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写ルン族 アーティスト対談【Nozography×香川智彦】

写真のチカラで子どもたちの真の自立を目指すプロジェクト「写ルン族」。ルワンダの子どもたちが撮影した”さくひん”を題材に、アーティストたちがそれぞれの感性によって”作品”を創り上げていきます。

今回は、7月21日からJoint Harajukuで個展「Majestic」を開催するNozographyさんと株式会社Brave EGGs代表・ごっちこと香川智彦の対談をお届け。

アーティストNozographyがどう出来上がっていったのか、そして彼女のひとつひとつのアート作品が持つ強いメッセージに込められた想いを紐解いていきます。

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ー そもそものお二人の出会いは?

ごっち:阿佐ヶ谷のつかささん*の個展でしたっけ?
*鈴木掌 さまざまなプロジェクトを展開するアーティスト。写ルン族との関係も深い。

Nozography:そのとき私、繁田さんと一緒に行ってたんだよね。
私、元々ビデオグラファーとして、ビデオを撮ったりしてたの。それで、繁田さんのライブペイントと個展の撮影をして、それをミックスした動画を作ってて。
ライブペイントで共演してるアドリエルっていうミュージシャンの音楽に感動をして、技術も感性もすごくて。

彼がつけてたマスクがすごくかっこよかったんだよね。誰が作ったアートなんだろうって思ってたら、つかささんの作品だったの。
「へぇ、つかささんって人が作ったんだ」って思って、つかささんのプロフィールにたどり着いて、絵を見たら、惹き込まれちゃって。
私は、バンクシーとアンディー・ウォーホルが大好きなんだけど、それに続く" 鈴木掌"みたいな。すごいアートだなって思って。

それで、繁田さんの個展会場での撮影をしに行ったら、そこにつかささんのフライヤーが置いてあって。(あれこのあとの展示ってこの人のやつ?!)ってなったの。
「繁田さん、このつかささんって人知ってます?」って聞いたら、「つかささん友だちですよ。同じアトリエです」って。
「え、私つかささんの大ファンで。隠れファンなんだけど。」
そしたら、「繋げましょうか?」って言ってくれて
「今度個展やるって言ってましたよ」って。しかもワークショップもやるって。それは行くしかないって行った展示が、香川さんと出会った一番最初なんだよね。

ごっち:そうね。

Nozography:ちなみに、私がアーティストになれたのは、その日のワークショップのおかげで。ワークショップを受けて、なんだかんだで時間が遅くなっちゃったから、つかささんとギャラリーのオーナーさんとご飯に行こうってなって。話をしてるうちに、ギャラリーのオーナーさんに、君面白いねって言われて。
ご飯のあとに4時間くらい電話で話をして、「よしじゃあ個展をやろう、今制作したすべての作品を展示して」って言われたの。

その時、デジタルも写真も動画もあったから、どうやって展示しようって思って。展示をせっかくやるならインパクトもつけたいしってことを考えてたら、「あ、じゃあ私アーティストになるってことなのか」って思ったんだよね。

それを言われたのが12月の半ばで、決まったのが1月5日でもう3週間もない中で、すべて準備を進めて。

そんな中で初めて挑んだのが2021年1月の個展。

ごっち:Nozomiさんの個展にもお邪魔してて。その次に三軒茶屋のOrbitでも一緒になって、そんな感じで仲良くなっていったって感じだよね。

Nozography:ストリートフォトグラフィーのこととか結構話したりしたんだよね。

ごっち:そうそう。Nozomiさんが撮る、ストリートフォトグラフィー、セルフポートレートもそうなんだけど、すごく好きなんですよね。Nozomiさんの作品が。
最初に、つかささんの個展で会って、インスタのアカウントを教えてもらったときに、お!ってなって。そこから、Nozomiさんの作品のことが好きになったし、会うたびに写真のことだけじゃなくて、いろんな話をさせてもらってる。

Nozography:すごく嬉しい。写真を撮る仲間というか、同じジャンルの人だから。写真ってほんとうに色んな種類があって、その中で評価してもらえるのはすごく嬉しい。

ごっち:Nozomiさんのモノクロのテイストを見て、このテイストめっちゃ好きやなって思って。それから、自分が取る写真のモノクロ比率がめちゃくちゃあがった笑
そこから改めて、ストリートフォトグラファーのアンリ・カルティエ・ブレッソンとかユージン・スミスとかの写真集を何冊も買い込んだんだよね。
だから、俺の今の作品に相当影響を与えているのが、Nozomiさんなんだよね。

フォトグラファー・ビデオグラファーへの道

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Nozography:ファッションショーのモデルの話をもらって、やるからにはちゃんとやろうって思って、ウォーキングの練習とかポージングとかを学んだんだけど。そうこうしてるうちに、フォトグラファーから君を撮りたいって言われて。

同時に、ものづくりをして売ってたんだけど。ジュエリー作ったりとか、ネイリストやったりとか。やっぱりそれをどうやって宣伝するかっていうことを考えたら、写真で宣伝しなくちゃいけない。ネットで販売するってなったら。それで、一眼レフを買ってきちんと写真を撮ろうって思ったんだよね。それが一番最初。
だんだんフォトグラファーとして独立していったのは、プロがアマチュアに教えるっていう機会にモデルとして参加させてもらうことが何度もあったんだよね。一番近くでプロの言ってることを聞くができてすごく勉強になって。
私がフォトグラファーになったら、自分もモデルの経験があるから、ポージングとかを他のフォトグラファーとは違った視点で指示を出すことができるし、細かいとこに気がつけるから強いんじゃないかって思って。そしたら、今度ビデオグラファーの人に「君の映像を撮りたい」って言われて、「撮って良いんだけど、対価はお金じゃなくて、ビデオをどうやって作っていくのかっていう知識がほしかったから、一から制作を見せてほしい」って伝えた。
その制作が終わったときに、ビデオグラファーになろうって決めた。

ごっち:たくましいんだよね。笑 相当勘がいいんだろうね。

ー そうなる原体験みたいなのってあったりするんですか?

Nozography:勘がいいかどうかは、そう思ってくれてる人はそうだけど、そう思わない人も絶対にいて。自分の中では、どうかわからないっていうのが正直なところ。
でも、私は分析人間にどんどんなっていったっていうか。心理学を考えるようになっていった。
すべてには理由があるっていうことがわかって、何事も。例えば私に怒りの感情が出たときに、なんで私は怒っているのかっていうのを考えるようになった。そういう癖がすごくあって。だから、商品を売るときとかもなぜそれが売れたのかとかをすごく考えてて。
でもいつも見つけるのは、うまくいったことは分析ができない。運があったりとか、たまたまだったりするから。でも、うまくいかないことはいつも分析ができて。だから私はダメなほうを分析するようにしてて。

色に関しても、これとこれを混ぜたらだめ、ばらばらになっちゃうからとか。だから、何がダメなのかを頭の中で考えてから、アウトプットを出すようにしてる。

それで、勘がいいって言われるのは、それはきっとダメなことをわかってるから、いいところにたどり着けているのかなと思う。

今回の作品について

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Nozography:今回の作品は、僕がちゃんとアートになっている、ってこの写真の男の子が思えたらいいなって思って。もうひとり日本人の少女が絵を描いていて、作品の中で共演しているっていうのが、日本とルワンダがかけ合わさる形になっていいかなって思ったの。

だから女の子も白黒で、男の子も白黒だし、そこがマッチしてて、反対に文字とかはカラフルでポップ調にしてて、

ごっち:ルワンダの国旗の色でね

Nozography:そうそうそう。私、ルワンダって国の名前はもちろん耳にしてるけど、あんまり知らなくて。場所とか。どんな国なのか、とか。国旗があるのかも知らなかったんだけど、実は。
これを機に調べようと思って、まず国旗を見たときに、あぁこの国旗知らなかったなって思って。じゃあ知らない人がいるかもしれないから、その人達がこの国旗を見て、絵を見たときに、意識してくれたらいいかなって思ってる。太陽があって、緑・黄色・青。

「PEACE&LOVE」を英語で書いたけど、その言葉を母国の言葉で言われたら嬉しいだろうし、私がそれをちゃんと理解して書いたんだよっていうのが伝わったらいいな、と思ってる。それがコラボレーションなのかな、と思ってる。だから、ルワンダの言葉を使ってる。
ただ、ルワンダの言葉って調べてみてもなかなかちゃんとしたものが出てこなくて

ごっち:出てこないんだよねぇ

Nozography:そう、それでどうしようかなって思って。間違えてたら恥ずかしいし、やるならちゃんとやりたいしと思って、ルワンダに住んでる人(山田みおさん)に聞いて、ルワンダの言葉でこれってなんですかって。

Nozography:蛍光カラーを今回使ってるんだけど、そこも葛藤があって、そもそも使ったことがなかった。蛍光の絵の具を。

どうやったら使うのがかっこいいのかなって思って。普通に見たときと、ブラックライトで照らしたときの見せ方を変えたいっていうのがあって。

蛍光塗料を使ってる意味、みたいなのを強く発揮させたくて。
だから、この文字のところなんだけど普通のグリーンで書いた上に更に蛍光だけで書いてるところもあって、そのグリーンの色を合わせるのもけっこう大変だった。
あと、光ったときに、この飛んでるのがいい感じにバランス取って見えるかもって思ってやってみたんだけど、飛び過ぎたらどうしようとか思って。


ー 先日、繁田さんとSayuriさんとで対談をしているときに、Nozomiさんの話になって。作品ができあがるまでを映像に残してて、それをしっかり発信していて、ある種セルフブランディングがすごくうまいよねって話をしていて。

ごっち:すべてのアーティストが見習うべきだと思う。

Nozography:私はアーティストであるべき姿の前に、フォトグラファー、ビデオグラファー、そして被写体だったから、なんかいろんなスキルを見せたいっていうのもあって。私は、他のアーティストがどうやってその作品を創り上げてるんだろうって気になるんだよね。
たぶん、私の作品を好きになってくれる人って、私と同じ気持ちになるだろうって思ってて。だから、タイムラプスであれ、残ってたら楽しいと思うし。
あと、展示会でいる私っていうのはある意味で完成品。今日の私はここのアーティストとして立ってます、みたいな。
でも家にいる私を見せたら親近感わくじゃない。なんかそういうところも考えてる。
別の私をちゃんと見せる。
私のコンセプトは、「自分らしく生きる人を後押しする」っていうこと。だから、私のアートを好きになってくれる人って、若い年代で女性もすごい多いと思う。で、その人たちが、私のステージじゃない姿を見ることで、話しかけていい人なんだなって思わせれるっていうか。私は、話しかけづらいって思われやすいから。でも中身は全然違うし、話したいし応援もしたいって思ってる。
だから、失敗を見せるのも家でのタイムラプスを見せるのもやってる。

ー そういうふうに考えられる人って多くないと思うんです。そう考えられるようになったのってなんでなんですか?

Nozography:バンクーバーでお金を稼がなくてはいけないって環境に身を置いたときに、どうやって私を欲しがってもらえるかって考えて、視聴者の気持ちになったんだよね。

ごっち:それは、たぶんできない人結構いる気がするの。カメラマン仲間でも、食えない人結構たくさんいるの。で、そういう人に共通してるのって思考が停止してるんだよね。

Nozography:いいものを撮れば売れるわけじゃないし

ごっち:そう、それに自分のいいと人のいいっていうのも違うし。

Nozography:そういう人って人の成功しか見てないと思うんだよね。そっか、この人こんなふうに売ってるのか、自分もやってみようって。同じことをやって成功しようとしてる。人の失敗を見たほうが絶対によくて。というか、売れてない人のほうが圧倒的に多いんだから、なんで売れてないんだろうっていうところを考えるべきで。
私がそこに行き着いたのは、競争社会っていうか、要はフォトグラファーっていっぱいいるけど、私を選んで貰う必要があったから、他とは全然違う宣伝の仕方を考えなくちゃいけないし、日本人ってこともあって、話せるけどローカルの人から比べたらやっぱり全然になっちゃうんだよね。じゃあ違う国の人間をどうやったら選んでくれるのかって、そういうところで不利なんじゃなくて有利にするためにはどうすればいいのかって考えてて。
英語圏で育ってる人は言語について考えることはなくて。例えば、私はドイツ人の家族の写真を撮りますってなったら、ドイツ語を覚えていくんだよね。私からしたら、海外の人が一生懸命日本語を話してくれたらすごく嬉しいから。
人が嬉しいと思うことを探して、他の人がやらないであろうことをすごいやるようにしてた。
他の人とどう差をつけるか。差をつけるっていうと人よりも上にいく、みたいな感覚があって嫌なんだけど、全然ちがうことを狙って印象に残る存在になれるように。その思考はバンクーバーでの生活があったからだし、それが今いろんなことを考えられるきっかけにもなってる。
私の展示会は、お花を飾ったり、自分が派手になったりするんだけど、それはあえてやってるんだよね。
それはなんでかっていうと、私はまだアーティストとして駆け出しで、例えばアーティストを10年やってますっていう人に勝てるわけがないっていうのを根拠に、勝つ負けってのはないんだけど、その場に自分が誇りを持って立つためには、自分の飾られる壁がどういうふうであれば、まとまりがあって、お店のように見えるのか。そうやってどうやって見せようかっていうのを考えてる。
例えば、つかささんなら3つに振り分けられる作品のジャンルがあるとして、私は10くらいになっちゃう。でも、それは私に色んな経験があるからそうなってるわけで。ただし、展示をするときにそれがばらばらに見えてしまったらかっこ悪いよね。じゃあどうするって考えて、カラーを統一するとかっていうふうに見せ方を考えるんだよね。

人って変わり者だといじめられるけど、変人までたどり着くと誰も何も言わないんだなって思ってて。
なんか、頭に羽つけて電車に乗ってると誰も見ようとしないんだよね。ちょっと派手な格好してるとみんな見てくるんだけど。
私はそれを日々感じてて。だから、振り切ればいいんだなって。だからそれを今アートで表現してる。やりたいことを、自分のなりたい自分になってそれを振り切ること。恥ずかしいと思ってちょっと控えたりすると目立っちゃうから、もう振り切る。そうすると人は気にしなくなるから。7月21日からの表参道のイベントでは、それを強く出そうと思ってて。

Majesticであれ

2回目の個展を7月からやるんだけど、コロナの状況もあるから。どうやったら来てくれた人がもっと楽しめるのかなって思ってて。どうしたらもっと盛り上がるんだろうって思ってて。
私一人の力だから難しいのかなって思って。来てくれた人が私の展示も楽しんでくれて、かつ他のことも楽しんでくれたらいいなって。だから、今回はお花屋さんと占い師に来てもらうんだよね。来てくれた人が、お花を買いたいとか、占いをしたいってきっかけで私のアートを見てくれたらいいなって思ってて。
私は、アーティストだけど、エンターテイナーとしてその場を楽しませたいって思ってる。
今回の個展のタイトルは「Majestic」なんだけど、壮大なってことなんだけど、自分らしいファッションで、自分らしいメイクで、自分らしく意思を言える人を後押ししたいから、「あなたは壮大に生きるべきです」っていうことを語りかける個展にしようと思ってる。

ー ノゾミさんにとってアートはどんな存在ですか?

Nozography:アートは日々をかけて、人生を変えるもの。人生を変えるって極端すぎてあまり言いたくないんだけど。人生がどうなっていくかって、日々の心がけが自分をどんどん作っていくわけじゃない。
アートを買った。ここにある、特別なものがあるってなったらその家での過ごし方も変わるだろうし。私は、ひとつひとつのアートにコンセプトをきちんと述べてるんだけど、それをちゃんと毎日その人が思って暮らせたら、その人の生き方も変わると思うんだよね。
毎日が変わる。そのいる場所が変わる。それが結局は人生を変えていく。それがアートっていう存在かな。

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自己分析をしっかりとされているNozographyさん。だからこそ、軸がブレずにアーティスト活動をされているんだろうな、と思いました。
5年後にも絵を書いてるかなんてわからないって笑う彼女のその強いメッセージを感じられるのは、今だけかもしれません。
そんな彼女のアート作品を見れるのが、7月21日からのJoint Harajukuでの展示です。彼女のアートに触れると、どこかで琴線に触れる瞬間があると思います。

**********************************Event Information
7月21日(水)〜25日(日)
Nozography 2nd Solo exhibition"Majestic"
@JOINT Harajuku
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4丁目29-9
ゲスト
蜜香ミーシャン(タロット、西洋占星術師)
hana-naya 白川崇

会場:〒657-0101 兵庫県神戸市灘区六甲山町南六甲1034
六甲山サイレンスリゾート ギャラリーB
(深井美貴子写真展「太陽の街の子どもたち Suntown Camp in the Philippines」との合同開催)(*2)
期間:2021年7月28日~8月1日(7月28日は貸切。一般公開7月29日~8月1日)
開場:11時~18時半(8月1日は17時終了)
入場料:無料
イベント:毎日14時~ギャラリートークを開催する他、
写真撮影やアフリカ布「キテンゲ」を用いたクラフトワークショップ等を開催予定
協賛:六甲山サイレンスリゾート、株式会社北辰
協力:Suntown Camp Foundation、板橋区・おそとカフェ

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