TOBについて

コクヨ、資本の論理通じず
非上場ぺんてる、義理人情で買収阻止

 文具・家具大手のコクヨによる、ぺんてる敵対的買収は頓挫した。コクヨと言えば売上規模は約3200億円に上り、国内業界トップ3に位置する。一方、プラス社は大手ではあるものの1800億円と、コクヨとの差は小さくない。買収提示額もコクヨが高かったにも関わらず、プラスに軍配が上がった。

 記事によれば、株主構成がぺんてる社のOBや取引先が中心であったため、こうした判断になったらしい。ぺんてるの内情に詳しくないものの、金の強引な力で敵対的な買収をされるくらいならという判断であろうか。いずれにしても、株主にとって目先の金より優先する事情があったのは確かだ。ぺんてるにとってプラスは「ホワイトナイト」なのだろう。
 
 そもそも敵対的買収は、経営陣の合意を必要としない。株主が買収に応じれば成立する、相当に乱暴な手法である。買収された側の経営陣は基本的に総退陣になる上、社員の士気も大きく低下することが想定される。実際に、TOBの成功事例はそう多くはない。成功例として挙げられている、コロワイドの大戸屋買収ですら、門田含みである。

 そもそも、敵対的なものを除いた企業合併等ですら異文化統合は困難を極めるものだ。

 ここ数年、M&Aが盛んだが、私個人はこの潮流には否定的である。足りないものは外から調達すればいいという発想は極めて短期志向かつグローバリズムそのものの考えだ。

 企業は将来にわたって事業を継続するゴーイングコンサーンが前提である。ゴーイングコンサーンという長期的な視座に立つと、敵対的買収という乱暴な手法は悪手に思えてならない。

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