SOLAR EPHEMERIS #7「木星の牡牛座イングレス-」
「人は何のために、何を目指して生きているのでしょうか?」
これは先日、個人鑑定をしたAさん(27才女性)からの質問です。
Aさんは、学生時代は遊びも勉強も精力的で、
吹奏楽のコンクールでも入賞した経験があるようでした。
大学を卒業して某旅行サイト企業に就職。
入社4年目でセールスプロモーションの部門で主任抜擢されました。
順調に社会の階段を登っているように見えていたので、
意外な質問にビックリしました。
Aさんは、太陽、水星、木星、火星、冥王星が
射手座でステリウムしている方です。
射手座らしいといえば射手座らしい質問です。
ただ、実際にこうした質問をいただく方は、
40代、50代の方が多いのです。
火星期の試練を乗り越え、自分の中に少し余裕が
出来てきた頃に、ふと疑問に思うのでしょう。
ただAさんの場合は
この疑問は10代の頃からあったようです。
これは世代的な特徴のようにも思えます。
冥王星射手座世代の臨床例は、あまり多くはありませんが、
早くから生きる意味を考える若者が
増えているのは事実です。
さて、皆さんであれば、こうした疑問に
どのように答えるでしょうか?
あるいは、皆さん自身が持たれたこのような疑問を
どのように解き明かしてこられたでしょうか?
占星術では、このような「生きる意味」を
探していくための惑星は「木星」が担当しています。
今回は、この木星が牡牛座に移動することに関した
コラムを書いていきたいと思います。
「生きる意味を見出す木星」
木星は「発展、拡大、繁栄」を表す惑星です。
しかし、この発展は物理的なものではなく、精神的な領域と捉えます。
「精神が発展する」ためには「物事の意味を考えること」が必要です。
例えば、人生では様々な思わぬ出来事に出会います。
波乱が多いと「大変な人生」と思いがちです。
では、波乱が少ないと幸せな人生なのか?
とういうと必ずしもそうではありません。
人生の幸福度は、起こる出来事の数や難易度では決まりません。
その出来事を「どのように捉えるか」で決まります。
例えば、会社をリストラされた時、
ある人は「最悪です。家族になんていったらいいか…」と
1年以上、言い出せずに苦悩されていました。
また別の人は「新しいことを始めるチャンスだと思った」
「家族に伝えたら、大学生の長男が『僕もバイトするよ』と言い出し、
子供の成長を実感した」という人もいました。
(実際の鑑定でのお話しです)
このように、実際に起こる出来事や現象面ではなく、
その出来事を「どのように捉えるか」を育ててくれるのが木星です。
こうしたことを繰り返していくことで、人生全体を通して
自分なりの「生きる意味」を見出していくことが出来ます。
それが人生の幸福度に直結するのです。木星は「幸福」も表しますが、
それは「生きる意味」を見出すことができるからです。
「木星の牡牛座入り」
その木星が、5/17に牡羊座から牡牛座に移動しました。
木星の公転周期は12年です。そのため、毎年必ずサインを移動します。
2023年は5/17に牡羊座から牡牛座への移動し、
2024年の5/26まで牡牛座に滞在します。
この木星の牡牛座入は、私たちにどんな影響をもたらすのでしょう?
木星を考察する上で、押さえておきたいことが二つあります。
一つは、木星が「外惑星」に属しているということです。
外惑星は「社会性」を重視する惑星です。
そのため、木星が意味するものは「社会活動の中」で
発見していくことが前提となります。
また、木星が発展する年齢域は46才~55才です。
そのため「生きる意味」を考えるようになるのも
おおむね中年期であることもわかります。
それに対して、内惑星は「個人性」を重視します。
内惑星は身近な環境の中でも発現していくため、
比較的、若い時期に発展していきます。
例えば、金星は個人的な趣向である「好きなこと」を表し、
太陽は個人のエゴ「こうありたい」を表します。
金星期は16才~25才、太陽の年齢域が26才~35才なので、
こうした願望は、学生時代から青年期に発展していきます。
しかし、社会という共同体の中で、
願望を具現化し、定着さていくことは簡単ではありません。
その際、外惑星である木星や土星は、
「個人の願望を社会の中でどのように活かし、着地させるか」
を教えてくれるのです。
土星は現実的な落としどころ(妥協点)を見出すことを鍛え、
木星は意味や目的といった精神的な気づきをもたらすのです。
そのため木星を考察する時は、
社会活動の中でおこる様々な摩擦や葛藤、
あるいは波乱がきっかけになることを前提とします。
安心と安定の中で、生きる意味を見出すことは難しいからです。
幸い?今年は土星の魚座入りや冥王星の水瓶座入りなど
安定とはかけ離れた惑星の配置が目立ちます。
こうした波乱に満ちた時代ほど、
木星の恩恵を受けやすいものです。
「生きる意味を更新する、木星と天王星の会合」
もう一つは、木星のサインに同居する外惑星をチェクすることです。
木星は他の外惑星と会合する時に最も効力を表します。
牡牛座には、2018年5/16以来天王星が滞在しています。
そのため、木星は天王星と連動しながら、私たちに影響を及ぼします。
木星が天王星と同じサインに滞在する時は、
「生きる意味や目的の更新」を促されます。
今まで使って価値基準が一新され、新しい価値観が芽生えていきます。
天王星的な表現をすれば「新しいOSをダウンロードする」
といった感じでしょうか。
新しいOSがダウンロードされると視野が広がります。
視野が広がると見える景色が変わるため、
そこで起きている事象の捉え方を変えることができます。
その結果、意識のベクトルが大きく更新されていくのです。
例えば、仕事が上手くいかず悩んでいるとします。
その際、上手くいかない原因は、自分のスキルが足りない、
自分に資質がない、あるいは努力不足といった、
「私が悪い」という方向に意識のベクトルが働くことがあります。
しかし、視点を変えてみると
自分自身の器が会社を超えていることや、
そもそもマッチングしていないことに気づいたりします。
会社は一般的に、社員のパフォーマンスが良くない時に
社員自身に原因を求めがちですが、
それは会社としての偏った視点であり、
真実とはかけ離れていることが多かったりします。
私自身は、これまで多くの企業を見てきましたが、
大抵のケースが、会社が社員の持っているものを
活かせていないケースが多いものです。
「お値段以上ニトリ!」で有名な日本最大の家具店「ニトリ」を創業した
似鳥昭雄さんは、会社員時代は典型的なダメ社員でした。
営業職として広告会社に就職しましたが、契約も取れず、
仕事が出来ずで、半年で首になりました。
その後の就活でも、何社も面接を受けますが、全て断られたそうです。
似鳥さんは、人と話すことや人の話を聞くことが、
極端に苦手だったそうです。書類づくりも整理整頓も全くダメ。
(ただ、物事を突き詰めることだけは優れていたそうです)
何度も社会から落第の烙印を押されてきた似鳥さんは、
ある時「自分を変えるのでなく、職業を変えてみてはどうか」と
発想を変えてみることにしました。
自分自身に対する見方が変わると、人生の環境も大きく変わります。
それが、現在に繋がっていきます。
生きる意味や目的が更新される時は、
得てして、考え方が180度変ることが多いものです。
フランスの作家「マルセル・プルースト」は
「真の発見とは、新しい景色を探すことではない。
新しい目で見ることなのだ」と言っています。
牡牛座の木星は、まさにこうした気づきを促してくれる
大きな機会を与えてくれるでしょう。
社会のムード的には、木星が不動宮に入ると
活動宮の忙しいペースが、ややダウンしてきます。
昨年の夏頃から、コロナ禍からリバウンドしたように
多くの人が活発に動き、慌ただしい1年でした。
しかし、これからは少し落ち着きを取り戻すはずです。
牡牛座のように、ゆったりとしたリズムの中で
自分自身の生きる意味を見つめてみるのも
良い1年の過ごし方になるではないでしょうか。
「牡牛座22度が表すもの」
木星が天王星と会合するのは牡牛座22度です。
サビアンシンボルは「荒れた水の上を飛ぶ白い鳩」。
これは「内面が不安定になっている時こそ啓示が降りる」
ということを表しています。
「荒れた水」は「不安定な内面」の表れであり、
「白い鳩」は危機にしか訪れない「啓示」を表します。
心の危機に出会う啓示によって、内面の安定を取り戻していくのです。
「人は何のために、何を目指して生きているのでしょうか?」
と質問されたAさんの出生図では、ASCが牡牛座22度でした。
これから、トランジットの木星と天王星が同時に、
Aさんの出生図のASCと会合していきます。
そのため、自分自身の問いに対する答えは、この1年の社会活動の中で
必ず見つかるはずです。そして、見つかった時には、
今までと全く異なる景色が見えるようになるでしょう。
東海 豊
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