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110話 衝突

夢のカケラを集める方法を話し合う者達。ファミリーの御隠居、向人の屋敷の田中家、そしてコントラのドミノとシイナ。ドミノは夢主の夢を傷つけない夢のカケラの採取方法を提案した。それは、夢主と思いを共有し、コントラの感覚をかじらせるというものだった。

※ ※ ※

大きな机の上で俯いた守護柱・リスのラルーは小さな息を吐いた。

ファミリーの御隠居、向人の田中一族、そしてコントラのドミノとシイナはラルーのその小さな体が一層小さく縮んでしまった様に見えた。

「ワシはあまりお勧めできん」

「それはどうしてですか? この方法を教えてくれたのはあなたですよ?」

ラルーは顔を上げてドミノを見た。困り切ったその表情はラルーの奥に座っている向人の屋敷の責任者・田中・lei・ジロウも同じだった。2人だけが同じ思いを持っている様だった。

その話は私から……と今度はジロウが話し始めた。

「コントラの感覚をかじらせる、という事は少なからずコントラ自身も傷つく事になるのでしょう。向人の夢からカケラを取るのと同じ様に、コントラにも少なからず影響が出る。そうでしょ? リスの賢者よ」

ジロウはラルーへ言葉を投げた。

「ふむ」

ラルーはそう短く呟いて、再び黙ってしまった。

「しかし、昔はやっていたのでしょう? なら、私達も」

「数が違います。昔は沢山いたコントラも今や2人。貴方達にかかっているんです。あえて危険な目には合わせられないのが本音なのでしょう」

ドミノの隣に座っていたジロウの息子・シゲルは真剣な表情で話に加わった。

「昔と比べて夢は変わってしまった。夢の内側と外側の隔たりが大きくなってしまった以上私達にできるのは、この内側を守る事……しかしそれは誰かしら傷つける。私はもう一度問いたい。8人の王の見る夢とは本当に大切なのでしょうか」

「なにを!」

ファミリーの御隠居・火日(ひひ)が立ち上がった。

「ワシらがこうして生きているのは8人の王達があってこそ! 夢も世界も奴ら悪夢から守ってこられたんじゃ!」

「しかし、その8人は神を裏切りましたよね? 夢は分断、それぞれのカル(後継者)には辛い役目だけが残り神は消えてしまった。私にはそこまでしてこの世界を守る意味が見えてこないのです」

「何を!」

他のファミリー御隠居達が次々に叫び出す。シゲルはその言葉の隙間を見つけて言葉を続けた。

「世界の安定は分かります。悪夢を生み出す面(つら)を恐れる気持ちも。しかし、誰の夢にも歪んだ風はございます。人の夢を傷つけてまで守ろうとしている王達の夢は、はたして良い夢を見れているのでしょか」

「では、どうすればいいのだ! このまま墓を暴走させ世界を危険に向かわせろと言うのか!」

火日は赤い顔をして怒鳴り散らした。大きな体から発せられるその声は、屋敷中に響き渡り住人達を驚かせた。

「あの」

ドミノはついに、長年疑問に思い続けていたことを口にしようと勇気を出した。
ラルーは困った顔をドミノに向けた。

「なんじゃ。ドミノよ」

「そろそろ本当の事を教えて頂けませんか……墓の中には何があるのか」

ドミノの言葉はその場にいたもの達を一瞬にして黙らせてしまった。

つづく

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