見出し画像

メルカゾール

中阜つつじ

  私が30数年勤めたホームセンターを定年にまだ数年残して辞めることになった話をします。
 今から5年ほど前、 足腰の調子がわるくなり、立っていたら震えが止まらない状態から始まり、しゃがむこともできなくなり、歩けはするのですが、重たい荷物も持てなくなったり、おまけに心臓バクバク、脈拍数が異常に高くなったりと、原因不明の体調不良に悩まされていました。体重は食っても食っても減る一方で、身長は160cmないものの、46kgまで減りました。久しぶりに会った人は皆さんビックリします。
  最初は脚が悪いと思い、整形外科や鍼灸院などへ訪ねて治療しでもらったのですが、効果なく、近くの内科にいっても相手にされず、ひたすらもがきながら仕事をしていました。そうしているうちに、字がかけなくなってきました。手が震えているのてす。思うようにペンを動かせない。これでは全く仕事になりません。
  それでも歯を食いしばって仕事を続けていたのですが、会社の健康診断の日に、医者が私の顔を見るなり、いきなり「あなた病院に急いでいきなさい、甲状腺が腫れている」といわれてビックリ。ああ甲状腺がわるかったのだ、と知ったのでした。
  それから甲状腺専門の病院を探し、幸いにも別府にある有名な野口病院出身の医者が割と近くに病院を構えていたので、そこへ行きました。 
  血液検査尿検査甲状腺のエコーを経て、告げられた病名はバセドウ病でした。
「正真正銘立派なバセドウ病です」
  そういわれた瞬間、頭をよぎったのは目玉が飛び出るんじゃないか、ということでした。びっくりして目玉が飛び出るってことではないです。バセドウ病といえば目玉が飛び出る、その程度の認識しかありませんでした。それを聞くと、人によってそうなる人とそうでない人がいるそうで、そうならない人のほうが多いそうです。
  次に思ったのは綾香とか夏目雅子とか女性がなる病気なのでは?と思ったのですが、確かに女性のほうが多いけど、男性も結構いるそうです。後で知ったのは立川志らく。同じ歳なのですが、彼もそうでした。
  ともかくこれでこの苦痛ともオサラバできる、病名さえわかれば、あとは治すだけです。しかし先生は3年、治療にかかる、といわれました。手術やアイソトープ治療っていう方法もあるけれど、薬だけで十分治るといわれました。現在のこの症状は薬を飲みつづければ、2〜3ヶ月で正常に戻ると太鼓判を押されました。
  その薬の名前がメルカゾールです。こいつとの長い付き合いが始まりました。最初は一回6錠からスタートして、症状が落ち着いてくれば、少しづつ減らしていくことになります。
  病名さえつけばこっちのもんです。今まで根性で、何とかやってきたものの、体ガタガタ、苦痛の日々とオサラバできます。一気に張っていた気が緩んできました。
  2ヶ月休むことにしました。
  家で寝っ転がっていると、耳鳴りがします。自分の心臓の音です。インターネットで調べると、バセドウ病にはよくある症状らしいです。何もしなくてもキツイ日々が続きました。
  とにかく寝っ転がってるしかないです。それでも体はきついです。TVみるのも本読むのもきついです。
  あっという間に2ヶ月がすぎました。まだ完全ではないものの、いくらかマシになっていました。ただこれからが実は大変だったのです。
「症状がよくなってくると、体が攣るようになるから」
  と先生が予告した通り、ちょっとした動作で体が攣り出しました。崩れた筋肉が急激にもとに戻っていく反動のようです。七転八倒、阿鼻叫喚、売場だろうが、駐車場だろうが、家の中だろうが、車運転中だろうが、突然攣るのです。危険極まりない。とにかく言語に絶する苦痛が私を襲いました。この頃が一番辛かったかもしれません。
  しかしそれも1ヶ月ほどで、攣ることもほとんどなくなり、それで元気になったかというと、そうではなく、首が苦しい、体がきつい、倦怠感を感じる、等々症状がでだしました。それはバセドウとは違うね、と総合病院を紹介され、CTまでとったけど、異常なし。心療内科のほうへいかされました。しかし当時うつ病とかの症状に暗い私にとって、まさかそうではあるまい、と勘繰り、話だけして、一方的に診断を断りました。しかしバセドウ病からうつ病になる人は結構いるようです。
  ところが、というか何の治療もなくては苦しいばかりで、会社も休みがちになったり、早退したりしてました。結局町の心療内科にいって診断を受けることにしました。
  バセドウ病では傷病手当の診断書を書いてもらえないけど、うつ病なら書いてもらえるからです。
  それで休職ということになり、心療内科と甲状腺の病院の掛け持ちになりました。
  傷病手当と会社が掛けてくれていたLTD保険、私自身もこんなことが起きる予感があったのかLTDのオプションにフルで入っていたおかげで、お金の心配はありませんでした。
  日々何事をすることもなく、病院にいく以外は買い物に行くくらい。昔のように歩き回ったりできません。1月になり、会社の休職期間が終了するのを待たずに退職を決意しました。税金保険料国民年金のことを考えると、このタイミングが一番よかったかな、と思っています。免除や減額になったからです。
  バセドウ病のほうは順調に回復してきました。メルカゾールも飲む量も減り、1週間に3錠、1週間に1錠、そしてついには3年以上かかりましたが、寛解しました。
  数ヶ月に一度検査にいくだけでよくなりました。
  傷病手当も終わってしまいましたが、まだLTD保険が約一年残っており、それが終われば失業手当をもらう予定にしています。
  もっとも働けるかどうかはわかりませんけど。でもだいぶ動けるようにはなりました。薬ははずせないですけど。
  以上、これが私の会社を辞めた経緯でした。読んで頂いた方のなかで、バセドウ病やうつ病になった時の参考になればと思い書きました。
  多分失業保険が終わると仕事を探すことになるのかもしれませんが、その時の調子次第でしょう。幸い家族にそれなりには収入があるので、無理はしなくていいような状況ではあります。
  オチがなくてすいませんが、これで終わりです。タイトルのメルカゾールは闘病中のシンボルみたいな存在だったので、つけました。



この記事が参加している募集

退職エントリ

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!