういう考え方をしています。

 ところが実際の教室でやられていることというのは、その人の日常に出している声で、緊張した声からリラックスしたて声にするだけです。それでは問題は片付かないでしょう。

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