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平和を信じる希望の光を絶やさないように 〜JVC・加藤真希さん〜

 映画『ブレッドウィナー』では、「世界中のパヴァーナのために」と題し、映画だけでは伝えきれない、今のアフガニスタンの人たち、世界中のパヴァーナのような女の子たち/こどもたち/女性たちのことも、このnoteでお伝えしていきます!

 今回は日本国際ボランティアセンター(以下JVC)でアフガニスタン事業を担当している加藤真希さんにお話を伺いました!

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 JVCさんは、9.11米国同時多発攻撃のあとの2001年12月頃からアフガニスタンでの活動を開始しています。当時はアフガニスタンがアメリカ軍主導の攻撃を受けている状況で、緊急支援として医療関係プロジェクトをスタートさせました。

 それから十数年、診療所を継続して運営してきましたが、その“ハード面”の支援と同時並行で、JVCさんの本来の強みである、「地域の人たちの手で、どう地域を復興させていくか」、そのためのコミュニティづくりという、“ソフト”面でのサポートも徐々に進めてきています。今年4月には、アフガニスタン事務所を独立させ、現地アフガニスタンのNGOとして登録し、現地スタッフが「自分たち自身で独立してやっていく」という意識を一層持ちながら進めているのだそう。取り組みについて、詳しくお聞きしてきました!

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アフガニスタンで現在行なっていらっしゃる、コミュニティ形成や”ソフト面”での事業について教えてください。

 具体的に行なっている事業は大きく2つ、「ピースアクション」と「識字教室」です。

 「ピースアクション」というのは、名前の通り、アフガニスタンの人たちの平和に対する意識を醸成するための取り組みです。武装勢力は紛争状況の中で一般の住民たちからも戦闘員を集めます。特にティーンエイジャーを始めとした若者が多いですね。宗教学校をかたったような場所で、攻撃の訓練を受けさせたり、「正義のための戦闘で死ねば天国に行ける」などといった洗脳をしたりする場合もあります。そうした方向に若者が流れてしまうのを防ぐため、武力以外の手段で、自分たちの力で乗り越えようという意識を育むための対話の場を作っています。

 アフガニスタンの人たちって、結構スピーチをするのが好きなんです。なのでピースアクションでは、即興の詩で自分の平和への想いを唄ったり、「自分はもともと戦闘員だったけど、こういうことがあってやめました」といった経験談や、「武器じゃなくて、こういう解決策もあるよ」といったアイディアなどを、共有しあったりしています。 

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アフガニスタンの人たち同士でやるというのが素敵ですね。

 そうなんです。そこがまさに大事なポイントで、私たち日本人のように、平和な社会で生きている人間が「武器はダメだよ」というのは簡単です。でも、アフガニスタンの人たちは、ソ連侵攻、タリバン政権、外国軍による武力介入、テロリズムなど、何度も何度も戦争のなかを生きてきています。

 そして私たちが事務所を構えるジャララバードという街はナンガルハル県にあるのですが、そこはタリバンのサポートをしているとも言われているパキスタンと国境を分かち、あらゆる武装勢力が行き来している特に危険な地帯なんです。

 私も毎日、現地スタッフに、今日は無事だったか、明日も普通に仕事ができそうか安否確認をするぐらい、死がすぐそばにある厳しい環境です。スタッフたちも、家族を自爆攻撃で亡くしていたり、身内が攻撃の現場に居合わせてしまって今も入院中だったり…そういうことがたくさんあります。

 「自分の身を守るのに、本当に武器は要らないのだろうか?」と問わずにはいられないくらい、日常に紛争があって、憎しみや復讐の気持ちでいっぱいになったり、怖くて逃げ出したくなったりしてもおかしくない状況なのに、それでも「自分たちで平和を作れるはずだ」と信じて、それを広める活動をしているアフガニスタンの人たちのその勇気を本当に尊敬しています。

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 「ピースアクション」という言葉だけだと、「平和は大事ですよね~」とさらっと流れてしまいやすいと思うのですが、前提として、そういう環境にいる人たちが取り組んでいるんだということにも想いを馳せてもらえればうれしいです。

もう一つの「識字教室」のほうはどんな活動をしているのですか?

 こちらは女性たちが主人公です。大人になって学校にはもう行けない人たちが通い、読み書きを学んでいます。若い人もいれば、60歳ぐらいで挑戦している人もいますね。1年ごとのプログラムで、去年始めたばかりなのですが、1年目で約280人がクラスを終えて読み書きができるようになりました。

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 こちらも私自身、いつも想像しようとして想像しきれないのですが…。私たちの日常で文字を使わない、文字を目にしない日って無いですよね。40年50年と文字を読めなかった人が読めるようになった時、どれだけ世界が変わるんだろうって、想像するだけでも鳥肌が立ちますし、実際、「これで子どもに寝る前の読み聞かせをしてあげられる」「足を患って杖の生活で、もう遠くには行けないけど、文字が読めるようになったことで、今度は自分が近所の女性たちに教えてあげられる。世界が広がる」など、とても感動的な声が届いています。

こちらの活動のこだわりや、大変な点はありますか?

 大切にしている点としては、村の女性から先生を選んでいるところです。村の中にも人数は少ないものの、高校を卒業した女性たちがいるので、その人たちに先生になってもらっています。もちろん都市部で探せば、女性でも活躍している人たちはいるのですが、それだとやはり「外部の人」になってしまうんですよね。できるだけ手作りで続けられる形で成り立つように心がけています。

 大変な点と言いますか、この地域特有の点でいうと、私たちが活動しているナンガルハルは、パシュトゥーン人という民族が多い地域で、今もパシュトゥーンワリといういわゆる掟があるような文化圏です。普通に外国人が入っていって何かできるような地域では決してありません。私達の場合、診療所を通じて、10年以上かけて培ってきた現地の人たちとの関係性があるからこそ、今いろんな活動に発展させられているのだと思います。

 男女の物理的・心理的距離感についても厳しくて、パシュトゥーン人同士であっても、基本的に親族以外の男女は別々に活動しますし、例えば仲の良い男性同士でも、「あなたの奥さんはきれいだね」みたいな発言をするのもご法度だそうです。夫婦同士で会うこともありません。外から来た男性も、やはり村の女性たちに会うことはできません。私は3年前に村を訪れて、現状それが現場訪問した最後なのですが、そのときも、一緒に行った日本人男性スタッフと、到着した瞬間、それぞれ男性側・女性側にわかれて視察を行いました。

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(加藤さん、アフガニスタン視察時の写真)

 ちなみに、アフガニスタン全体がそういう感じなわけではなく、地域によって濃淡はあります。首都カブールではブルカ(イスラーム圏で女性が髪や顔を隠すためにまく布)をかぶっていない女性も多いです。

アフガニスタンの国としての教育に対する取り組みは、どういう状況ですか?

 一応憲法によると、義務教育と基礎医療は無料になっているんです。アフガニスタン全体で識字率がものすごく低くて、成人の3~4割とされています。都市部から遠い村には、色々な公共サービスがちゃんと届かないんですよね。それが物流の問題なのか、汚職のような問題なのかは分からないですが…。そのため、複数人で教科書を見ていたり、教科書がまったくなかったりすることも多いです。また、教室の数が足りておらず、屋根がない“教室”も少なくありません。トイレがないことも、特に女子生徒にとって致命的です。今回の映画ともつながると思いますが、女の子たちは特に、中高学年になると、親御さんが学校に通わせなくなってしまうことも多いですね。

加藤さんご自身は、どういうところにお仕事のやりがいを感じるんですか?

 先ほどから話していたように、とにかく現地のアフガニスタンの人たちへのリスペクトの気持ちが大きいです。彼らが絶望してもおかしくない状況にいながら、対話で平和の道を探りたい、学びたいという思いがあるかぎり、それを少しでもサポートしたいと思いますし、これはアフガニスタンに限らず、様々な支援活動の現場において言えると思いますが、そこの人たちが諦めたら終わりだと思うんです。外からの人間がヒーローぶって行っても、何もできないことが多いから…。そこの人たちの希望の芽をつぶさないようにしたいと強く思いますね。

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 アフガニスタンというと、テロや紛争の話しか日本では報道されなくなっています。そうした事件が起きているのは事実ですし、それ以外のことがなかなか知られないのは、ジャーナリストはじめ日本人が行くのが困難な場所だから…というのがあるのですが。武力ではない形で命を張って頑張っている人たちがいること、信じられないような成果も出ていることを伝え続けないといけないし、それができるのはNGOだと思うので、そこに使命感を覚えますね。

 あと、個人的には彼らのユーモアが大好きで、話している途中とか、出てくるレポートとか写真を見て、笑い転げることも結構あるんですよ。なかなか会えない分、仕事だけじゃない現地の同僚たちの日常生活のことや子どもたちのことを教えてもらえるのが一番気に入っていることです。

 私自身「想像するのが難しい」と何度も言ってしまっていますが(笑)、「文字が読めないってどういうことだろう?」「家族を殺されて、それでもなお平和を信じるってどういうことだろう?」と一緒に想像してもらって、彼らの活動を支援してくれる人を、これからも増やして、希望の光を絶やさないようにしたいと思っています。

最後に、映画『ブレッドウィナー』の感想と応援メッセージをいただけますか?

 ブレッドウィナーは、原作の小説を先に読んでいたので内容は知っていましたが、アニメーションになって、カブールの街に住む登場人物たちがしゃべり、動く様子を見るのを楽しみにしていました。

 映像がとにかく美しくて、おとぎ話のファンタジックな世界と、寂寥感ある色使いや陰を感じる表情で描かれる現実との行き来がとても魅力的でした。アニメのパヴァーナたちの表情の奥から、人間の恐怖、絶望、そして希望といった感情が迫ってきます。パヴァーナには小さな弟がいて、家族が置かれている過酷な状況を理解していないその子の屈託ない笑顔と愛くるしい仕草が、逆に涙を誘いました。

 アフガニスタンには、お話や詩などの素晴らしい文化があって、それも興味深い。JVCの活動地でも、「読書文化があるところにこそ発展がある」といったおじいさんの言葉を思い出しました。この映画が、そんな豊かなアフガニスタンと、勇気ある人々のことを知るきっかけになればいいですよね。

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☆JVCのアフガニスタン事業を応援するには☆

https://www.ngo-jvc.net/jp/perticipate/fundraise/

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家族のために、髪を切り"少年"になった、アフガニスタンの11歳の少女・パヴァーナの勇気あふれる物語。少年になって目にした新しい世界とは?家族たちの運命は…? 12/20より恵比寿ガーデンシネマほか全国順次上映!https://child-film.com/breadwinner/

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2019年12月20日からYEBISU GARDEN CINEMAほか、全国で順次劇場上映となる映画『ブレッドウィナー』。本作は、タリバン政権下に生きる11歳の少女・パヴァーナを主人公とした「物語」ですが、原作はアフガニスタン難民の女の子たちに聞いた「実話」をもとに書かれています。 パヴァーナと同じように、苦境にありながらも、力強く生きている女の子たち、子どもたち、女性たちが、アフガニスタンのなかにも、それ以外の国々にもたくさんいます。 映画だけでは伝えきれない、そうした人たちのリアルな姿と、日本から応援するための取り組みを、「世界中のパヴァーナのために」と題して、お伝えしていきます!

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