見出し画像

【中学受験】「算数ができない」の原因 @ 其の弐

其の壱の記事の続きです。


 前回の記事では、算数ができない」という原因の多くが「自分は算数ができない」と思い込んでいるからであると書きました。その原因は、周りの大人がその子に聞こえるように「できない」という話をしているということが多いです。
 たとえば、親御さんが他の人との会話で「うちの子は、できないんですよ」というような発言を子供が聞くと、子供は自然と「自分は出来ない子なんだ」と思うようになります。例えそれが謙遜するつもりで発したものだとしても、子供はまだ「謙遜」の意味合いを理解できません。その謙遜がボディブローのように子供にダメージを与えています。

「自分が出来ない」と思っている子に「どうして、できないと思うの?」と聞くと、その答えの大半は、「お父さん(お母さん)が、できないって言っているから」というようなものです。ちなみに、おじいちゃん、おばあちゃんの発言もとても強い影響力を持っています。また、信頼関係が結べていない指導者に、いつも「できない」と言われて育ったケースでも、これと同じことは起こります。

 いずれにせよ、子供はまだ自分で確固たる自己認識を作り上げることができないので、それをある程度周りの大人に委ねています。周りの大人が、どのように接するかによって、その子の自己認識は大きく変わっていきます。自己認識が前向きなものになれば、子供は自然と出来ることが増やしていきますし、それを後ろ向きなものにしてしまうと、逆のことが起こります。
 これは算数に限ったことではないのですが、壁を越えられないような状況に陥っている子は、その壁を作っているのが本人ではなく周囲の大人であることが多いです。

 では、周囲の大人が、どうしてそのように子供を過小評価してしまうかというと、多くの場合子供の成長過程を十分に理解できていないからです。
 たとえば、受験に合格するために必要なステップが「100」あったとして、その子は「30」のところまでしか成長していないとしましょう。
それに対して親御さんは「うちの子は『100』のことができないんですよ」という意味合いで「うちの子は、できないんですよ」と言っていることが多いです。
 多く親御さんは、自分以外の子どもの学力的成長過程を実際には見たことがありません。だから、その過程を無視して子供に要求することが多いのです。その要求が子供の成長に蓋をし、子供の目の前に壁を作ることになってしまうのですが、そのことを理解していないケースは多いです。
 また、そのように子供を過小評価している親御さんにありがちな課題は「ステップダウンを受け入れられない」というところにもあります。算数講師が現状を踏まえて取り組むべきことに必要な制限(より簡単な内容に立ち返って取り組む等)を掛けたとします。それが「40」くらいのことだとしましょう。しかし、カリキュラムは「60」くらいのことまで進んでいたとすると、親御さんの気持ちとしては、「うちの子では『60』ができないって言うんですか!?」となります。講師が「60」ができるようになるために「40」を提案したとしても、それを子どもの限界を決められたと感じてしまうのです。
 特にそれが 6 年生以降になると、焦りからステップダウンや基礎固めを更に躊躇するようになります。結果、難しい問題の解説をしてくれる個別指導や家庭教師、算数教室を頼り、その問題はその場で解説されて分かっても土台が固まっていないから本質的には理解できず、次に類題に出会っても結局解けるようになっていないという負のスパイラルに突入します。そうなってくると、親御さんは「どんなに取り組んでも、この子は算数ができない子なんだ」と諦めるようになり、それを受けた子供は「自分は算数ができないんだ」と諦めるようになります。

 しかし、講師の視点からすれば、それはちょっとしたボタンの掛け違いに過ぎません。私たちは、その現象を「算数ができない」とは捉えません。どんな子でも、適切なステップを踏んであげれば、算数はできるようになると考えています。算数ほど、「急がば回れ」という言葉が適切なものはありません。

続き↓↓↓



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?